2012年
8月号
神戸銘菓の代名詞ともいえるゴーフル。今年で誕生から85年目を迎える

もっと知りたい西神インダストリアルパーク 第4回

カテゴリ:スイーツ・パン,

銘菓ゴーフルの匠

銘菓ゴーフルが生まれてから85年の神戸凮月堂。守り続けたライトな味わいと、口の中で広がるほろほろ感。手作りの時代から培われて来た匠の技が、機械化に受け継がれていった今、その歴史と味わいをミスターゴーフルと言われる中尾俊一さんに西神工場でお聞きした。

―ゴーフルが生まれて85年ですが、元々はどういうきっかけで生まれたのでしょうか。
中尾 フランス帰りのお客さんが「こういうものを作ってはどうか」と弊社にお菓子を持ち込んだのがきっかけです。いまのゴーフルとは似ても似つかないものだったようですが、日本人の嗜好に合うように改良が加えられていきました。西洋のお菓子に和のテイストを加えようと、クリームとマッチするせんべいの開発が進んだのです。
―戦時中、原料や缶の不足で製造を中断したこともあったそうですね。長い歴史の中で味や工程に変化はありましたか。
中尾 味はほぼ同じですね。ただ、当初は炭火で焼いていたようです。再開については、原料の調達以上に大変なのは、煎餅の焼型調達が大変苦労されたと聞いています。
―中尾さんはゴーフルを作り続けて何年になりますか。
中尾 ゴーフル作り44年です。私の入社当時は電機型の手焼きでした。ニクロム線でじわっと熱が上がっていくものですから、スイッチを入れてから焼き出すまでに45分かかっていましたから(笑)。
―機械化・自動化はいつぐらいからはじまり、どのようなご苦労がありましたか。
中尾 ずっと検討はされていたのですが、昭和45年ぐらいから導入されました。ただ当時は手焼きと比べるとやはり質の点で満足いきません。これではいけないと試行錯誤を続けて、昭和48年にはほぼいまの形に近づきました。衛生面を考えて、原料の段階からライン化を進め、できるだけ人が介在しないようなシステムを作ったのです。
―機械化するにあたって、もっとも気をつかったこととは。
中尾 基本は手焼きの味と食感です。生地を落として蓋を閉めて、均等に伸びることが大切です。それがゴーフルの特徴である口溶けの「ほろほろ感」を生み出すのです。感触はしっかりとしながら、口の中でクリームと一緒に溶けていく感覚です。そのためにクリームは常に人肌より少し低い温度に保たれているのです。
―その「ほろほろ感」を出すためにもっとも難しい部分はどこですか。
中尾 生地を仕込む過程が大きいです。粘り気が出ないようにすることと、温度の管理がポイントです。
―商品のチェックはどのようにされているのでしょうか。
中尾 賞味期限の120%で最初に作った時のとの差を比べています。もちろん舌で感じる感応検査も行なって、色、歯触り、味で総合点をつけます。原料の部分、焼きの部分など最終的には全行程で行います。
―西神工場ではほかにどのような商品を作っているのでしょうか。
中尾 ゴーフル、プティーゴーフルのほかにレスポワール、ぶっせ、クッキー関係などですね。私はどちらかと言うとゴーフル一筋なんですが(笑)。第2工場では和菓子とケーキを中心に作っています。
―現在ゴーフルは、年間5000万枚製産し、海外でも販売されているそうですが。
中尾 海外では、アメリカの他、中国、シンガポールなどアジア圏で販売されています。現地の日本の方が買っていただくのはもちろんなのですが、どちらかと言うと、地元の方に買っていただく方が多いですね。特にアメリカでは好評で、アメリカ人にとっては、こんなにライトな感覚で食べられるお菓子はほかにないようですね。
―創業115年を迎え、これからの神戸凮月堂とゴーフルが向かう方向は。
中尾 今後もゴーフルの味を継承していくことが、いつまでも愛されるお菓子づくりにつながると思います。継承だけではなく、新商品の開発もしていかなければなりません。昔はゴーフルに柑橘系は御法度だったのですが、味の嗜好も時代とともに変わってきます。現在、バニラ、ストロベリー、チョコ、コーヒー、紅茶、抹茶の六つの基本の味に加え、プティゴーフルでは季節限定で白桃や栗なども登場しています。みなさん好みがあるようで、家族全員で楽しんでもらえるようなお菓子を作っていきたいと思います。
―「神戸凮月堂・イコール・ゴーフル」と言うイメージは強いのですが、昔ながらの手焼きゴーフルの復活などは考えていますか。
中尾 いまの機械は、手焼きと変わらないレベルにまで進んでいます。時々手作りのゴーフル教室などもやっていますが、クリームの塗りまでで、焼く行程は難しくてできないのです。そのクリームを塗る行程でも、これまでいろいろな改良を加えてきました。現在のシステムも四代目になります。そういう意味では、焼きにも塗りにも、全ての行程のひとつ一つのパーツに、神戸凮月堂のノウハウがすべて詰め込まれていると言っても過言ではありません。
―これからも変わらぬ神戸名物ゴーフルと、新たなチャレンジに期待しています。

神戸銘菓の代名詞ともいえるゴーフル。今年で誕生から85年目を迎える

軽くて口溶けの良いスイーツとして、海外での人気も高まっている。シンガポール高島屋にも出店する


“神学者”“哲学者”“医者”“音楽研究家”としても知られるアルベルト・シュバイツァー博士もゴーフルのファンであった。シュバイツァー博士と親交の深かった医学博士・高橋功氏からの手紙にもその様子が記されている。シュバイツァー博士からの直筆サイン入りのお礼状も社宝のひとつ


ゴーフル煎餅にクリームを塗り込むように、煎餅全体にクリームを広げる。この製造ラインを完成させるまでに、多くの時間を費やした


焼きたてのゴーフル煎餅は、すぐに缶に入れられ香ばしさを損なわないよう保管

神戸ゆかりの版画家・川西祐三郎氏による神戸の風景を缶にデザインするなどその種類は多岐にわたる


海外では、シンガポール、中国などアジア圏やアメリカへも出店。香港そごうCWB


高尾大立店


ゴーフル煎餅を焼き上げる若き日の中尾さん


中尾俊一(なかお としかず)さん

1950年生まれ。1968年、神戸凮月堂入社。入社以来、「手焼き」「手塗り」時代から、現在のシステムライン製造にいたるまで、長年にわたり「ゴーフル製造」に携わる。愛称は「MR.ゴーフル」。

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〈2012年8月号〉
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