10月号
フランク・ロイド・ライト その思想と建築を今に Vol.4
素材の本質
様々な素材には、それぞれ違った魅力的性格がある。これを建物の建設に利用すれば、建築の形を自ずと高め、変調させ、そしてついには、その形すべてを文字どおり刷新することになる。(中略)自然の命ずるところにしたがって進みつつ、設計者は、手にする素材が何であれ、それを彼の目標に向かって、この時代の人間たるにふさわしい方法と判断力に則って、分別をもって取り扱っていかなければならない。
フランク・ロイド・ライトが手腕を発揮した時代は、現在当たり前のように使用している建築の素材がまだ登場して間もない頃であった。ライトは鉄筋コンクリートやガラス、プラスチックなどの素材も適宜使用し、特にガラスは「超素材」と評して積極的に使用。一方でそれまで伝統的に使用されてきた木材、石材、レンガなどの窯業素材も巧みに使い分け、自らの理想とする建築を完成させてきた。
つまり、重要なことは、それが自然素材であろうが合成素材であろうが、それ自体に内在する様式や本質を見抜いて理解し、その上でまさに「適材適所」とすることである。石は石として、ガラスはガラスとして適切に使用し、素材の本性を住み手の生活や環境、敷地と統合させることで、住宅の自然な性能を発揮することを目指すのである。
オーガニックハウスもまた、無垢の板床、木枠のサッシ、土の塗り壁など、住む人の感覚や健康にまで視野に入れ、素材を丁寧に扱い、その性質を知り尽くした匠の技で仕上げている。
そしてその哲学は建物の骨格にも。使用している木材は、山長商店の杉材。植林から伐採、加工まで、自然の摂理のもと木材を生産している紀州の老舗だ。風土にマッチした適切な管理で育てられた、年輪幅が細かく狂いの少ない原木を使用。さらに圧力を低くすることで沸点を下げて低温で乾燥する高度な乾燥技術により、強度も色合いも申し分のない木材となる。耐久性にも優れているので、いつまでもおだやかな暮らしを守ってくれるだろう。
木という素材を知り尽くした平尾工務店が手がけるオーガニックハウスでは、見えないところにまでライトのイズムが貫かれている。