2017年
11月号

兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第七十八回

カテゴリ:医療関係

社会保障は財政破綻を招き、経済成長の足かせになるのか?

─社会保障費と国の財政について、政府はどのように説明していますか。

坂田 政府は、現役世代負担率が近い将来肩車型へと移行し、現役世代だけでは社会保障が支えられなくなると公言しています。また、一般会計においてリーマン・ショック以降、景気の悪化に伴う税収の減少により歳出と税収の差が広がり「ワニの口が拡大している」と表現されていますが、国債発行額が税収を超える年が続き、社会保障制度の財源が破綻し国債のツケを将来世代へ押しつけることになるとしています。さらに右肩上がりの社会保障給付費に対して保険料収入は伸び悩み、両者のギャップは「第二のワニの口が拡大している」と表現されていますが、社会保障給付費は将来世代からの借金、つまり公債で賄っており、それが毎年1兆円規模で増えているとしています。その上政府の公債残高は2016年には1千兆円をはるかに超え、対GDP比債務残高が230%に達し、近い将来わが国の財政は破綻するということです。

─こういった見解は社会にどんな影響を与えていますか。

坂田 このような政府の「社会保障亡国論」は、多大な悪影響を引き起こしています。国民や企業は社会保障制度が瓦解するという将来不安からタンス預金や内部留保に走り、賃金も購買意欲も抑制され、設備投資や個人消費が停滞し、その結果未だデフレ不況から脱却できずにいます。

─「社会保障亡国論」は本当なのでしょうか。

坂田 まず現役世代負担率についてですが、視点を変えて就業者1人が支える非就業者の比率で見れば1・04人→1・10人とここ80年間ほぼ一定であり(図1)、高齢者と女性が働きやすい環境を整備し就業者人口を増やせば問題ではなくなるでしょう。債務に関しては、国は資産も有しており、債務から資産を引いた「純」債務額を見れば日本国は資産が負債より多く、純債務額は約340兆円の黒字です。日本は、26年連続で世界第一位の対外純資産額を持ち続けている国でもあり、政府の財政破綻論は「意図的なウソ」とも取れます。

─しかし、社会保障費は増大しています。財源はどう確保すべきでしょうか。

坂田 まず、景気の回復が重要です。わが国のGDPに最も影響を与えるのは個人消費であり、実際に2015年の実質GDPのうち個人消費は56・5%を占めています。日本は貿易大国だと思われがちですが、輸出は17・1%だけなんですね。景気回復を望むのであれば、個人消費による内需拡大を図るべきなのです。しかし、政府は増税と歳出カットという緊縮財政で不安をあおり、その結果購買意欲が抑制され、反対の方向に向かっています。

─消費税増税を社会保障の拡充に使うと報道されていますが。

坂田 社会保障には所得の再分配による不公平性を正す機能があり、逆進性の高い消費税を社会保障財源に充てるのは疑問です。1989年に導入された消費税ですが、2014年までの26年間の消費税収入は282兆円で、法人課税引き下げによる減税分255兆円を補填した勘定です。消費税増税抜きでも、租税の再分配機能を見直して所得税、資産課税、法人課税、相続課税の再強化などで理論上は10数兆円の財源が確保できると推測されています。

─消費税は法人課税の穴埋めともとれるのですね。

坂田 世界的に見て、日本企業の法人税は度重なる減税で国際水準並にまで下がっています。また、対GNP比・対人件費比いずれの事業主社会保険料負担の割合も、基本的な制度が違う英米を除けば日本は先進国の中で最も低い水準です(図2)。企業が社会的責任を果たすべく、応能原則に基づき貢献すれば、社会保障の安定財源を創出できるでしょう。

─社会保険制度の改革でも財源が見込めそうですが。

坂田 被用者保険の保険料率には大きな格差があります。大企業が組織し平均給与の高い組合健保、事業主負担に代わって公費負担のある公務員共済組合、中小企業の社員が加入する協会けんぽの保険料率を一律化(10%)すれば、現状の保険料収入と比べて約1兆円の増収効果があると推測されます。

─社会保障は経済成長の足かせなのでしょうか。

坂田 高齢社会において医療介護・福祉の需要は増加しており、全産業中、医療介護・福祉は国内総生産額において約40%と一番高い伸び率を示しています(図3)。この分野は労働集約型ですので全産業中最も雇用誘発効果が高く、2006年~2016年の10年間に約240万人の雇用を創出しています。一方で、同期間に医療介護・福祉を除く総就業者数は285万人減少し、生産労働人口が減少しているのにかかわらず、医療介護・福祉のみが雇用が伸びています。特に地方ではその傾向が顕著で、地方の活性化にも結びついています。社会保障は決して経済成長の足かせではなく、むしろ実体経済への貢献度が大きいのです。

図1)世代別人口と就業者数の推移

図2)

図3)国内生産額(実施)の伸び(2000→2011年)

兵庫県医師会医政研究委員
坂田診療所院長
坂田 哲啓 先生
〈2017年11月号〉
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