2013年
2月号

“インフォグラフィックス”で 科学と社会をつなぐ ~進化するビジュアル・ソリューション~

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(株)ズームス
代表取締役 保田 充彦さん

サイエンスとアートを融合させた新しいビジュアルソリューション、インフォグラフィクスに注目が集まっている。理研などの研究機関や大学、行政機関などの仕事を手がけ、インフォグラフィクスの最前線で活躍するサイエンスメディアクリエイター、ズームスの保田社長にお話を伺った。

情報を可視化しわかりやすく

インフォグラフィクスとはインフォメーション+グラフィクスの造語であり、情報の可視化のことで海外では普通に使われている言葉です。図面やCADなどでいろいろな情報を伝えることはこれまでもおこなわれてきたことですが、考え方としてはそれを世の中一般に広く使おうということなんですね。デザインやITの力を使い、情報やデータをより効率的に理解できるようなツールとしてビジュアルを用いるのがインフォグラフィクスの概念です。
インフォグラフィクスを専門でやっている会社はそう多くありません。昨年から経済産業省がインフォグラフィクスのプロジェクトを立ち上げたこともあり、東京の方では増えてきているみたいですが、日本ではまだまだです。しかし、海外では広がっていて、特にアメリカでは進んでいます。
ポートアイランドにオフィスを構えたのは、実は私がもともと神戸生まれなので、神戸に戻ってきて事業をはじめようとオフィスを探していた時、ちょうど神戸市のビルがここにあったというのが大きな理由です。その頃はここに大学もスーパーコンピューター「京」もありませんでした。がらんとした感じの場所でしたが、普通のオフィスより実験室みたいなイメージで、新しいことをやるにはぴったりの雰囲気があったのでここに決めました。そのうちにまわりに医療機関や研究所、大学など、まさに私たちがお客様としているようないろいろな施設ができてきて、結果的に良かったと思います。
仕事のジャンルはさまざまで、自分たちもお客様と一緒に考えてつくりあげていくというスタイルです。大学や研究機関からの依頼が今のところ多いですので、どんなものができるか常に勉強しながら作業をしています。まずはお客様が伝えたいことを理解することが大切ですので、科学の知識はある程度必要となりますが、私自身が理系出身なので、研究の内容を把握することはできます。しかし、それをどういう風に表現するかは苦労します。論文を書いたりグラフを作ったりなど、研究者ができることは研究者が自分でやります。私たちはそれを広く世の中に伝えられるように間に立つのですが、一般の人はどのようなところを見たいのかとか、どういう表現をすれば伝わるかとか、そこを考えるだけでなく、制作するための技術を身につけなければいけない。それが一番大変なところです。
難しくて見向きもされないのもいけませんが、逆に噛み砕きすぎて簡単になりすぎてもいけません。そのあたりのバランスが難しいですね。基本は正しくなければいけないのです。

科学からビジネスまで幅広く

私はもともと京都大学で航空工学を学び、IHIでエンジニアとして働き、アメリカに渡りました。当時、向こうで見てきたものが刺激になりましたね。街に出ても、科学館なんかでも日本と全く違い、デザインもすぐれ内容もしっかりしていて、それを楽しむことができました。テレビでもディスカバリーチャンネルやナショナルジオグラフィックなど素晴らしい科学番組があったりして、こういうものは日本にあまりないなと。それがインフォグラフィクスの仕事を志したひとつのきっかけです。
もうひとつは、もともと機械屋というよりはシミュレーションが中心で、当時から可視化を研究していたのです。それを研究ではなく、一般の人のために使えないだろうかと、現在の仕事を思い立ったのです。
制作したグラフィクスは、例えば研究所公開での子どもから大人まで見てもらう際のコンテンツや、記者発表のリリースやプレゼンテーションなどのアウトリーチに利用されることが多いです。企業の広報にももちろん使われますが、まだ企業がそこまで進んでないと感じています。これからはデータや情報を使った広報が大事になってくるのではないでしょうか。その時にインフォグラフィクスによる可視化は大切なツールになってくるのではないでしょうか。
これから、日本でも情報の可視化は進んでいきます。可視化という大きな土台があって、それがWEBや映像、ゲームなど最終的な形態はさまざまですが、いろいろな可能性を追求していくことが大切なのだろうと思います。また、娯楽と教養はこれからより融合していくでしょうから、そのような路線にも興味があり、そのひとつとして、文部科学省の「サイエンスニュース」というコンテンツを手がけています。テーマを定めて5分の映像をつくり、インターネットで公開しています。
科学の分野だけでなく、ビジネスのお手伝いにも力を注いでいきたいですね。例えば起業家が大きなプロジェクトを考えていても、実現のためには資金が必要ですよね。でも、投資家からお金を集めようにも、やっていないから何もないのです。そういう時にコンピューターグラフィックスなどを使えば、わかりやすくプロジェクトを説明することができると思います。

インフォグラフィックスの世界をタッチパネルで紹介する


不老不死のベニクラゲは再生医療の分野で注目される。アニメでわかりやすく紹介する


「インフォグラフィックス」とは科学をデザイン力で可視的に分かりやすく説明する


大学を卒業後、航空機のエンジン開発を手掛けた経験が、現在の仕事に生かされている


保田 充彦(やすだ あつひこ)

1963年4月4日神戸市垂水区生まれ。1982年3月兵庫県立長田高等学校卒業。1988年3月京都大学大学院工学研究科修士課程修了(航空工学専攻)スーパーコンピュータを用いた数値計算流体力学を研究、4月石川島播磨重工業(現IHI)入社。航空機のエンジン、次世代宇宙往還機用エンジン等の設計開発に従事。2006年7月株式会社ズームス設立、代表取締役就任。科学技術関連のコンテンツ制作と情報・データの可視化に取り組んでいる。

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