6月号
harmony(はーもにぃ) Vol.28 誤診で生まれた子
被告に1000万円の支払いを命ずる判決でした。それは羊水検査の誤診により、障がい児が生まれるかもしれないという心の準備を両親に与えられなかったことへの慰謝料であり、亡くなった子どもの苦痛に対する償いではありませんでした。
裁判所は、誤診がなく、ダウン症だと正確に伝えていれば両親は産むか生まないかを選択できたし、産むと決めた場合はダウン症児を育てるための準備ができた、としました。また、一度は胎児に先天性異常がないと信じていたのに、いざ生まれてみるとダウン症だと知り、検査結果と違う状態であったために親は現状を受け入れられなかったし、子どもが重篤な症状で苦しみ、ついに死亡するという経過に向き合うことを余儀なくされた衝撃は大きい、としました。誤診によって予期しないダウン症児の出産で、親に対する責任を初めて医療者側に認めた判決となりました。この裁判は命の選別やダウン症児の出産そのものに焦点を当てたものではなく、医師の誤診によって両親に思わぬ苦痛を与えたことに対する慰謝料についての訴訟でしたがいろんな反響がありました。ダウン症で大学を卒業した女性は「赤ちゃんがかわいそう。そして一番かわいそうなのは、赤ちゃんを亡くしたお母さんです。検査を受けざるを得ないことがかわいそう。苦渋の選択を迫られるお母さんはかわいそう。」と話しました。
出生前診断(NIPT)では主にダウン症が対象になっていますが、この検査で判定できるのは13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症)であり、染色体の全ての疾患の中でこの3つが占める割合は70%で、残りの30%はこの検査ではわかりません。仮に検査で陰性であったとしても先天性疾患を持つ子どもが生まれてくる可能性はあるのです。これから胎児の遺伝子検査が進んでいくと、一体どんな子を誕生させ、どんな子を誕生させないのか。完全に正常な遺伝子を持っている人などいないのです。この訴訟はさまざまな課題を投げかけましたが、詳しくは「選べなかった命~出生前診断の誤診で生まれた子」(河合香織著 文藝春秋)をお読みください。この本を参考にまとめました。
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