2019年
10月号
『機動戦士ガンダム』©創通・サンライズ

くらしの中のアート|アニメ界の伝説 富野監督の世界初の大回顧展!

カテゴリ:文化・芸術・音楽, 神戸

富野 由悠季 Tomino Yoshiyuki
撮影:鈴木 心

©手塚プロダクション・東北新社 ©東北新社 ©サンライズ
©創通・サンライズ ©サンライズ・バンダイビジュアル・バンダイチャンネル ©SUNRISE・BV・WOWOW ©オフィス アイ


今から2年と半年ほど前に一本の電話がありました。
「富野由悠季さんの展覧会をやりませんか?」というその内容に仰天、そしてすぐさま「是が非でも!」とお返事してしまいました。電話の主はこの度の「富野由悠季の世界」展の企画チームのリーダーのお一人、福岡市美術館の山口洋三学芸員でした。それからあっという間に時間が経ち、いよいよ展覧会がオープンします。
富野由悠季さんのお名前にピンと来ない方でも、『無敵超人ザンボット3』や『機動戦士ガンダム』、『伝説巨神イデオン』に『聖戦士ダンバイン』といったアニメ作品には聞き覚えがあるのではないでしょうか。子供時代に夢中になった、という方もおられるかも知れません。富野さんはこれらの作品の総監督をつとめられたアニメ界の伝説とも言うべき存在です。展覧会ではアニメ演出としてのデビューを果たした『鉄腕アトム』から数えて55年にわたる富野監督の仕事を、3,000点を超す資料や作品、映像によってたどります。

アニメのタイトルで数えれば30を超える富野監督の作品について、可能な限りそのすべてを取り上げつつ、さらにそれぞれの特徴や見所などを示す。しかも展覧会という形式で。これは大きなチャレンジです。なぜなら、作品の完成形であるアニメは、鑑賞のために一定の時間がどうしても必要だからです。家や劇場でゆっくり寛ぎながら見たいところですが、展覧会という場では、会場を移動しながら作品や資料をみていくという形式をとらざるを得ません。さらに、富野監督は自分自身で完成作品の素材として用いられる「絵」を描くことはないので、「もの」を通じて監督の仕事を示すことも簡単にはいかないのです。

例えば、クラシック音楽における指揮者は楽器を演奏しません。しかし、楽器の演奏者を指揮することで、演奏全体を自身の作品として表現することができます。アニメの監督も同様に、数多くの才能あふれるスタッフとの協働によって、自らの作品世界を作り上げていきます。これが「チャレンジ」と書いたふたつ目の、そして最大の理由です。
展覧会場には大河原邦男氏や安彦良和氏、永野護氏といった才能溢れるクリエイターによるメカやキャラクターの設定資料、レイアウトや原画、多くのスタッフが手掛けたセル画などがならび、監督の思い描いた世界が作品として結実していく過程を追うことができます。さらに、展覧会の最大の目玉である監督自筆による絵コンテも必見です。絵コンテは、映像の流れや場面ごとのカメラのアングル、登場人物たちの動きや台詞などを示す、映像の設計図ともいえるもの。この絵コンテを完成した映像と見比べると、富野監督が細心の注意を払って限られた時間の中に多くの情報を盛り込もうとしたことがわかります。こうした資料の多くは初公開のものばかりです。
大ボリュームの作品・資料・映像によって富野監督の仕事に迫る世界初の大回顧展です。全国の6つの美術館から集まった7名の学芸員が調査を重ね、企画構成を行った渾身の企画をどうぞお見逃しなく。

兵庫県立美術館 学芸員 小林 公

兵庫県立美術館 「富野由悠季の世界」

■会期 10月12日(土)~12月22日(日)
■会場 兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
■時間 10:00~18:00(金・土20:00まで、入場は閉館30分前まで)
■休館 月曜日
    (ただし、10/14・11/4〈月・休〉は開館、10/15・11/5〈火〉は休館)
■料金 一般1,400円、大学生1,000円
    70歳以上700円、高校生以下無料
■交通 阪神「岩屋駅(兵庫県立美術館前)」から南へ徒歩約8分
■お問い合わせ TEL.078-262-0901

『機動戦士ガンダム』©創通・サンライズ

富野由悠季 宇宙船 1954年 ©オフィス アイ

『ガンダム Gのレコンギスタ』©創通・サンライズ

富野由悠季 宇宙船コックピット 1954年 ©オフィス アイ

富野由悠季 劇場版『The IDEON(伝説巨神イデオン)接触篇/発動篇』ポスターラフ1982年 ©サンライズ

兵庫県立美術館 学芸員 
小林 公 さん

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