2022年
3月号
1Fエントランスホール。シロタ株を発見した代田稔博士の言葉、「人の和(=輪)」をテーマにした作品「WA」は、陶芸家・市野雅彦さん作。壁面は左官職人・久住有生さんの手による

未来の社員への贈り物 兵庫ヤクルト新社屋「健康情報発信station」完成

カテゴリ:神戸, 経済人

兵庫ヤクルト販売株式会社 代表取締役
阿部 泰久

今後長く使い続ける若い社員たちの意見を取り入れながら進めてきた兵庫ヤクルト新社屋プロジェクト。2020年9月に着工し、21年7月16日「健康情報発信station」が完成した。「未来の社員への贈り物」に込めた思いを代表取締役の阿部泰久さんにお聞きした。

全社員お互いの顔が見える環境づくり

―新社屋プロジェクト始動時にまず社員の声を聞いたということですが、どういった意見が多かったのですか。
一番多かったのが「ミーティングができる場所をたくさん欲しい」という意見でした。それに応えてミーティングルームや打ち合わせができるスペースを各所にたくさんつくりました。今、フルに活用している様子を見ると、「狭くてごちゃごちゃした所で社員には不便をかけていたんだなあ」とつくづく思います。その他にもトイレの数を増やしてほしい、シャワールームや休憩室をつくってほしい、などありました。

―全ての要望を取り入れるわけにもいきませんね。
そうですね。一旦こちらで預かり、面積や予算の範囲内でどんな広さでどう配置をするかなど設計計画を固め、もう一度、社員に返してアイデアを出してもらいながら詳細な空間づくりをしました。

―働く環境が大きく変わったのでしょうね。
命題は「全社員お互いの顔が見える環境づくり」。今まで2階と3階に分かれていた業務スペースを2階ワンフロアに集約しました。役員室も同じフロアに置き、私もすぐにオフィスに行けるようになりました。社員たちは鬱陶しいかもしれませんが(笑)。

―社員食堂も魅力的ですね。
実は震災後、会社を維持するために経費節減をする中で一つだけ心残りだったのが、食堂で長年働いてくれていた社員やパートさんを解雇せざるをえなかったことです。そこで設計途中に、「社員食堂を復活させよう」と提案しました。通常の会議室をつくる予定のところへ社員食堂「みのりカフェ」をつくり、運営をウオクニさんにお任せしました。健康を考えながら地元食材を取り入れ、季節のイベントに合わせたメニューや時にはヤクルト製品を使う「うちだけのための献立」を提案してくれています。1カ月分のメニュー表を見て社員が予約を入れる食数だけつくってくれますから食品ロスも出しません。健康産業の社員がカップ麺やコンビニ弁当ばかり食べていては、問題です(笑)。体に良くて美味しい食事を楽しまなくてはね。

―おしゃれなカフェのようですね。反響はどうですか。
白いテーブルに丸椅子という社員食堂にはしたくなくて、兵庫県在住の木工作家・迎山直樹さんと婦木佑太さんにもお願いして、木のぬくもりが感じられる空間にしました。食事時間はもちろん、その他の時間帯も仕事場として使うと、「集中できる」「話がしやすい」という声があり、社員だけでなく外から来られる方にも「落ち着く」「癒される」という声を頂いています。

―1階の「兵庫ヤクルトの歩み」は66年の歴史がよく分かりますね。
熊本で出会った創業者夫婦が、乳酸菌シロタ株と出会い、当時は誰も知らない「菌」を飲んでくださいと言うのですから、大変な苦労だったでしょうね。この原点だけは若い社員、今後入社する社員にも知ってもらう必要はあると思っています。

社員には常に〝いいもの〟に触れていてほしい

―地元の職人さんや作家さんの素晴らしい作品ですね。
日頃からのお付き合いや新たな出会いもありました。三十年来の付き合いの陶芸家の市野雅彦さん、フェリシモの矢崎和彦社長を介してお知り合いになった左官職人の久住有生さんをはじめ、エス コヤマの小山進さんを介して庭師の松下裕崇さんと出会い、地元の森の自然に近い庭造りをしていただきました。和紙職人のハタノワタルさんとの出会いもありました。皆さん、あちこちでプロジェクトに携わっておられるチームの一員です。こちらからは要望を出し会話の場面を作っただけなのですが、皆さんのチームワークで、誰か一人の個性が立ちすぎたり、ぶつかり合ったりすることもなく、それぞれの個性がうまく融合して素晴らしい作品ができたと感謝しています。

