11月号

建築構造 インサイト|Chapter 13 名古屋市科学館(FUJIなごや科学館)
名古屋市科学館(FUJIなごや科学館)
「どう建てるのか?」を追求する平尾工務店にとって、構造は大きなテーマです。おなじみの建物から世界的名建築までさまざまな建築物について、「構造」という視点を交えながら一緒に学んでいきましょう。
名古屋の中心市街地、栄にほど近い白川公園。その北側の通りをはじめて歩く人は誰しも、思わず二度見してしまうという面白い建物があります。それは2011年に竣工した名古屋市科学館の新館。巨大な球体が浮き上がっているというそのインパクトのある姿に、ダイダラボッチが野球をしていたらビルの間にボールが挟まってしまったのかな?なんて、思わずいろいろと想像してしまいますね。
もちろん、この球体は空中に浮いている訳ではありません。浮いているように見せているのです。そのギミックを実現すべく、日建設計の構造設計者たちが参考にしたのは橋の構造だとか。橋梁の中でも特に強度が高く、桁長が長めの橋でよく使用されるアーチ橋は、アーチリブの弓なり曲線の形状が荷重を両端へと流していきます。そんなアーチ橋の構造を上下逆さまにして、アーチ部分は引張力で、橋桁部分は圧縮力で、球体の荷重を受け持たせます。そしてアーチリブを球体の底面の骨組みに、さらに架橋を支持する両端の柱を両側のビルの床を支える柱に同化させることで、視覚的には球体が何にも支えられていないように感じさせる、つまり浮いているように見せることに成功しているのです。
この「逆アーチ」は2本架かっていますが、その方向にも工夫が。実は、平行ではなく対角に架かっているのです。このことにより方向性を認識させず、球体が均質であるという印象を与えています。
そして、直径38.2mのこの大きな球体自体の構造にも秘密が。実は上半分と下半分で構造が異なっています。球体内部の空間はギネス認定の世界一大きなプラネタリウム、つまり内側の上部は天体の映像を映すスクリーンです。ですから、空をより大きく見せるために極力その面積を大きくしたいですよね。そのためには上部の壁を薄くすることが求められます。また、「逆アーチ」にかかる重量負荷の低減のためには軽量化も重要です。そこで、上半分は鉄骨立体トラスと鋼管による混合構造を採用し、一定の強度のもと薄さと軽さを実現しています。一方の下半分は球体の荷重を受け止めるだけでなく、内部にある3つのフロアのスラブの支持も必要なため、外周架構を一般的な鉄骨によるトラス構造としてがっちりと構成していますが、ここに前述の「逆アーチ」が仕込まれているのです。
同素材の外装材ゆえ見た目では全くわかりませんが、このシンプルな形状に実に複雑な構造が宿っているのです。まるで惑星のようなこの巨大なボールの中には〝宇宙〟がありますが、それをビジュアル的にとは言え浮揚させてしまう構造設計者たちは建築のマジシャンなのかもしれません。

街角に惑星が出現したような、名古屋市科学館の球体

球体の架橋部分の骨組構造(イメージ)












