2020年
6月号

兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第一〇八回

カテゴリ:神戸, 経済人

第8回神戸市民フォーラム
「フレイル予防で百歳人生を楽しく」について

─神戸市民フォーラムを主催する神戸市地域医療推進協議会はどのような組織ですか。
村岡 平成16年に当時の神戸市の医師会、歯科医師会、薬剤師会の会長が世話役となって結成され、神戸市医師会・歯科医師会・薬剤師会・ケアマネジャー連絡会、兵庫県看護協会・栄養士会・介護福祉士会などの業界団体や、神戸市身体障害者団体連合会・婦人団体協議会などの市民団体ほか、あわせて18団体が参画しています。協議会では神戸市民の保健・医療・福祉の保障体制充実を目指して業種や立場の枠を超えて連携し、意見交換や情報発信、政治や行政への働きかけなどをおこなっており、神戸市民フォーラムもその重要な活動のひとつです。

─昨年のテーマは何ですか。
村岡 神戸市民フォーラムはこれまでほぼ隔年で開催し、地域医療、認知症、医療と介護の連携などさまざまな話題を採り上げてきましたが、第8回となる昨年は「フレイル予防で百歳人生を楽しく~住み慣れた地域で、生涯自分らしく暮らすために」をテーマに、11月30日に神戸市医師会館の4F大ホールで開催しました。

─フレイルとは何ですか。
村岡 フレイルとはもともと「虚弱」という意味で、加齢により心身が衰えた状態をいいます。健康と要介護の中間の時期でもあり、適切な予防や治療によりさまざまな機能を取り戻せる可逆性があります。また、社会的、心理的、身体的とさまざまな側面があります。

─フォーラムはどのようなプログラムでしたか。
村岡 第一部は基調講演、第二部はシンポジウムという二部構成でおこないました。基調講演は老年学(ジェロントロジー)の第一人者、東京大学高齢社会総合研究機構教授の飯島勝矢先生に「なぜ老いる?ならば上手に老いるには─健康長寿 鍵は『フレイル』予防─」をテーマにお話しいただきました。

─どんなお話でしたか。
村岡 実際にフレイルチェックやサルコペニア(筋肉減弱症)テストをおこないながら、フレイルの評価方法や影響、予防など幅広く解説していただきました。また、フレイル対策の3本柱として栄養・身体活動・社会参加を挙げられた上で、しっかり食べて多めに動いて積極的に交流することが大切で、そしてその実現のために産・官・学・民が一丸となった「総合知によるまちづくり」が重要というご意見など、医療や介護福祉関係者にとっても大変有意義なお話だったと思います。

─第二部のシンポジウムはどのような内容でしたか。
村岡 口腔環境、食と栄養、社会との関わりの3つの観点から、それぞれの専門家にプレゼンをしていただき、それを受けて質疑応答をおこないました。まず神戸市歯科医師会の足立了平先生から「口の健康とフレイル」と題し、フレイルの兆候として噛むこと、食べること、しゃべることを担うお口の健康の崩壊があるケースが多いことや、その予防についてお話しいただきました。

第8回神戸市民フォーラムは「フレイル予防」をテーマに、2019年11月に
神戸市医師会館4F大ホールで開催

─しっかり食べることはフレイル対策でも重要ですよね。
村岡 それだけでなく、口腔内細菌は肺炎などさまざまな病気に結び付きますので、口腔衛生は重要なんですよ。

─「食」についてはどんな内容のお話でしたか。
村岡 兵庫県栄養士会の三谷加乃代先生が「食から考えるフレイル対策」と題し、食べることは生きることであること、加齢に伴う身体の変化は低栄養に原因があるケースが多いこと、少しの工夫で手軽に栄養をプラスできることなどをお話いただいたほか、地域包括ケアシステムにおける栄養・食生活支援や市民への啓発など兵庫県栄養士会の取り組みもご紹介いただきました。

─社会との関わりについてはどのようなお話でしたか。
村岡 関西大学社会学部教授の松原一郎先生から「フレイルな個人、フレイルな社会」というテーマでお話いただきました。社会学的にフレイルには誰にでも起こる普遍性があり、人間=個体と社会との間や接点に問題が生じていると考えられ、自分の「存在の脆弱性」が社会的孤立に結び着いているとのことです。また「8050」問題、つまり引きこもりの青年が50歳になる頃に80歳の親がその生活を支えなければいけないという問題についても言及されるとともに、風評やメディアやネットに押し流されることの危険性を指摘した上で、自己責任論でなく社会的包括によりお互いに敬い合う多文化共生社会を目指すべきだと御教示頂きました。

─今後も神戸市民フォーラムを継続していきますか。
村岡 もちろん、今後も継続していく予定です。今回は196名の方々にご参加いただき、アンケートをおこないましたが、とてもわかりやすかった、具体的な取り組みを学ぶことができたなど、おおむね高い評価をいただきました。一方で時間配分の工夫を求める声もありました。また、ご参加いただいた方々は終末期医療、睡眠障害、誤嚥、がん検査、老老介護、独居高齢者、医療機関のかかり方、救急医療体制などさまざまなテーマに関心があることもわかりました。このようなご意見に耳を傾けつつ、より良いフォーラムにしていきたいと思います。

フォーラム第一部の基調講演では、老年学(ジェロントロジー)の第一人者・飯島勝矢先生が、フレイルの評価方法や影響、予防などについて幅広く解説した

フォーラム第二部のシンポジウムで「口の健康とフレイル」をテーマに講演した、神戸市歯科医師会の足立
了平先生

兵庫県栄養士会の三谷加乃代先生は、「食から考えるフレイル対策」と題し、食と栄養について講演。兵庫県栄養士会の取り組みも紹介した

関西大学社会学部教授の松原一郎先生は、社会との関わりという観点から「フレイルな個人、フレイルな社会」というテーマで講演した

神戸市医師会副会長
村岡内科クリニック院長
村岡 章弘 先生

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