2017年
8月号
8月号
神戸のカクシボタン 第四十四回 淡路島のスター達が鉄板の上で競演
写真/文 岡 力
幼少の頃、夏休みになると淡路島へ家族旅行に出かけた。宿泊先は、豪華なホテルと言いたいところだが親父が学生時代を過ごした神戸大学付属臨海実験所。海洋生物の標本が並ぶアカデミックな空間で寝泊まりをした。一番の楽しみは、砂浜に一軒だけあった海の家での食事。岩肌がむきだした絵島を前に食べた料理は景色と相まって格別の美味しさだった。そんな思い出が詰まった地へ久々に向かった。
今年で創業12年目を迎える「genpei(ゲンペイ)」は、神戸市内から車で30分。淡路島産の食材が堪能できるステーキハウスである。店内へ入ると明淡高速船岩屋港乗り場に隣接しており昔懐かしい光景が目の前に広がる。提供される牛肉は、淡路牛の中から厳しい認定基準を満たした「淡路ビーフ」。年間約200頭程度しか流通しておらず「ひょうご推奨ブランド」として県からのお墨付きを受けている。調理を担当するのはオーナーの吉田泰祐さん。実家は、地元の老舗寿司店「源平」だけあって水揚げされたばかりの新鮮な魚介や野菜も鉄板の前に並ぶ。手際よく創意工夫の味付けが施され信楽焼の器に盛り付けられる料理の数々。前菜の「ワタリガニのジュレ」にはじまり締めの「ガーリックライス」に至るまで余すことなく淡路島を食べ尽くした。神戸市内の夜景を対岸から眺め地産地消する至福のひと時。第二の故郷は、今も変わらず楽園であった。
■ステーキハウス「genpei」
兵庫県淡路市岩屋923-4
ランチ11:00〜14:30
ディナー17:00〜21:00
TEL.0799-73-2941 火曜定休
■岡力(おか りき)コラムニスト
ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「のぞき見 雑記帳」(大阪日日新聞)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)