2012年
3月号
3月号
向山和子さん 震災を越えて17年間の生き様を伝えたい 『向山和子の世界』出版記念小品展
水墨画家の向山和子さんが、作品とエッセイを収めた本『向山和子の世界』を出版。記念して、2月1日~15日、ジュンク堂書店三宮センター街店で作品展を開催した。
向山さんの須磨の自宅は阪神・淡路大震災で全壊。直後は絵を描くことなど一切考えられなかったが、1年半後に家の再建のための地鎮祭を終えた後、絵を描く夢を見て、再び描く気になったという。初めて描いた絵は、その後の岳シリーズ第一号となった「夢象」。雄々しい峰の山の絵だ。あれから時がたち、震災の恐ろしさや悲しさが薄らいでしまうのに気づき、昨年、エッセイの執筆に取りかかった。3月の東日本大震災以前に著書は完成していたが、今回の震災にあたって、もういちどあのときの思いを伝えたいと決意した。
「震災直後は、鎮魂と再生などというきれいな言葉ではなく、生かされた命を生きるのに必死だった。それが再生の日々だった」と向山さん。力強い竹の絵に勇気づけられたという知り合いの手紙を読み、「描いた本人がへたっていてはいけない」と自分を叱咤激励したとか。
今回の小品展のオープニングには多くの人が訪れ、向山さんが「席上揮毫」(その場で書画を書くこと)をして盛り上がった。向山さんは平成23年度神戸市文化活動功労賞を受賞。