8月号
関西の地球人
ベネズエラでのエコ学校プロジェクト
田辺 眞由美さん
田辺眞由美さんは青年海外協力隊の「環境教育」の部門でベネズエラに2年間派遣された。ゴミ分別やリサイクルなどの「エコ活動」への取り組みは、南米ベネズエラでももちろんさかんで、国の教育カリキュラムでは必須であるものの、一般の人々が家庭でエコに取り組むまでには到底広まっていなかった。そこで田辺さんは「参加型のエコ授業をすること、そしてそれを持続できるようにすること」を目標に、小学生とその家族を巻き込んだプログラムを考えた。
「国際協力は『現地主体』の『参加型』の活動に変わってきています」と田辺さんは話す。これまでの国際協力は、お金をかけた施設や機材などを寄付して終わっていたが、それを実際に現地の人々が使えなかったり、故障すると修理ができず放置されるなど、結果的にあまり役に立たないことが多かった。そのため現地の人が主体となり、参加する国際協力が重要視されるようになっているとのこと。
田辺さんはトゥルヒージョ(Trujillo)州の人々とともにエコプロジェクトに取り組んだ。まず「リサイクル」。これまでもゴミ分別の意識があったが、リサイクル業者もなく、分別しても最終処分場ではすべていっしょくたになっていたのであまり意識は高まっていなかった。そこでまず家庭でできる楽しいリサイクルを提案。紙とその他のゴミを分け、紙すきの講習会を開催した。花びらや香りをつけたりするなど、オリジナルの紙を作り始めると女性たちの目が輝いた。
次に、生ゴミを堆肥にする日本の技術「高倉式コンポスト」を紹介。埋め立てゴミを少なくし、非衛生的な最終処分場や排水の問題が少しでも解決できるのではと期待を寄せる。また、マイバッグを持っているとケチで貧乏くさいといったイメージを持っていた子どもたちに、日本のふろしきを紹介したところ、「新しくてかっこいい」と注目が集まったとか。その他、農村の人々に、灰を使った害虫駆除やアイガモ農法などのエコ農法を伝えたり、土壌劣化が激しいアンデスのふもとの村で、住民と一緒に植林するなどさまざまな活動を行った。
田辺さんはトゥルヒージョ州の小学校をパイロット校とした「エコ学校認定プロジェクト」を立ち上げ、学校全体と父兄も参加したアクションプランを作成。1年間を通した活動は環境省からも評価され、その州代表のプロジェクトに選ばれたという。
「環境改善は長期戦。もとから2年間で解決できるとは思っていません」と田辺さん。「私が引き揚げた後も持続して、仕事が続いていくことが、協力隊の意義です」。田辺さんの後には後任の日本人が派遣され、田辺さんのプロジェクトを引き継いでいる。
田辺さんは神戸生まれ、3歳のときに父・田辺眞人さんの仕事のためニュージーランドへ移住。小学校4年のときに帰国し、帰国子女のクラスで学ぶ。大学はカナダのブリティッシュコロンビア大学、ドイツのフライブルグ大学社会学部の「グローバルスタディーズ」国際マスタープログラム、在学中は、国際マスタープログラムの提携校がある南アフリカ、インドの大学でそれぞれ学び、インターンシップを国連開発計画トルコ事務所にて行うなど、さまざまな国をめぐってきた。
これまで「住んだことのない大陸は南極大陸だけ」といい、英語、ドイツ語、トルコ語、スペイン語、そして関西弁を操る。知らない国で人とコミュニケーションをとるには「まず自分が柔軟であること。誠意を持って、人と合わせていくこと。人の輪に飛び込んでいって、初めていろいろなことができるのだと、子どものころから感覚的にわかっていた気がします」と話す。数年は日本で働く予定。そして「ずっと家を出ていたから、少しの間は、祖父母の世話をしている母の手伝いをしたい」と家族思いの顔ものぞかせる。