2014年
1月号
「猫と紅い布<女のいる風景>」2013年 30号S(部分)

神戸鉄人伝(こうべくろがねびとでん) 神戸の芸術・文化人編 第49回

カテゴリ:文化・芸術・音楽


剪画・文
とみさわかよの

洋画家
石阪 春生さん

中世的なドレスをまとった耽美的で端正な顔立ちの女性たちは何かを見据えるような鋭い目をしており、神秘的な空気を醸しています。背景に描き込まれた建物や調度品、小物、植物の描写は細密で、ひとつひとつを目で追っているうちに異次元の世界に迷い込みそうになります。石阪春生画伯の描く「女のいる風景」は、神戸の誰もがどこかで目にしているはず。謎めいた女の肖像は老若男女を問わず人気で、個展を心待ちにするファンも多くいます。ダンディーで、また論客でも知られる石阪さんにお話をうかがいました。

―毎度の質問とは思いますが、画家としての歩みを教えてください。
僕の家は澱粉問屋だったので、親から家業を継ぐために経済を学んでおけと言われて関西学院大学の経済学部へ進んだ。絵が好きだったから、クラブ活動で弦月会に入ったけどそう熱心ではなかったな。卒業後は家業を手伝ったけど面白くなくて、デザインをサイドビジネスにしながら再び絵を描き始めた。小磯良平先生と出会って新制作展へ出品を始め、幸い水が合ったのか賞を貰って、早くから会員になることができてね。40歳くらいでサイドビジネスをやめて、テーマも「女のいる風景」一本に絞り画業に専念した。その頃からぼちぼちと絵で暮らしていけるようになったけど、僕は絵描きとしては恵まれた時代に生きたんだろうなあ。
―団体展で受賞して、画商が付いて絵が売れる…それが画家の花道でしたが、今はどうでしょう?
団体展で受賞しても、履歴が増えるだけなのが現実だろう。新制作協会でも若い人材は育っているし、描き手は大変多くなっている。美術学校から毎年三千人くらいが卒業しているし、しかも女流画家の人数は並ではない。でも絵画を売って暮らす人は少なくなっているのではないかな。とにかく絵画の種類と様式がどんどん横に拡がり、CGや漫画、アニメーションなどが絵画の領域にまで入ってきている感がある。ビジュアル(視覚媒体)としてのアートをどう考えていいのか、その価値観すら定まっていないのが今の時代だろう。
―コンピューターや映像を使った表現は10年くらい前まではひとまず「現代アート」と呼ばれ、油彩画・水彩画といった従来の絵画とは別扱いだったように思います。
僕は「現代アート」という括りがよくわからない。と言うより、そういった概念で区別することはもはや無理なんじゃないかな。今言ったように漫画的、アニメ的、コンピューターを使った表現はあらゆるジャンルの作家がやっているわけで、それらすべてを「現代アート」という枠の中で語るのはおかしい。たとえコンピューターを駆使した作品であっても、絵画として制作されたものは絵画的メディアとして文化になっていって欲しい。かつては美術展そのものが一大メディアだったんだから。
―確かに、情報発信の媒体や発信方法は、変化が目まぐるしいです。
特にここ2~3年、スマホの普及で急激に変わった。誰も彼もが絶えず画面を触って何かしているけど、機械とつきあうだけで精一杯になっているんじゃないか?そのスマホも、やがて他のものにとって代わられる。デジタル文明の進化はもはや止められないが、僕は基本的にデジタル端末は発信メディアではないと考えている。ブログだ、ツイッターだ、フェイスブックだと本人は発信しているつもりかもしれないが、それは日記的なつぶやきを流しているに過ぎない。各人が自分好みの情報を流し、自分に都合いい情報を見ているだけだ。
―個人的発信は、真の「発信」とは言えない、と?
たとえば毎日の出来事をただ羅列しただけでは、ニュースにはならない。そこに編集という仕事が介在して、初めて「人に伝えるための情報」になる。編集者が受け手と向き合って情報を編集し、責任を持って世に送り出す。しかしデジタル端末を使ったお手軽な情報発信は、この大切な仕事が無いまま送信されたものだ。ネット上でのやりとりは、お互い一方的に言いたいことを送りつけるだけで、対話とは言えない。僕の目には、責任を伴わない発信をスマホが助長しているように見えるね。デジタル文明が進むほど暮らしは便利になるけど、文化は破壊されていく。
―利便性の追求は、文化を破壊するのでしょうか。
今やデジタルに人間の方が振り回されていないか?効率を最優先し、無駄を省き続けた結果、文化の灯が消えかけていると感じるのは僕だけだろうか。デパートから画廊が無くなったたら、大手スーパーと変わりない。大ホテルから文化性が無くなったら、ビジネスホテルと同じだ。出版文化も同じで、雑誌が広告やスポンサー記事ばかりになったら業界誌と一緒。一見無駄なようだけど、文芸作品や挿画が載っていて、それぞれの本の味を出していてこそ面白味がある。最近は神戸の都市文化・生活文化を支えていたものが、次々消えていくようで寂しいね。
―最後に、ご自身の仕事についてのお考えをお聞かせください。
僕は30代までに5回スタイルを変えたけど、「女」を描くようになってからはかたくなに今のスタイルを守り続けている。絵を描くということは、偉大なるマンネリズムでいいと思う。年月が経てば、同じように描いても自分が変質しているんだから。自分が新しいものとして意識して描くものは古くならない。でも所詮、構図がどうとかいうのは画面上だけの問題。それより絵画以前の思想や思考が無いと、絵はダメになるからね。常にいろんな好奇心を持つよう心掛けて、自ら心が揺れるようにしている。退屈になったらおしまいですよ。
(2013年10月7日取材)

「猫と紅い布<女のいる風景>」2013年 30号S(部分)

とみさわ かよの

神戸市出身・在住。剪画作家。石田良介日本剪画協会会長に師事。
神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。
日本剪画協会会員・認定講師。神戸芸術文化会議会員。

〈2014年1月号〉
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特集 ー扉 多彩な魅力に魅せられて 六甲アイランドにくらす
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