2018年
5月号
歌川広重「六十余州名所図会・丹波 鐘坂」

兵庫ゆかりの伝説浮世絵 第五十一回

カテゴリ:絵画

中右 瑛

丹波鐘ヶ坂の大岩伝説「鬼の架け橋」

 兵庫県篠山市と丹波市の境界にある標高540メートルの鐘ヶ坂山頂付近に、岩と岩のV字型に橋を架けたように岩が横たわる。人呼んで「鬼の架け橋」。
 杣道は、その岩が塞いで通れない。かろうじて潜り貫けることは出来るが、そこから覗き見える下界ははるか彼方。目は眩む。
 こんなに険しい山頂に大岩の橋を架けたのは誰だ!と叫びたくなる。自然が成す業である。伝説では、恐ろしい大江山の鬼が犯人。源頼光の鬼退治伝説で知られたあの鬼の仕業だという。国道176号・鐘ヶ坂トンネル北を越してから山頂仰げば、かろうじて見える。この鐘ヶ坂「鬼の架け橋」が浮世絵に登場する。「六十余州名所図会・丹波 鐘坂」。
 描いたのは初代歌川広重、晩年の作画である。広重は、実際にはここには来ず、他人の名所図会から模写したであろう。

歌川広重「六十余州名所図会・丹波 鐘坂」

■中右瑛(なかう・えい)

抽象画家。浮世絵・夢二エッセイスト。1934年生まれ、神戸市在住。行動美術展において奨励賞、新人賞、会友賞、行動美術賞受賞。浮世絵内山賞、半どん現代美術賞、兵庫県文化賞、神戸市文化賞、地域文化功労者文部科学大臣表彰など受賞。現在、行動美術協会会員、国際浮世絵学会常任理事。著書多数。


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TEL.078-858-0050
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