1月号
3.11とつながる 福島女子が「選択する」楽しみと少しの苦しみとは
講演 鎌田千瑛美さん
〈一般社団法人ふくしま連携復興センター理事
任意団体peach heart共同代表〉
福島の一人の声として
阪神・淡路大震災をきっかけに発足した、被災地NGO協働センター(兵庫区)が主催する勉強会「第3回ピース寺子屋」に、今なお原発などの問題を抱える福島県から福島市在住の鎌田千瑛美さんが招かれた。鎌田さんは福島で、主に女性たちを中心にした活動を展開。今回の寺子屋にも、神戸の女子高校生や大学生など若い人々が集まった。
「私一人の声がすべてではない。一福島にいる一人の声として聞いてほしい」と前置きしてから鎌田さんは話した。
鎌田さんは南相馬市で高校まで育ち、東京の大学に進学した。震災の一報は、東京で受けたという。実家は津波で流され「多くの命と文化を失った」。その後襲ってきたのは福島第一原子力発電所の事故。「震災までは“原発”ということにあまり触れてこず、電力会社につとめることは地元のステイタスでもあった。人々の産業の糧にもなってきた」。鎌田さんはそれまで東京に住んでいたので、福島でつくられた電気を使っている側であった、ということでますます複雑な思いだったという。
震災後は、絶えず「選択」をせまられてきた
原発事故後、福島の人々は、絶えず「選択」を問われていた、と鎌田さん。避難するか、しないか。福島産の食べ物を食べるか、食べないか。放射能の数値計を手に入れさまざまなことに気をつけている人もいれば、もうまったく気にしないという人もいる。「専門家でも意見がわかれている中で、これという正解がないということを認めなければ生きられなかった。つまり、個々の多様性が認められる社会に向けて、福島が挑戦しているのです」。これまでの枠組みや、あるべき姿といわれるものにとらわれず、自分で考え、それぞれが対話し、理解しあって前へ進む。“自分で選択する”自由には、多くの苦しみと責任が伴う。それでも鎌田さんは進む。
福島の女子、そして東北のいま
鎌田さんが取り組む活動のひとつに「任意団体peach heart」がある。福島の名産・桃をモチーフにしたピンクのロゴマーク。世界では「フクシマ」がマイナスの意味で有名になってしまった。ふるさとがそんなふうに思われるのは悲しい、と、ピンク色のイメージにした。
「peach heart」は本音を話す女子会として、震災直後からスタート。「私たち、安心して子どもは産めるの?」「自分の思いでふるさとに住み続けるけれど、何かあったらどうしよう」友達や彼氏にも言えないそんなことを話し合った。2年たち、少しずつ強くなった彼女たちは、さまざまな活動に取り組む。カワイイ手作りのオリジナルマスクの販売。食や命を学ぶワークショップや、福島の若者の声を伝えるための小旅行、メイクアップ講座、料理教室、そしてみんなでトーク。
また、最近では、これから子どもを生み育てる世代の支援に向けた、「子ども・被災者支援法」へパブリックコメントを提出。「妊婦さん、お子さんへのサポートはもちろん優先されるべきですが、若い女性たちの声にも耳を傾けてほしい」とし、定期健診や出産前検診の補助、無償化などを要望した。
「東北は今、いろいろな人が集まって、チャレンジする場所になっている」と鎌田さん。11月には男子だけの演劇集団が旗揚げ公演をして1400人の観客が集まるなど、若い人々の力が地域を盛り上げようとしている。私たちも今後は「なんだかワクワクできる東北・福島」のパワーを応援していきたい。
(11月25日講演より)