3月号
兵庫ゆかりの伝説浮世絵 第二十五回
中右 瑛
石の宝殿・巨石ミステリー
石の宝殿・巨石ミステリー
JR宝殿駅より南西へ1.5キロ余りのところに巨岩古跡の「石の宝殿」がある。宮城県塩釜神社の「塩竈(しおがま)」、鹿児島県霧島神宮の「天逆鉾」とともに「日本三奇」の一つとして知られている。
古くは周辺の山々は竜山石の山地として名高いが、その一隅に生石神社(高砂市阿弥陀町生石)が祀られている。この神社のご神体が巨岩「石の宝殿」。切り立った岩壁に囲まれた狭い空間にミステリーの巨石がある。樹木が生い茂り、薄暗い山影でなんとなくうす気味悪い。
高さ5.7メートル、横幅6.4メートル、奥行き7.2メートルの四角い巨大岩が、水がはった池の中央にデンと居座って、あたかも浮いたようにも見え「浮き石」とも呼ばれている。小さな池だが水が涸れたためしがないのも不思議だ。
巨岩石は家がひっくり返ったような不思議な形をし、変わった造型の面白さ、デザインにも興味が湧く。
誰が測ったかは不明だが、重量は500トンはゆうにあるという。
この宝殿の採石場から切り出された竜山石は、遠く奈良、大坂に運ばれ、古墳の石棺などに使われている。
この巨石については、昔から「石の宝殿・謎の巨石」として伝承され、奈良時代の書物『播磨風土記』には「聖徳太子の時代に物部守屋(もののべもりや)が造った」!という記録があり、1500年以前にすでにこの巨石は存在していたことになる。
一方、生石神社の略記にはオオアナムチとスリナヒコナが国土を治めるためにふさわしい石の宮殿を一夜にして造ろうと図ったが、阿賀の神が反乱を起こし、未完のままに終わった!と伝えられている。
さまざまな伝承があり、まったく確定するものはない。
いつ?
誰が?
何のために?
造ったのか? まったく不明。
「石の宝殿・謎の巨石」のミステリーは尽きない。誰か、兵庫ゆかりのミステリーに挑戦してみてはいかがなものか?
バカでかい! デザインの奇抜! 石が浮く! この地がパワー・スポットとして注目を浴びる日が待ち遠しい。
■中右瑛(なかう・えい)
抽象画家。浮世絵・夢二エッセイスト。1934年生まれ、神戸市在住。行動美術展において奨励賞、新人賞、会友賞、行動美術賞受賞。浮世絵内山賞、半どん現代美術賞、兵庫県文化賞、神戸市文化賞、地域文化功労者文部科学大臣表彰など受賞。現在、行動美術協会会員、国際浮世絵学会常任理事。著書多数。