11月号
連載 輝く女性⑨ 外国人が介護士・看護師として活躍 その就労支援に早くから注力した若き起業家
インタビュアー・伊藤 紀美子
第9回は、日本に住む外国人の医療福祉人材育成に力を入れているソビエルの元地裕子さんです。日本の医療福祉現場で今、深刻な課題となっている人材不足。その人材確保手段の一つとして、10年も前から国内在住外国人の採用に着目し、外国人介護士・看護師の育成に取り組まれています。
─フィリピンやベトナムなどを中心に、約10ヶ国にわたる日本に住む外国人を介護職員として育成し、介護施設にヘルパースタッフとして紹介しておられます。人材派遣業に携われていた元地さんが、この事業を展開されるようになったのは?
専門性のある役務提供に対価が払われるというのが人材派遣業ですが、経済のグローバル化につれ、本来の目的とずれてきていることに疑問を持ちました。特に外国籍の方は人材というより労働の派遣として単純作業や裏方業務にまわされることも多い。私の知人のフィリピン人の女性たちも景気が悪くなると一番に雇用を切られてしまう単純労働に甘んじていました。明るく、世話好きな彼女たちの適正を活かせる職場があるはずと考えたのが最初です。
─就労支援の場として医療福祉現場を選ばれたのは?
フィリピン人をはじめ、外国人の多くは大家族で生活する文化があります。祖父母と共に暮らすことで育まれた優しくおおらかな心や目上の人を敬う習慣を、医療福祉の現場で発揮できるのではないかと思いました。日本人、外国人とわけるのではなく、ましてや日本人がやりたくない仕事、嫌な仕事をかわりにやってもらうのではない。働く各々が個々の能力を高めることで、施設を利用する人に喜んでもらえればと。
─それこそが本来の人“財”派遣であると。2008年に起業され、事業はスムーズに進みましたか。
外国人=安い労働力という考えが世間ではまだ根強く、苦労しました。施設への説明を地道に重ねることで、口コミで評判が広がり、頼りにしてもらえるようになりました。
─提案される外国人はモチベーションが高く、日本で働く上で必要な基礎訓練、介護講習を経て現場へ就労されているそうですね。
施設のヒアリングをもとに採用条件に最適な人をご提案します。就業初日から数日間は弊社の担当職員が同行し、双方の間に立って調整させていただきます。施設の方、施設ご利用者様やそのご家族様から喜んでいただいています。彼女たちの真剣に学ぼうとする姿勢が日本人の職員の方達の良い刺激にもなっているようです。3年前から、外国人看護師の育成事業も始め、挑戦したスタッフについては全員合格し、医療現場へ正社員として就職、活躍しています。
今後も、「外国人の可能性を信じ、活躍の場を広げる」国籍を超え、お互いの多様性を認め、全ての人が、生き生きと仕事が出来る世の中になるお手伝いをしていけたらと思っています。
─EPA締結後、外国人に対する認識も変わりつつあります。足りないから補うのではなく、共に専門性を高めていく、少子高齢化の日本における新しい働き方の提案事業としてぜひ先陣を切って進めてほしいと思います。
元地 裕子(もとじ ゆうこ)
神戸市出身。6年間人材派遣会社にてチーフコーディネーターとして勤務。2008年地元神戸にて、外国人専門の就労支援会社を設立。外国人の医療福祉人材育成に力を入れ、外国人介護技能実習制度の受け入れ組合のアドバイザーも努め、大学講師、セミナー講師、各種講演なども行っている。趣味は音楽・旅行
株式会社ソビエル
大阪市中央区博労町4-7-5本町TSビル6F
TEL.06-6224-0683
伊藤 紀美子(いとう きみこ)
田嶋株式会社 代表取締役社長
神戸生まれ。95年より同社社長に就任。02~06年神商議女性会会長、07年から国際ビジネス委員長。16年、女性初で神戸商工会議所の副会頭に就任。
田嶋株式会社/1899年、繊維を主体とした貿易商社としてスタート。会社創業110周年の2009年に美容&健康分野を新設。オリジナルブランドのスキンケア「PLUSUI(プラスイ)」を開発販売。同ブランドでナチュラルミネラルウオーターも販売