10月号
「技術と心を伝承」 技術者は常に 新しいことに挑戦するもの
代表取締役会長 比屋根 毅さん
創業者・比屋根毅会長がベルギー国王より勲章を受章
洋菓子は神戸のライフスタイルに欠かせない存在だが、その文化の大きな礎を築いた比屋根毅会長が、ベルギー国王アルベール2世より「レオポルド2世勲章コマンドール章」を受章するという栄誉に輝いた。
レオポルド勲章はベルギー王国の発展に貢献した人物に授与されるもので、その中でもコマンドール章は民間人に与えられる最高位の章と位置づけられている。比屋根会長は長年、お菓子づくりを通してベルギーと日本の文化・経済交流に尽力してきたことが評価された。
エーデルワイスは1910年創業のベルギー王室御用達のショコラティエ「ヴィタメール」と1989年に技術提携を締結。ベルギー以外でははじめての「ヴィタメール」を誕生させ、現在では16店舗展開するメジャーなショコラティエと発展させた。また、エーデルワイスのスタッフもベルギーで積極的に研修を重ね、「ヴィタメール・ジャポン」をはじめとするエーデルワイス各ブランドには技術や哲学などベルギーの伝統が息づいている。さらに製菓道具や菓子に関する貴重な資料を収集しエーデルワイスミュージアムを設立、ベルギーをはじめとするヨーロッパの菓子文化を日本に伝えている。
6月13日、東京の駐日ベルギー大使館で叙勲式がとりおこなわれ、フィリップ皇太子殿下より直々に「日本とベルギーの架け橋になってほしい」との言葉を添えられ勲章を授与された比屋根会長は「日本の技術が本場からも認められたということだと思います。この技術を次世代に伝えていくことが私の使命です」と語った。
比屋根会長の受賞は洋菓子の街を標榜する神戸にとっても名誉なことであるとともに、神戸の洋菓子業界にとって大きなマイルストーンとなった。
8月27日には兵庫県洋菓子協会顧問の濱田正二氏を代表発起人として、受章を祝うゴルフコンペが宝塚ゴルフ場で開催された。
おなじみの「アンテノール」がブランドイメージを一新
エーデルワイスが全国に45店舗展開する神戸発祥の老舗ブランド、アンテノールが9月12日からブランドイメージをリニューアル。ロゴマークやパッケージデザイン、店舗イメージやユニフォームも新たなデザインに生まれ変わった。
目指したのは『上質な定番』。長年親しまれてきた「騎士」を受け継ぎつつ、品格あるクラシック・モダンなテイストに。アイデンティティを表現すべく、ブランド発祥の地である「KOBE」の文字とエーデルワイスの創業年「1966」があしらわれている。基本デザインパターンは歴史ある伝統のモザイクを採用。
ロゴデザインは、シャープの液晶テレビ「AQUOS」などのプロダクトデザインを手がけるデザイナーの喜多俊之氏。比屋根会長も自らイタリアの喜多さんのアトリエに飛び、約2年間構想を練ったそうだ。パッケージは喜多氏とバカラ・グラスのデザインも手がけるイタリア・ミラノサローネ・主幹デザイナー、クリストフ・ラドル氏とのコラボレーションで、斬新でドリーム感に満ちたデザインに。
これを記念して、大阪梅田・阪神百貨店のアンテノール阪神梅田本店で9月12日、記者発表とテープカットが行われ、比屋根会長と喜多氏に加え、俳優の石田純一さんもゲスト出演。プレゼントの達人としても知られる石田さんはこの日「洋菓子PR大使」にも任命された。「アンテノールが神戸の老舗洋菓子ブランドであることはよく知っていました。美味しいので私も大好きです!ドラマの撮影のとき、アンテノールの焼き菓子は甘さが控え目なので、男性にもとても喜ばれるんですよね」と石田さん。奥さんの理子さんは神戸に住んでいたこともあるそうで、夫婦でアンテノールの話もよくしているとか。
比屋根会長は「技術者は常に新しいことに挑戦していくもので、洋菓子ひとすじで60年、ここで新たなスタートを切れるのは職人冥利につきます。たかが菓子屋ではありますが、この場所からさらに元気と喜び、感動を発信していきたい」と語った。
このブランドのリニューアルは「伝統」と「進化」が息づくアンテノールの姿勢を見事に体現している。ベルギーをはじめとするヨーロッパからの伝承を糧に、栄誉や歴史に溺れることなく、着実に未来へと歩む。技術や味とともにその精神が次世代へと引き継がれれば、エーデルワイスは永遠に私たちを愉しませてくれるだろう。
比屋根 毅(ひやね つよし)
1937年沖縄県石垣島出身。1952年15歳で単身沖縄本島に渡り、通信士を目指すが、洋菓子の魅力にとりつかれる。1954年神戸で洋菓子の修業に入り、国内外の洋菓子店で修業を積む。1966年尼崎市でエーデルワイス創業。兵庫県洋菓子協会会長、日本洋菓子協会連合会副会長。2010年旭日双光章受章。