2012年
8月号
8月号
耳よりKOBE 阿部国生展「響の中から見える風景」
画家・人形作家の阿部国生さん(日本彩美会会員・委員)の、独特の作品を展示した展覧会「響の中から見える風景」が、6月9日~14日、トアギャラリーにて開催された。
昨年3月の東日本大震災以降、どうしようもない悲しい思いを抱えながら、明るい絵だけを描こうとしてきたという阿部さん。「今の日本は風が止み、心がよどんでいる気がするので、少しでも風を送り込めたら、明るい世界を表現できたら」と、「風」を感じさせる作品を描いたと話す。2011年サロン・ドトーヌ展に入選した作品は「安らぎ」と題され、一見艶やかだが安らぎに満ちた深い色合いが印象的な作品。今年はじめにスペイン、ポルトガルに旅行した際、窓越しに見た庭や、花々を描いた作品には鮮やかなグリーンが投入され、さわやかな風が吹いたようだ。
人形作品は、シャンソンの世界やおしゃれなパリの女性、歌手など阿部さんおなじみの人形が今回も注目を集め、中には、生まれてきた子どもから元気に遊ぶ子ども、そしてこれまで国を築いてきたお年寄りたちがいっしょに笑って暮らしている大作も並んだ。レディガガ、美輪明宏、研ナオコといった歌手も雰囲気そっくりの人形に。
会場には静かに賛美歌が流れる中、阿部さんの「響」ある2つの世界が展開された。