8月号
まごころをこめて|大平 千鶴子 <株式会社マキシン モディスト、ハットデザイナー&モードアドバイザー>
まごころをこめて
神戸のクラフトマンたち
神戸エレガンスを彩る婦人帽子の他、オリンピック日本代表や万博の日本館、航空会社の客室乗務員の制帽製作などを手掛けてきた日本を代表するハットブランド・マキシン。トアロード本店の三階にある工房では職人たちが手作業で一つひとつ帽子を作っています。帽子のデザイン・製作を行う大平さんは世界的なハットコンテストで受賞経験もある個性派です。
大平さんのような「モディスト」は、まずデザインから帽子を生み出すため、より個性的なデザインが多い。たとえば見たこともない素材で作られた帽子。大平さん独自の感性で型をとられた、帽体の微妙なラインの遊びが、女性の顔をより美しく見せる。
青森県出身、東京の杉野ドレスメーカー学院の教室で、ハリウッドの映画雑誌でしか目にしなかったような美しい帽子を見て、専門課程で帽子づくりを学ぶことを決意。エリザベス女王が来日した際に行われたパレードを間近で見た時は、女王陛下がかぶられた、小花で埋め尽くされている帽子の美しさに目を奪われた。東京では、皇室の帽子を手がける工房につとめ、皇室のオーダーとコレクション用の帽子作りを手がけていた。縁あって神戸のマキシンへ。
フランスのハットフェスティバルで2009年入選した作品『宇宙』は、京都から比叡山に向かうバスの中で見た、山水画のような風景を帽子にした。作品づくりにおいては、写真ではなく自身の目で見た自然風景を写し取ることを大切にしている。「バランスや色は、ちょっとした手を加えることでさらに良くなることがある。もうひと手間かけることがクオリティのアップにつながるんです。そういう感性をみがくには…遊ぶことが大切(笑)。心を遊ばせて、いろいろなものを見て、香りを、味を楽しんで、五感全部に刺激を与えることが必要です。自然は偉大。六甲山を見ていると、春から次の春までに驚く程の色合いの変化があります。それをどう感じ、どう表現できるか」。
帽子は、ひとつ頭にのせるだけで雰囲気が変わる、と大平さん。「レストランに座ったら、上半身しか見えないでしょう。だから極端な話、上半身だけフォーマルで、さらにヘッドオーナメント的なお帽子があったら宝石を全身につけるよりグレードがアップします」。帽子にはデリケートな美意識が込められているという。
株式会社マキシン
モディスト、ハットデザイナー&
モードアドバイザー
大平 千鶴子さん
■マキシン トアロード本店
神戸市中央区北長狭通
2-6-13
TEL:078-331-6711
営業:10:00〜18:00
定休日:水曜日