2017年
11月号
撮影/中村治正

ウガンダにゴリラを訪ねて Vol.1

カテゴリ:医療関係, 神戸

【準備編】①

文・中村 しのぶ
なかむらクリニック(小児科)

 誰もが子どものころから“大人になったらいつかやってみたい事”をしまって置く抽斗(ひきだし)を持っています。小学生のころからいつもある憧れを抱いていました。 見知らぬ遥かな土地、そこに生きる私とは違う価値観を持つ人々、人間にはどうすることもできない自然の力、創造物、それらをいつか見に行きたいという漠然とした夢。小さい頃テレビの「野生の王国」に夢中になっていました。絶滅危惧種の保護に関わることも夢の一つでした。
 医師となってからは息子たちが巣立ったら残りの人生は世に還元したい、発展途上国で病気の子供のお世話をできたら−
とナショナルジオグラフィックを見ながら考えていました。
 そんな訳でアフリカははっきり形にはなっていませんでしたが、その将来用の抽斗に靄のように長くおさまっていたのでした。
 ところが晴れてEmptyNestの住人になったとき、恵まれた医療環境にいなければ死んでいたかも知れぬと思う病気をし、これまで体力だけが自慢でしたが命がいかに短く儚いものであるかを学びました。そしてアフリカは夢のまま終わるのだろうとほとんど諦めてしまいました。
 そんなある日2013年早春のこと、車の中で初めて聞いたさだまさしの「風に立つライオン」に鳥肌がたちました。アフリカの子供たちの輝く瞳、満天の星、一斉に飛び立つフラミンゴ、風に立つライオン…やっぱり、行きたい!偶然によって生かされているこの脆い人生の時間は、ある日突然断ち切られて明日という日が訪れなくなる。
 そして今行けない理由は何もない。行こう!
 アフリカの旅を検討するなかでマウンテンゴリラに出会いました。彼らに関する資料を読み進み会いたい気持ちはどんどん膨れ上がっていきます。ウガンダまたはルワンダで彼らに会うことができるのですが、今回はゴリラに出会うまでの山歩きがより厳しいと言われているウガンダに決定しました。
 ゴリラの保護に生涯を捧げたダイアン・フォッシーを描いた映画「Gorilla in the mist」を覚えておられる方も多いと思います。コンゴ、ルワンダ、ウガンダ国境にまたがるまさしくあの森です。熱帯雨林の背の高いブッシュを鉈で草や枝を払いながら急斜面をゴリラに会えるまで10時間歩くこともあるトラッキングです。さだまさしの歌ったケニヤ、タンザニアのサバンナサファリに比べ体力的に厳しく今年を逃したらもう行けないかもしれません。
 ドロップアウトしたらポーターが背負って村まで連れて帰ってくれるそうですがそこまで行ってすごすごと引き上げるわけにはいきません。夫婦でジョッギングも始めました。公開されているウガンダ側のゴリラは9家族で観光客8人のグループがひとつの家族を訪ねます。つまり1日に72人しかこの森に入ることを許されないのです。この入場許可証をGorilla permissionと呼び、手に入りにくいようですが、何とか9月19日のpermissionを確保できました。後は19日を中心に前後の予定を詰めていく段階です。
 アフリカに関するリサーチを開始するにつれ“貧困、内戦、犯罪、伝染病”が強調されており、それでも行くのか?正直、不安いっぱいでした。ウガンダは1962年に英国から独立するも政情は不安定で1971年から79年までアミン大統領による恐怖政治で30万人が殺されています。
 その後、現在のムセベニ政権になっても内戦が続き、加えて2007年にはエボラ出血熱で16人が死亡しました。2008年から2009年には反政府軍に対するウガンダ、コンゴ民主共和国によるガランバ攻勢、2010年には首都カンパラでW杯観戦客73人が死亡する同時自爆テロ…。
 2008・9・10年というのはほとんどつい昨日です。平和呆けして身を守る手段など何も考えることなくその時期をのほほんと暮らしてきた私たちがそんな国にたった二人で飛び込んで大丈夫なんでしょうか…。
 今ウガンダはアフリカの宝石と呼ばれ、観光で国を立て直していこうとしています。もし観光客が殺されたりしたら国にとって大打撃で、きっとガードシステムも構築されていると信じて自分を納得させました。
 出発を待つ関空でもまだ旅を無事に乗り越えられるだろうかという不安が半分、旅直前の期待と高揚感よりよくここまで準備してたどり着いたという安堵感半分でした。

(次回へ続く)

撮影/中村治正

撮影/中村治正

撮影/中村治正

中村 しのぶ
なかむらクリニック(小児科)
〈2017年11月号〉
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