2月号
神戸市医師会公開講座 くらしと健康 65
QOL(生活の質)に影響を与える頻尿
自身の排尿状態を確認し原因の特定を
─頻尿とはどのようなものですか。
多田 頻尿とは頻回の尿意または頻回の排尿のことです。頻尿は昼間の頻尿、夜間の頻尿、昼と夜両方の頻尿があります。通常の排尿は表1のとおりで、一般的に昼間は排尿回数が8回以上で排尿回数が多いと感じる場合、夜間は排尿回数が2回以上ならば頻尿の治療の対象となります。頻尿は生命に関わるような病気ではありませんが、QOL(生活の質)に影響し、特に高齢者は、深夜にトイレに行く際に転倒する事故も多いですので、的確な治療が必要です。
─頻尿の原因は何ですか。
多田 いろいろな原因が考えられ、病気の場合とそうでない場合があります。普通は排尿後に膀胱が空になり、その後100㏄~150㏄くらいになると少しおしっこがしたくなる「初発尿意」を感じます。たいていはそこから我慢して、300㏄くらいになるとおしっこをがまんできなくなる「最大尿意」を感じるようになっています。普通の生活をしていれば、24時間の尿量は1200~1500㏄なので、300㏄ごとに排尿すれば頻尿にはなりません。尿の回数が多いということは、まず尿の量が多い多尿が考えられます。多尿の基準となる24時間尿量は体重×40㏄ですので、体重50㎏の方が2000㏄以上の尿がある場合は多尿と診断されます。多尿の原因としては過剰な水分の摂取が考えられ、糖尿病の方は血糖値が高いためにのどが渇きやすく、水分を摂りすぎて多尿になる場合が多くみられます。ホルモンの異常でも尿の濃縮機能が悪くなり、薄い尿が大量に出て多尿になります。1回尿量が少ない場合、尿意が敏感になり頻尿がおこる病気が考えられ、尿道や膀胱が刺激される膀胱炎、前立腺炎、前立腺肥大症、過活動膀胱などがその原因として考えられます。
─診断はどのようにおこないますか。
多田 頻尿を訴えて来られた場合、お医者さんはどの程度の頻尿なのか、昼間および夜間の排尿回数、さらに尿失禁の有無などの問診をおこない、まず、尿検査を行います。尿沈渣の顕微鏡検査で白血球や細菌の有無と量を調べます。腹部の診察、男性の場合は前立腺の診察もおこないます。また、排尿直後の残尿測定もおこなうこともあります。その際は恥骨のすぐ上に膀胱がありますので、そこに超音波を当ててエコー検査をします。過活動膀胱の診断はチェックシートに基づいておこないます。突然に起こる耐え難い尿意(尿意切迫感)や急に尿意を感じてトイレに行くまでに我慢が出来ずに漏れてしまう切迫性尿失禁がある場合は過活動膀胱が強く疑われます。
─治療はどのようにおこないますか。
多田 糖尿病やホルモン異常による場合は、内科でそれぞれの病気の治療をおこないます。前立腺肥大症の場合はまずお薬で尿を出やすくします。膀胱炎や前立腺炎が原因の場合、細菌による場合は抗生剤を投与し、慢性の炎症の場合は漢方薬を処方して改善されることもあります。過活動膀胱の場合も抗コリン剤などのお薬で治療します。夜間頻尿の場合、おしっこのために目が覚めるのではなく、睡眠障害で目が覚めて気になってトイレに行き、これを夜間頻尿と勘違いすることがあります。そのような場合は寝る前に軽い安定剤や睡眠薬などを処方し睡眠の改善をおこなうこともあります。
─頻尿はどのように予防することができますか。
多田 まず、自分の排尿状態を知ることが大切です。起床から翌朝の起床まで24時間の排尿の時間や量などを記録する排尿日誌をつけることで、自分の1回の尿量が何㏄かなど普段の排尿の状態を確認することができます。また、普段からおしっこを少し我慢することも大切です。特に女性に多いのですが、急性膀胱炎になったりすると、少しでも尿意を感じたら排尿するようにと医師に指導されることがあります。しかし、それが癖になると頻尿になりやすいのです。確かに膀胱に尿をためすぎると膀胱炎になりやすいですが、200~300㏄ためてもふつうは膀胱炎になることはありません。そのような場合、尿中の白血球と細菌の有無や残尿量にもよりますので医師と相談し、200㏄以上ためてから排尿するようにしましょう。夜間頻尿の場合、血がドロドロにならないようにと寝る前に水分を補給する方もいらっしゃいますが、過剰な水分補給は夜間の尿意に結びつきます。夕方から寝る前にかけて、利尿作用のあるカフェインを含むお茶やコーヒー、アルコールを控えるのも有効です。