8月号
環境ビジネスで 夢をかたちに地域貢献
株式会社 神鋼環境ソリューション
理事 プロジェクト企画・業務部
部長 梅村栄作さん
前ページに続いて、神戸市と共同でベトナム・キエンザン省で上下水道インフラ整備事業を進める
㈱神鋼環境ソリューションの梅村さんにお伺いした。
―現在、中間報告に向けて、とりまとめ段階ということですね。
梅村 ベトナム政府がキエンザン省フーコック島で立てているマスタープランの実現を踏まえながら、昨年9月から現地調査した結果を踏まえ、ケーススタディーをしている段階です。料金設定を含めた最終決定には、まだ時間がかかりそうです。
―フーコック島はどんな島ですか。
梅村 淡路島と同程度の大きさで、人口も約11万人ですから同じくらいです。イメージは淡路島のようですが、大きな山はありません。99の丘と小山があるとか。上水は配水池までポンプ圧送し、なんとか供給できそうですが、下水は高低差を利用しながら一番低い所へ導き下水処理場を造りますから、排水される場所により、いくつかの丘陵をどうクリアしていくかが課題です。
―難しそうですね…。写真を見る限りではリゾートにぴったりの良い所ですね。
梅村 今でも欧米人が観光で訪れ、長期滞在してのんびりと過ごしているようです。
―上下水道の整備が急がれるところですが、まず必要な水源は。
梅村 雨季と乾季の降雨量の差が激しく、乾季用に貯水する必要があります。川から引き込み貯水池を造り隣接地に浄水場を造り、本管を引き、管路整備して送水するという基本的な整備が必要です。水源場所を決め、人口11万人、2020年に年間観光客200万人を超えるリゾート地での人口増も加えて整備する大変な事業がこれから始まります。
―どのような事業を計画されているのですか。
梅村 当社は、上下水道建設と一部運営のノウハウは持っています。しかし、都市づくりのマスタープランをはじめ、水源場所の決定、本管の引き方、給水の仕方などは神戸市さんがノウハウを蓄積されておられます。ベトナムは今、日本の高度成長期のように本格的な上下水道整備を始めようとしているところです。そこからのスタートですから、神戸市さんのノウハウと私ども民間企業の資金、建設技術を合わせなければできない事業です。
日本企業が安心して進出できるインフラ整備を
―ベトナムの工業団地でも水処理事業を進めているそうですね。
梅村 双日さん、大和ハウス工業さん、そして当社が共同で出資した工業団地です。工業用水は、ベトナムの公社から供給される水を受水して使い、各工場で一旦排水処理します。当社は、工業団地内に再度集中的に排水処理する施設を建設し、各工場からの排水を再浄化して河川に流す二段階処理をしようとしています。この工業団地へは、水処理事業として参画するだけでなく、プロセス機器部門が初めての海外生産工場を造り、グラスライニングの製造を始めようとしています。
―そのほかにもベトナムでの事業はあるのですか。
梅村 民間工場向けの工業用水処理の仕事を今までに当社グループで6件受注しています。ベトナムは都市化が進みごみの排出が増えてきています。今後は水処理関連事業だけではなく、廃棄物処理でもベトナムでの事業展開ができればと考えています。
―ほかのアジアの国での事業展開の予定はありますか。
梅村 まずベトナムで地道に事業基盤を固め、まだインフラ整備がほとんど手つかずの東南アジア諸国などへ少しずつ広げていきたいと思っています。また、フーコック島での事業を成功させ、その経験を東南アジアでのインフラ整備に生かすことができるのではないかと思っています。
―これからの神鋼環境ソリューションについて。
梅村 国内では、国や地方自治体が民間企業と協力してインフラ整備、老朽化した設備のリフレッシュをしようとしています。そのお手伝いができればと思っています。
海外に目を向けると、日本企業がアジア諸国へ進出するにあたり、現地のインフラ整備の遅れで躊躇するケースもあります。当社も自前の工業団地を設立してきた経緯があるので、ベトナムで生産工場建設にも積極的に取り組むことができました。まずは工業団地を整備し、電力や工業用水を安定的に受給できるようにして、当社が排水処理を受け持ち、安心して日本企業が進出できるように貢献したいと考えています。また、日本のインフラ整備で培ったノウハウを海外でも展開することによって、アジア諸国でも官民が一緒になって発展できるようお手伝いできれば幸いです。
梅村 栄作(うめむら えいさく)さん
株式会社神鋼環境ソリューション 理事
プロジェクト企画・業務部長
1960年生まれ。1984年大阪大学経済学部卒、同年、神戸製鋼所入社。主に、海外プロジェクトや企画部門を担当し、
2003年事業統合時に神鋼環境ソリューションに異動、2010年経営企画部長、2012年4月より現職。