11月号
神戸のカクシボタン 第四十七回 思い出がつまった玉子焼 こだま
写真/文 岡 力
幼少期、休日になると祖父母の家があった垂水へ足を運んだ。当時は、国鉄だった駅の改札で祖父がお出迎え。「おばあちゃん朝からいかなご炊いて待っているよ」と言いながらも家には向かわず商業施設「たるせん」に入っていく。ショッピングをしながら近況を伝えると「いつもの店に行こう」とおやつ代わりに明石焼を食べるのがルーティンとなっていた。残念ながら店舗は、阪神大震災の年を機に閉店してしまった。しかし今尚、懐かしの味に会える場所がある。
昭和40年、明石高架下ステーションデパートで開業した「こだま」は地元で愛され続ける明石焼専門店である。
言わずもがな地元では「玉子焼」と言われている「明石焼」。その歴史は古く江戸時代末期の天保年間に遡る。地場産業だった人工サンゴ「明石玉」製造の際、玉子の白身を用いていた。ある時、商人が黄身の再利用として名産明石タコを入れて焼いたのが始まりと言われている。株式会社こだま 代表取締役社長の古志英明さんにお話を伺った。「子供の頃、浜国道にあった屋台の玉子焼が好きでした。それがきっかけで父親がお店を創業しました。一時は、明石・垂水で三店舗展開していました。 現在は、商業施設のリニューアルに伴いピオレ明石東館に店舗を構えております。近隣にある「魚の棚」より仕入れた明石タコを使用しております。本ガツオと羅臼昆布をベースとしたコクのある出汁につけてお召し上がりください」。アツアツの玉子焼を頬張り締めにお出汁をすする。懐かしい味に再会し身も心も温まる。
■こだま
明石市大明石町1-1-23
ピオレ明石東館
TEL.078‐913‐0160
■岡力(おか りき)コラムニスト
ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「のぞき見 雑記帳」(大阪日日新聞)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)