5月号
元町映画館 vol.5｜人生を諦めない女たち
ひかり探して“내가 죽던 날”
韓国映画界で近年顕著な傾向にあるのが、新人女性監督の躍進だろう。元町映画館でも、10代の少女が抱える漠然とした不安を描く『はちどり』、元映画プロデューサーの再出発を軽やかに描く『チャンシルさんには福が多いね』、母の不在が家族に与える影響を描いた『夏時間』と、観た後語り合いたくなるような良作を上映してきた。今月ご紹介するパク・チワン監督の長編デビュー作『ひかり探して』は、それらとまた違う魅力を放つサスペンスドラマだ。
休職を経て復帰した刑事ヒョンスは、島で保護観察下に置かれた少女の失踪事件を担当することになる。遺書を残して消えた少女の行動を探るうちに、ヒョンスは事件の目撃者で声を失った女の元を訪れるようになるのだった…。職場では自殺として早期に事務処理することが求められ、夫の裏切りで離婚調停中の主人公が、島の孤独な捜索では会ったことのない少女に自分の境遇を重ね、彼女の心の傷や島で育んだ暮らしに共鳴していく。精神的に追い詰められても決して人生を諦めない女たちが、お互いに影響を与え合いながら、かすかなひかりを辿る物語。そこで生まれた連帯は目には見えないが、何よりも尊かった。 （江口由美）
■『ひかり探して』“내가 죽던 날”(2020年 韓国 116分)
監督・脚本：パク・チワン
出演：キム・ヘス、イ・ジョンウン、
ノ・ジョンイ、キム・ソニョン、
イ・サンヨプ、ムン・ジョンヒ
配給：スモモ×マンシーズ
エンターテインメント
元町映画館にて
5月21日（土）より２週間上映
〈その他の注目作〉
「ルイス・ブニュエル監督特集上映 デジタルリマスター版 男と女」では、20世紀を代表するルイス・ブニュエル監督の傑作6作品（『小間使の日記』『昼顔』『哀しみのトリスターナ』『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』『自由の幻想』『欲望のあいまいな対象』）を２週間日替わり上映します。
元町映画館
神戸市中央区元町通4-1-12
66席＋1（車椅子）
TEL.078-366-2636
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