2020年
9月号

クライアントの独り言に耳をすまし具現化する
大きな 〝お世話焼き〟が神戸を元気にする!|小山進さんインタビュー

カテゴリ:神戸, 経済人

「パティシエ エスコヤマ」のオーナーシェフ小山進氏、「兵庫ヤクルト販売」の阿部泰久社長、「フェリシモ」の矢崎和彦社長で、2018年12月に共同設立したコンサルティング会社「hitorigoto」。
自らを「大きなお世話焼きチーム」と称し、企業や自治体、お店と積極的に関わり、課題の解決や強みの引き出し方などを指導。独自の経営哲学と美意識を余すところなく駆使し、さまざまな領域の事業にコンサルテーションを行う小山氏に、同社が手掛けた事例およびその独自性を聞いた。

小山さん、矢崎さん、阿部さんを中心に、会社の運営には3人のそれぞれの息子さんや地元で頑張る若手が参加。左から小山鋭さん、小山進さん、阿部恭大さん、諸富稜さん。今後は各自の独り言を分析して、それぞれの役割を具現化し、仕事の範囲を広めていきたいとのこと

ユニークな名を冠したコンサルティング会社

…ヒトリゴト株式会社を設立された経緯は?
フェリシモの矢崎さんと会食すると、僕が“独り言”さながら思いつくまま話すことに矢崎さんが耳を傾け、次に会うときに資料にまとめて持ってきてくれるのです。そこには経営するうえで大切なことがたくさん詰まっていて、「ぜひ他の人にも活かしてほしいよね!」ということからスタートしました。僕の独り言を矢崎さんがビジネスに落とし込んでくれたように、皆の「もしも」を実現できれば、もっと素敵な世の中になる。そうして地域とのつながりが深い阿部社長も合流し、各々が得意な分野を活かしてコンサルティングを行う「ヒトリゴト株式会社」を設立。クライアントの独り言に耳をすまし、ときには代わりに呟き、企業やお店のやりたいことをまとめて具現化&価値化する事業を進めています。

…創業から約2年、どのような依頼がありましたか?
圧倒的に多いのは、商品(モノ)を売りたいという依頼です。しかし商品を売れるようにしてくれればいい、としか思っていない会社はそこが既に問題なんですね。僕たちは売れる方法を知っているものの、自分達が納得できてないものを小手先の手段で売ることは絶対にしてはいけないと考えています。クライアントの目標を達成するプロジェクトを立ち上げ、その進行プロセスから社長さんや社員さんの課題となっている考え方を変えてもらうことも僕たちの役割。だから挨拶やスリッパの整頓とか事業と直接関係ないようなところまでお世話を焼く(笑)。クライアントに「するべきこと」をちゃんと自分で「気づいて」もらって、そこへ着地するお手伝いをします。結果が出るまで、めちゃくちゃ丁寧に寄り添うのが当社のモットー、だから“大きなお世話焼き”なんです。

…老舗企業とのコラボも多いとか。
姫路駅前にまねき食品さんが開業した穴子めしの専門店「たけだの穴子めし」のお手伝いをしました。まねき食品さんは日本で最初に経木の折箱入り「幕ノ内弁当」を販売した老舗企業で、核となる店を作りたいとのことでしたので、姫路が誇る穴子を使用した出来立て穴子めしのテイクアウト店を提案。当初は「近所に既に穴子めしの人気店があるし…」という意見も出ていましたが、僕の考えは逆なんです。地域に同じメニューの繁盛店があるというのは、そのメニューを楽しむ食文化が準備されているということ。売れる要素さえ揃えれば、勝算は十分あります。そうして素材をはじめ、“バカ”がつくほど丁寧な調理方法(笑)、店の設えなど、全てにこだわりまくって8月7日にオープンさせました。
ケンミン食品さんとは「シェフがつくるビーフンのまかないレシピ」をリレー形式で紹介するWEBプロモーションを実施しました。新型コロナウイルスが世界で猛威を振るうなか、全国の一流シェフの協力を得て家庭でできるレシピを繋いでいく。同社の焼ビーフンは、創業者の高村健民氏が誰でも簡単にできるというコンセプトで売り出したロングセラーですが、今回プロを巻き込んだレシピを創造することで、社内の開発スタッフさんも焼ビーフンの尽きない可能性に気付き、自分たちで楽しくビーフン料理をつくって毎日インスタにアップするようになりました。そんなサイトを見た消費者が実際に調理したり、自分でメニューを考案したり。プロ、社内、消費者と皆が自分ゴト化することができ、焼ビーフンのレシピが加速度的に増えていきました。

