3月号
harmony(はーもにぃ) Vol.49 旗じいちゃんの生きる道
NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」は私も時々見ている番組ですが、第489回目に「旗じいちゃんの生きる道」というタイトルで、上野敏夫さん(84歳)という交通誘導警備員が紹介されていました。上野さんはこの道25年になり、「きつい、汚い、給料が安い」と昔から言われている仕事だそうです。
高齢の警備員が多いように思いますが、毎日7時間も立ちっぱなしなので体力的にはきついようです。テレビの映像を見ていると84歳の上野さんは上下左右によく顔を動かし、実に機敏に赤と白の旗を振り、車や通行人をテキパキと誘導しています。
「単に旗を振るだけではなく、電線の設置工事をするバケット(工事用の車両)がどういう動きをするのかなるべく上を見る。道路だけ見ているのでは警備にならない。通行する車の大きさや高さに合わせて旗の振り方を変える。信号が変わるまで何台通れるかを確認し、スムーズに車を流す工夫をして渋滞を防ぐ。信号に任せるのだったら人間はいらない」という上野さんですが、停車してもらう車には必ず一礼し、「お待たせしてすみません」通行人にも「おはようございます」「行ってらっしゃい」など声をかける。
「わざわざ作業のために一車線を潰して停まってもらう、そのことへのすまなさ、地域を回って仕事をさせていただいているのだから、通行人への気遣いの気持ちは当たり前」と考えます。
最初の頃は「旗の振り方がわるい」「ちゃんと誘導しろ。このアホが!」と罵声を浴びせられたことも何度かありました。炎天下や厳しい寒さの中もつらい思いをしながら「金のため」に我慢してやっていた仕事の姿勢が変わったのは、妻を病気で亡くしてからでした。一人暮らしをするようになって妻への感謝と共に「生かされていること」への感謝の気持ちが強くなった。
「仕事をするのではなく、させていただいているんです。心の底からそう思わないと仕事は出来ないですよ」。だから、道行く人たちや車に頭を下げる。「何事に対しても気を抜かない。誇りを持ってやってるよ、俺は」という。仕事とは何か、を考えさせられた番組でした。
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