2018年
4月号

兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第八十二回

カテゴリ:医療関係

川西市医師会市民医療フォーラム
「いつ考えるの? 今でしょ! 災害時の準備~
災害時要援護者への対応を中心に」について

川西市医師会理事
長谷部クリニック院長
長谷部 信成 先生

─川西市医師会のフォーラムとはどのようなものですか。

長谷部 現在、医療をめぐってさまざまな問題がありますが、川西市医師会では市民のみなさまとともに考えていく場として、市民医療フォーラムを平成15年から県内各市の医師会に先駆けて開催しています。川西市医師会のフォーラムはまさに「手づくり」のイベントで、川西市民病院の院長が率先してカメラ係を担当したり、阪神自衛隊病院の院長が司会をおこなったり、医師会会員が積極的に運営に関わっているんですよ。

─昨年のフォーラムはどのような内容でしたか。

長谷部 昨年は11月11日に川西市みつなかホールで「いつ考えるの?今でしょ!災害時の準備~災害時要援護者への対応を中心に」と題して開催し、熊本地震で被害の大きかったエリアだった熊本県上益城郡医師会会長の永田壮一先生を招いて「熊本地震の経験に学ぶ」というテーマで講演していただきました。

─永田先生のお話はどのような内容でしたか。

長谷部 ご存じの通り、熊本では平成28年4月16日午前1時25分に、マグニチュード7・3という阪神・淡路大震災と同程度の大きさの地震が発生しました。しかもこの地震は震度7の地震が2度起こり、2度目の地震の方が被害が大きく、本震の予想がつかない地震でした。結果的に震度5弱以上の強い地震が30回近く発生し、被災地では地震がいつまで続くのか、一番大きな地震がいつ起きるのかわからないまま時を過ごしたといいます。このような被災経験のお話は現実味があり、考えさせられました。

─震災直後も大変だったでしょうね。

長谷部 例えばインフラですが、廃棄物や汚物の処理、簡易トイレの設置には時間がかかってしまい、すぐには間に合わなかったといいます。これは今後の課題ですね。

─医療体制はいかがでしたか。

長谷部 医師や看護師も被災者ですので、自宅が被害に遭っているのに仕事に来てもらうのが大変だったそうです。人的不足になってしまうのは当たり前で、被災地医療はごく初期の人たちを診る以外の診療に関わり続けることは、設備条件などの制約があってなかなか大変で難しいということでした。何もない状態では戦えないということです。

─逆に役に立ったものは何かあったのでしょうか。

長谷部 LINEやFacebookといったSNSは繋がりやすく、意外と役に立ったそうです。

─震災後の復興段階ではどのような問題がありましたか。

長谷部 復興段階で幹線道路が拡張されましたが、それに対応できずに地域の医師が廃業したり移転したりというケースがあったそうです。本来、復興や将来の防災のために道路拡張は必要かもしれませんが、そのために医師がいなくなるという現場の問題が浮き彫りになったと思います。

─災害時に重要なことは何ですか。

長谷部 災害時はまず自助、自分で自分の身を守ることが大切です。自助ができれば、「助けられる人」ではなく「助けることができる人」になります。その上で共助、地域のコミュニティで助け合うことです。そのためには常日頃からの地域のコミュニケーションが大切です。そして公助、つまり国や行政の救援・支援により生命や財産を守ることですが、その実現のためには住民の協力が欠かせません。結果として、自助・共助・公助の三位一体が地域の防災力をより高めることに繋がりますので、それぞれが積極的に自分たちのやるべきことに取り組み、災害へ備えることが大切なのではないかということです。

─私たち市民も普段からの準備が大切なのですね。

長谷部 フォーラムでは川西市総務部危機管理室の藤川氏が新しい川西市の防災マップを提示し、詳しく説明されました。このような防災マップを家族と確認し、災害時にどうするか検討して防災の適切な「心の備え」をしてもらうことが望ましいですね。そうすることで本当に防災マップが活用できるのだと思います。

─川西市医師会ではフォーラム以外にどのような取り組みをおこなっていますか。

長谷部 昭和48年に全国に先駆けてメディカルセンターを設立しています。また、昭和49年から毎年7~9月の毎週木曜日に全12回の市民向け健康講座を開催し、医師会の先生はもちろん、大学の教授も招いてわかりやすく独自の講義をおこなっています。大変好評ですぐに定員に達してしまうのですが、ぜひみなさまにご参加いただければ嬉しい限りです。

─川西市では「かわにし健幸マイレージ」の取り組みも好評ですよね。

長谷部 はい。「かわにし健幸マイレージ」では健康づくりに取り組んで、ポイントをためるとギフトカードや市の名産品との交換、地域への寄付ができます。また、市のキャラクター「きんたくん」の健幸体操なども実施しています。川西市医師会はこれからもこのように市民のみなさまとさまざまな団体・行政とともに協力しながら、健康で幸せなまちづくりを目指して取り組んでいこうと考えています。

2017年の川西市医師会市民医療フォーラムで「熊本地震の経験に学ぶ」をテーマに講演をおこなった熊本県上益城郡医師会会長の永田壮一先生

川西市総務部危機管理室主幹の藤川成希氏

フォーラムでは川西市の新しい防災マップが提示され活用のための詳しい説明がおこなわれた

川西市医師会理事
長谷部クリニック院長
長谷部 信成 先生

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