2012年
10月号

草葉達也の神戸物語

カテゴリ:文化・芸術・音楽

ゲスト:臼井 真さん
(音楽教師)

 神戸で震災のあと被災者を励ましてくれたのが、今回対談させていただいた臼井真先生が作られた『しあわせ運べるように』という歌でした。昨年発生した東日本大震災や、世界各地の自然災害の時も、被災者を励ます歌として色んなところで流されていました。
 そんなメッセージを込めた心を動かす歌を作った臼井先生には、以前からぜひお会いしたいと思っていました。

草葉 はじめまして。先生は神戸生まれの神戸育ちだそうですが。
臼井 はい、神戸から一度も出たことがない生粋の神戸です。東灘区の岡本で生まれました。本山第二小学校、本山中学校、家は本山中学校の東門の近くです(笑) 高校は芦屋高校です。
草葉 私は芦屋高校に非常勤で行ってますよ。
臼井 そうですかー、教えてらっしゃるんですね。
草葉 では、神戸の街は思い出だらけですね。
臼井 そうですね。センター街と元町とかはよく行きましたね。昔、貿易センタービルの南側にヤマハがありまして、そこでは中学から大学卒業までエレクトーンを習っていました。
草葉 そういえば、ありましたねー。
臼井 私は教職員になるつもりはなくて、当時はヤマハでエレクトーンの演奏者とか、指導者になれればいいなぁと思っていました。
草葉 当時流行っていましたよね、ヤマハでエレクトーン習うのが。
臼井 そうなんです。そごうの入り口とか、三宮のセンター街の上のスペースでエレクトーンを弾いている人がいて、あーかっこいいなぁ、あれで仕事になるのなら、結婚式場で弾けたらなんていう、今思えば甘い考えでした(笑) でもヤマハの指導者養成コースに入って、そんな道にと考えていましたが、たまたま受けた試験で教員になりました(笑)。
草葉 臼井先生には、やはり『しあわせ運べるように』という歌の話を聞かなければならないのですが、最近は海外でも注目されるようになったとか?
臼井 本当にすごい広がりがあります。神戸の震災以降、インターネットなどで広がって、良い意味でも悪い意味でも一人歩きしていますね。自分が被災者だからよくわかるのですが、被災された方のところには、まず食料や衣料というものが届かないといけないのに歌を聴かせるというような話がありまして、とんでもない!と断りました。
草葉 これからも頑張って、いい曲を作り続けてください。
臼井 はい、ありがとうございます。

 私もこの『しあわせ運べるように』には感動し、何度も励まされました。ネガティヴではなくポジティヴな震災のために作られた歌として、いつまでも歌い継がれると思います。

CDブック「しあわせを運べるように」


臼井 真(うすい・まこと)

1960年、兵庫県神戸市生まれ。神戸市内の小学校で音楽専科教諭を務める。1995年、阪神淡路大震災で東灘区の自宅が全壊。震災から約2週間後、身を寄せていた親戚宅で、生まれ育った街の変わり果てた姿をテレビニュースで見て衝撃を受け、わずか10分で「しあわせ運べるように」を作詞・作曲。 著書に『CDブック しあわせ運べるように』(アスコム刊)がある。

くさば たつや

神戸生まれ。作家、エッセイスト。
日本ペンクラブ会員、日本演劇学会会員
神戸芸術文化会議会員、大阪大学文学部研究科
阪南大学国際コミュニケーション学部非常勤講師
ひょうご老舗会実行委員長

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