流し忘れ?かゆい所? 業界の残念を発見する

…飲食関連以外も手掛けておられるんですか。
雑貨店や美容サロンなど、幅広い業種に支援を行っています。僕はお菓子業界の人間ですから、他の業界で当然とされるセオリーに違和感を覚えることも多々。例えば、美容業界ならばサロンの設計ひとつとっても設計士が内装と美容機器の組み合わせを数種のパターンから選ばせているような気がしてならないんです。ニューヨーク風とかプロバンス風とか、何々風というのは真似や嘘であって、本当でないでしょ。あとシャンプーの時に必ず聞かれる「流し忘れはないですか」「かゆい所はないですか」も嫌ですね。洗われている本人に流し忘れなんて見えへんやんって(笑)。業界の当たり前にはおかしいことがいっぱいある。それを少し直すだけで違和感がなくなります。
またコンサルティングでは、お店の想いの発信にも力を入れています。複数店舗を展開している美容院ならば、地域における各店の役割や複数である意味もお客様にしっかり理解してもらうべき。僕はそれを「意味のデザイン」と定義していて、グラフィック的なデザインではなく、その店の存在価値と考え、無駄なことをそぎ落として意味あることに熱量を注ぎ、伝えていくことが大事だと思っています。
18年前にオープンした「エスコヤマ」でも、お菓子づくりの想いをお話しするお菓子教室を始めたり、行列をなくすために、パティスリー内で販売していたアイテムをそれぞれ分家させたり、自社の「?」を解消し、新たな疑問が生まれてくるたびにさらに改善を続けてきました。
ヒトリゴトでも、そこで培ってきたノウハウを生かし、業界で働いている人だけではわからないこと、気付かないこと、考え出さないことを発見して提案していきたい。皆に「?」を感じ気づいていただき、世間にはびこる違和感をなくしていきたいです。

新サービス、小山進流 “人気店の超人気店化”

…神戸の街の今後について、どうお考えですか。
兵庫県を何とか元気にしたいという思いが会社設立の根本にあります。昨今の神戸の飲食業界は、bb9(ベベック)の坂井剛氏をはじめ、優秀な料理人が神戸から離れていく動きがあり、大ピンチやん!と危惧しています。その一方で、26歳の植田将道氏の「すし うえだ」や、29歳の女性シェフ、ウエヤマ チイ氏が腕を振るう「HAKKEI」といった若手シェフが活躍する新店も誕生して、期待が高まる部分もある。兵庫県や神戸を大事に、地元素材を使ったセンスのいい料理を生み出す頼もしい若手の活躍をぜひ、地域一体となって応援していきたいと思います。

…コロナ時代、ビジネスの前提も変わりつつあり、戸惑う人が増えています。
小さなことから大きなことまで、お困りのお店や会社に対して僕たちがお手伝いできることは多いと思います。コンサルティングは相手の気持ちをわかることだけではなく、相手が不安に思っているときに、自信満々に「絶対に大丈夫」「これが必要です!」と言い切ることが大事。ウイズコロナ時代ですが、コロナだからではなく、今、どうするべきなのかを明確に示していきたいですね。例えば、現場に行ってトイレの芳香剤のブランドや、なんなら芳香剤でなくデフューザーにした方が…という小さな規模の世話焼きでもどんどん手掛けていきたい。クライアントの強い商売をしたいという熱量が高いタイミングを見逃さず、パン!と行くスピードとそれを支えるテクニックを提供します。今をしっかり、そして思い通りにいかなかったところは走りながら修正するお手伝いもしていきます。
人気店を続けておられるオーナーやシェフは心配事=やるべきことであると考え、先手を打ち続ける習慣があります。逆に心配事を見つけられないお店は人気店でなくなってしまう可能性が高いということ。人気が失速しないよう、ベストなタイミングで動かせるのがヒトリゴトの事業価値であり、それができるチームであると自負しています。今後も役割分担して各自の得意な部分に特化して提供していくことで、“人気店の超人気店化”サービスに取り組んでいきたいと思います。

【まねき食品】さんの場合
魂のこもったブランドづくり
「丁寧なお弁当作りを」という創業時からの思いに立ち返り、その旗印ともいえる穴子めし専門店「たけだの穴子めし」を開店。“出来立て”にこだわって完全予約販売。素材と香り、そして伝統の調理方法で、姫路が誇る穴子めしの地域一番店をめざす


【ケンミン食品】さんの場合 
プロや消費者を皆、巻き込む
おいしい、楽しい、おどろきの焼ビーフンの世界を展開。小山さん考案のヨーグルトを使ったレシピやビーフンの炊き込みご飯をはじめ、さすがプロ!という面白いメニューが勢ぞろい。外出がしづらく、自宅で料理をする機会が増えている時流もあり、話題を集める

【お問い合わせ先】

hitorigoto
広報担当:阿部恭大
電話番号:090-6677-1510
メール:pr@hitorigoto.co.jp
HP:http://hitorigoto.co.jp/

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