5月号
神戸鉄人伝 第101回 NHK神戸放送局長 林 理恵(はやし りえ)さん
剪画・文
とみさわかよの
NHK神戸放送局長
林 理恵 (はやし りえ)さん
2017年6月にNHK神戸放送局長に就任された林理恵さん。「海外に縁のある仕事が多かったですね」とおっしゃるだけあって、これまで国際・外交の取材に携わり、国際放送や国際協力の仕事にも手腕を発揮してこられました。初めて住む神戸を「私のままでいられる、とても居心地の良いまち」と評してくださる林さんに、お話をうかがいました。
―神戸へようこそ。神戸での生活はいかがですか?
快適です!私自身は東京生まれの東京育ちで、NHK入局後もほとんどの時間を東京で過ごしました。昨年神戸放送局に赴任しましたが、来てまず「受け入れてくれるまち」だと感じました。他所から来る者に垣根を作らないのは、神戸の皆さんの気質なのでしょうか。お陰ですぐに馴染むことができました。
―神戸の印象が良くて嬉しいです。神戸のまちをどうご覧になりますか。
都市の規模が適正で、住んでいて心地良い。今はどこの都市も経済活性化や人口増に力を入れていますが、都市の規模と人口の釣り合いが取れていないと、心地良さは維持し難いでしょう。それぞれのまちに人が住み良い適正人口があるはずですから、バランス感覚が大切ですね。神戸は今の住みやすさを保ちながら発展して欲しいです。
―神戸のまちの問題点を挙げるなら?
魅力的なものが多過ぎて、「これ!」という決め手が無いのが難点かもしれません。たとえば観光でも、スイーツや神戸ビーフは魅力ある資源ですが、それを食べるために神戸へ足を運ぶかと言えば疑問です。和歌山県の熊野古道、鹿児島県の桜島のように、そこに行かないと見られない資源は強みになります。神戸には皆さんが気付いていない資源が、まだまだ眠っていると思います。
―神戸市民が気付いていない資源とは?
ハイカラな港町、ファッションタウンといった神戸のイメージは、この150年間のものです。神戸にはそれ以前の歴史のレイヤーもあるのに、それが活用されていません。たとえば生田神社や布引の滝は、源平合戦にまつわる能や浄瑠璃の舞台。もっとアピールしてもよいのではないでしょうか。
―確かに、開港以前の歴史も資源ですね。
県外の人は意外と、源氏物語の「須磨」、源平合戦の「一ノ谷」が神戸市内だと知らないんですよ。神戸の人は現在の神戸を愛し過ぎていて、過去の資源が見え難いのかもしれません。神戸の外へ出て初めて気付く魅力、他所から来た者に見える良さもたくさんあります。それと、神戸の皆さんは生活の中で芸術や文化を楽しむ術を身に付けておられ、私の目にはとてもエレガントに映ります。
―文化を楽しむ術というと?
特に意識しておられないかもしれませんが、コンサートや観劇には普段着では出掛けないでしょう?かといって殊更に着飾るのではなく、小ざっぱりと品良くお洒落して劇場に来ておられる。とても素敵な習慣です。またアーティストの皆さんの連携がすごくて、パワフルなことにも驚きました。パーティーでオペラ「椿姫」の「乾杯の歌」を合唱して乾杯!なんて、すごいまちだと思います。
―神戸放送局での、抱負をお聞かせください。
地域の情報を発信し、地域に寄り添う放送局でありたいと願っています。神戸はもちろん兵庫県を盛り立て、地域に貢献したいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
(2018年2月26日取材)
国際的視野をお持ちの林さん。ぜひ神戸を楽しみ、これまでにない視点での魅力を発信してください!
とみさわ かよの
神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。平成25年度神戸市文化奨励賞、平成25年度半どんの会及川記念芸術文化奨励賞受賞。神戸市出身・在住。日本剪画協会会員・認定講師、神戸芸術文化会議会員、神戸新聞文化センター講師。