11月号
驚きと勉強の連続 世界のスパリゾート「バーデンバーデン」を訪ねて|有馬歳時記
―バーデンバーデン訪問の目的は?
當谷 有馬では若手を中心にして昨年から平成マスタープラン策定の為のワーキングを始めていました。その参考になるまちの一つ・ドイツのバーデンバーデンを訪問しました。
―温泉地としての歴史は古いのですか。
當谷 バーデンバーデンはローマ時代からの温泉地です。歴史が長い温泉という点では有馬と共通しているといえます。豊臣秀吉は武将や千利休などを伴い、正式に数えられているだけでも9回訪れています。各国の大名を有馬の温泉と料理でもてなしていたようです。
―現地ではどのような体験をされたのですか。
當谷 日本でいう観光協会の代表さんにお会いして、バーデンバーデンの進むべき方向性、各国に向けたマーケティングについて説明を受けました。イタリア、フランス、スペインなど、それぞれの国が持つ文化や国民性に対応して個別に戦略を持っていることには驚かされました。やはり世界のリゾートです。日本とはかなり違うと痛感しました。そして、フリードリッヒやカラカラなどのスパを体験し、一部参加者はブタペストやウィーンの温泉も訪ねました。温泉の提供の仕方が多彩なことに驚いて帰ってきたようです。
―実際に見るバーデンバーデンの地はいかがでしたか。
當谷 まちそのものが針葉樹林、俗に言う黒い森の中にあり、その中にまちがあります。一番驚いたことにスポンサーを募って新たな施設を建設しています。例えば世界で第2の規模を誇るオペラハウスなどもできるわけです。そういう点でも日本とは全く違います。
―若い参加者の感想は?
當谷 地域性の違いがありますが、その中で得るところは多かったようです。まとめて発表をする機会をこれから設ける予定です。
―有馬にも外国からのお客さんが増えていますが、おもてなしの参考になった点は?
當谷 日本の文化は世界に受け入れられていると自信を持って言えます。その上で、他の国の文化を理解しながらどのようにおもてなしをするかが課題だと感じました。ちょうど今、企業訪問の目的で日本を訪ねているフランスの学生さんが、有馬温泉に滞在しています。例えば、彼らに長時間の正座を強いても無理です。ところが意外にも日本酒や日本料理は大好きです。ドイツ人と違って、40度以上の熱い温泉も好きなようです。それぞれのお国柄に合わせての対応が必要ということでしょうね。
―温泉と医療についてはどうでしたか。
當谷 ドイツでは温泉は医療の一部という自信を持っています。目的に応じてアドバイスするクアガイドと呼ばれる指導員がスパには常駐しています。例えばフリードリッヒの温泉では指導員が付いて約3時間のメニューをこなします。温泉治療という処方もあり保険も使えます。音楽セラピーや森林浴と温泉を組み合わせることで温泉効果を高めているようです。3~4泊の予定で芸術やカジノ、保養等に訪れるお客さんが定着していると聞きました。
―有馬でも取り入れる方法は見つかりましたか。
當谷 治療や健康増進につながる手法を勉強しようというのも今回の目的の一つでした。温泉病院の事務局員とリハビリ指導者も参加して、現地の病院スタッフとミーティングを行い成果を得られたようです。有馬ではノルディックウォークや森林浴、日光浴と組み合わせることで健康増進プログラムを作ることができ、これはまた環境保全にもつながります。今後、具体的に進めていくことになると考えています。
―今後の新しい企画を楽しみにしています。
當谷 正幸
(社)有馬温泉観光協会 会長
銀水荘 兆楽 代表取締役