8月号
人にも真珠にも、神戸の山と海、自然の光がとてもいい チョウドリー・ケタンさん
成長を遂げた神戸の真珠産業
―神戸が真珠産業に向いているといわれるのは何故でしょうか。
ケタン 元々、神戸港に真珠の輸出検査場があったのが始まりですが、真珠を選別して加工するために、自然の光が安定していることが次にあげられる大きな理由です。太陽が東から昇り西に沈むと赤い光が出ますが、神戸にはそれが少ない。北向きで仕事をしますから、山の緑を見ながらできる良い環境です。
―ラ パール ドリエントの創業は?
ケタン 祖父がインドで1947年に創業し、日本へ招かれ1958年にやって来ました。真珠の加工技術をもって、琵琶湖の淡水真珠やアコヤ真珠、黒蝶真珠などの真珠マーケットの立ち上げに貢献しました。
―ケタンさんが神戸の真珠業界に入られて、変化はありますか。
ケタン とても速くなった社会の変化に合わせて変わるしかなかったというのが事実です。そういう意味で真珠業界は、ここ10年で非常に成長したと思っています。
―ラ パール ドリエントとしては?
ケタン 日本の若い人たちは、真珠にクラシックなイメージをもっているようです。そこで、普段使いできてファッションとして楽しめるデザインを取り入れています。当社のデザイン開発部門はほとんどが女性社員です。男性目線のデザインでは女性のお客様には受けませんからね(笑)。
―ご自身の美に対する意識の高さは、どのように培われたのでしょうか。
ケタン 出身のラージャスタン州はマハラジャで知られ、インドでも文明の発祥の地といわれています。多くの宮殿があり、私の母方のファミリーの家もインド遺産に指定されています。幼い頃からこういう華やかなものに接してきたこと、父と一緒に海外の国々へも出かけたことなども影響しているのでしょうね。
山と海を楽しめる環境とインフラが充実した街・神戸
―外国人にとって神戸の魅力は?
ケタン 神戸外国倶楽部があり、国際学校も多く、病院での英語対応もかなり以前から充実しています。外国から来ても親しみやすい雰囲気です。レクリエーションのための海と山の環境があるだけでなく、インフラも整っていますね。
―特にお気に入りのスポットは?
ケタン 会社のすぐ裏の布引の滝、六甲山や摩耶山、森林植物園…、六甲カンツリーハウスもいいですよ。子どもたちのためにはアスレチック、お母さんのためには四季の花々が咲く庭園があります。子育ての環境としてもとても恵まれていると思います。
―山を楽しんでおられるのですね。
ケタン 外国人は日本の夏の湿気が苦手。車で山の方へ走れば湿気のない涼しい所へ行けるのは魅力です。子どもを連れて行き、ピクニックやハイキングを楽しんでいます。
―神戸の食も楽しんでいますか。
ケタン 他国で暮らす私の従兄弟たちが神戸に帰ってくると鉄板焼きやイタリア料理を食べに行きます。どこより美味しいそうです。野菜が美味しいからか、水が美味しいからか、何故でしょうね。私は、家族で行けるイタリア料理店がお気に入りです。でも母や妻の料理も大好きですから、家で食べることも多いです。
―外国人コミュニティーについては?
ケタン 海外の他の街と比べると、実は神戸に住む外国人はそれほど多くはありません。だからこそ、神戸外国倶楽部や神戸レガッタ&アスレチッククラブなどで国籍に関係なく皆が仲良くしているのが神戸の良いところです。各国のイベントにも国は関係なく関わっています。あまり知られていませんが、インド独立前の1913年から神戸にはインドクラブもあります。
―立派なジャイナ教寺院もありますね。
ケタン ジャイナ教徒はインドでも少数派ですが成功を収めた人が多いんです。そのジャイナ教のお寺がインド国外で初めてできたのが神戸です。ジャイナ教寺院のアーキテクチャーは素晴らしく、職人たちがインドからやって来て建てたものです。海外の色々な所にジャイナ教寺院がありますが、特に有名なのが神戸の寺院です。
住まいの理想は光が十分に入る開放的な空間
―子どもの頃の思い出は?
ケタン 北野町に住んでいた頃は夏になると、すぐ目の前の神戸外国倶楽部のプールへ家から水着のまま出かけて、遊んだことを覚えています。山が好きで、姉と一緒によく行きました。神戸には安心して遊べる公園がたくさんありますからね。
―現在のお住まいは? 気に入っているところは?
ケタン 私は北野町で生まれ育ち、14歳で東灘区御影の父が建てた家に移りました。デュプレ…2階が吹き抜けになっている空間があり、とても気に入っています。
―理想の住まいの条件は?
ケタン 光が十分に入る空間が好きですから、天井は高いこと。大きなファミリースペースとそれぞれの部屋があり、今は子どもたちの勉強もほとんどパソコンですから、何を見ているのかよく分かるようにリビングにもスタディースペースがあるといいかな。プライバシーに配慮した空間の存在も大切にしたいです。トイレは一人になれる大切な場所なので、落ち着ける雰囲気にしたいです。外国人憧れの温水洗浄便座付きで(笑)。
―日本の建物はいかがですか。
ケタン 材料が良くて、造りがしっかりしていますね。一回造れば、故障して修理したり、曲がっていてやり直したりなど必要ない。海外ではよくあるんですよ(笑)。
―最後にこれからの夢などお聞かせください。
ケタン ラ パール ドリエントは、本来が卸業者ですので今のところ販売店を持っていません。お客様に商品を直接見ていただきたいという思いと同時に、神戸で栄えた真珠産業の歴史を発信して広く知ってもらいたいという思いがあります。今のところ私の夢の段階ですが、神戸らしさをコンセプトにできる場所があればブティックを実現したいと思っています。
チョウドリー・ケタン
オリエントパール株式会社
ラ パール ドリエント株式会社
代表取締役社長
神戸の国際学校、セントミカエルインターナショナルスクール、カネディアン・アカデミィを経てアメリカ、パデュー大学を卒業。現在は真珠加工および輸出入の卸を行うオリエントパール㈱、国内の卸および小売を行うラ パール ドリエント㈱の代表取締役社長を務める。