6月号
今、人のために奏で、みんなの心にビタミンを届けたい vol.1|佐渡裕さんインタビュー
指揮者
佐渡 裕 さん
新型コロナウイルス感染拡大防止に向け、世界中が今まで経験したことのない試練に遭遇しています。演奏会中止や子どもたちとの活動ができない残念な思い、そして今できることなど、世界的マエストロであり、兵庫県立芸術文化センターの芸術監督でもある佐渡裕さんにお話しいただきました。
試練の先には、進むべき新たな道がきっと見えてくる
―緊急事態宣言下、音楽家たちも苦境に立たされていますね。
オーケストラの存続と、演奏家や演奏会に関わる多くの人たちの今後について危惧するところですが、まずみんなの健康が第一、命が大事ですから、今は感染者を増やさないよう努力する時です。オーケストラは50人、100人…といった編成で、何百、何千人もお客さんが会場に来られます。終息にはかなりの時間を要するとは思いますが、この状況下で無理をして演奏会を開催しようという気持ちは全くありません。
―いつオーストリアから帰国されたのですか。どんなふうに過ごされていますか。
3月の下旬に帰国し、自主的に2週間の自宅待機をしました。飲食店の方も大きな打撃を受けておられますね。神戸は不思議な街で、いろいろなジャンルの人たちが自然と一つの店に集まって交じり合い、有意義な時間を共有しています。私はお酒が好きですから三宮界隈にもお気に入りのお店が何軒もあります。親しくしているオーナーさんは皆さん、本当に大変な状況におられるでしょうね。今は自粛の時ですから我慢して、コロナ感染が収まったら、以前と同じように訪ねたいと思っています。
次号につづく
佐渡 裕(さど ゆたか)
1961年京都市生まれ。
京都市立芸術大学卒業。故レナード・バーンスタイン、小澤征爾らに師事。2015年9月より、100年以上の歴史を持つトーンキュンストラー管弦楽団(オーストリア)音楽監督に就任。欧州の拠点をウィーンに置き、パリ管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団など、欧州の一流オーケストラに多数客演を重ねている。国内では兵庫県立芸術文化センター芸術監督、シエナ・ウインド・オーケストラの首席指揮者を兼務。著書「僕はいかにして指揮者になったのか」(新潮文庫)、「僕が大人になったら」(PHP文庫)、「棒を振る人生~指揮者は時間を彫刻する~」(PHP新書)など