―大きな投資ですね。
いいものは長持ちします。建て替えたり、作り変えたりすることを思えば、一時の投資は無駄ではないと思っています。長い人生の中で私は旅でいろいろな所へ行かせてもらったり、いい所で食事をさせてもらったりしました。社員にもできる限り、いいものに触れてもらいたいという思いもあります。

地域の役に立つ大木になろう

―「健康情報発信station」に込めた思いは。
「エリア内で病気になる人を一人も出さない」を目標に健康情報を発信し、人が集まり交流するエリア内31の「ステーション」の始発駅の役割を果たします。

―販売センターではなく「ステーション」なのですね。
創業50周年を機にそれまでの「販売会社」という概念を大きく変えることになりました。きっかけはある先輩から「50年前、ここにまかれたヤクルトの種を大きな木にしてくれたのはお客様。くつろぎや日陰を与えれば大木はなくてはならない存在になるが、恩返しができない木は伐採される」という趣旨の言葉を頂いたことです。それまでもお一人暮らしの高齢者様の安否確認活動「愛の一声運動」などでお役に立っているつもりだったのですが、お客様への健康情報発信や楽しんでいただける行事は少ないことに気付きました。まず工場見学を始め、バス3台、年間延べ約300回実施してきました。コロナ禍で中止していますが、ヤクルトレディからも「ぜひ続けてください」という声が上がっていて収束後には再開予定です。そして健康教室の回数を増やし、ステーションごとにお客様対象のイベントやセミナーの開催も積極的に進めてきました。

大切なことは、風土づくり

―時代とともに変わっていくヤクルトの使命もありますね。
エリア内約160万人の人口が2040年には約130万人に減少します。日本社会全体の少子高齢化は分かり切っていることですから、売上減少の言い訳にはできません。160万人の約10・5%、16万5000本のヤクルトを飲んでいただいていますが残り約90%の方にもヤクルトを知って飲んでいただき、美しくいていただくための化粧品をお届けする。さらに今後は超高齢化社会でヤクルトができるお役立ちを考え、お客様との関わりを深めていく。その一つが現場で日頃からお客様との信頼関係を築いているヤクルトレディを通して老人ホームをご紹介する「円か」です。地域から信頼されるヘルスケアカンパニーになろうと、若手社員たちがお役立ちサービスをいろいろ考えてくれているようです。

―社長として社員に常に伝えていることは。
社員は家族。一緒にいる時間が家族より長いわけですからね。これは創業者以来ずっと社員に伝えていることです。

―経営者として大切にしていることは。
組織風土を大切にしたいですね。風土が良くなれば業績も上がります。そのために大切なことは情報共有です。社員お互いが何をしているのかを知り、お客様から頂いた嬉しいお声や成功事例を共有して認め合い、たたえ合い、助け合う。そして、経営者が決断して方向性を出し、それを受けた社員たちが一番良い方法を見つけ、「やらされ感」なく自分たちで楽しんで仕事ができる風土を大切にしたいと思っています。

1Fエントランスホール。シロタ株を発見した代田稔博士の言葉、「人の和(=輪)」をテーマにした作品「WA」は、陶芸家・市野雅彦さん作。壁面は左官職人・久住有生さんの手による


2F ファミレスをイメージしたミーティングスペース


3F 社員食堂「Minori café」


1Fでは兵庫ヤクルトの歩みを紹介


木工作家・婦木佑太さんの作品


トイレのアイコンにもヤクルトが隠れている


現地の土で焼き上げたお猪口は、陶芸家・市野さんからのプレゼント


3F ガーデンテラス


1F Yakult Bio Kitchen


「Minori café」には読書スペースも。選書は幅允孝さん

兵庫ヤクルト販売株式会社
代表取締役 阿部 泰久(あべ やすひさ)

1956年神戸市生まれ。甲南大学経営学部卒業。「健康お役立ちおもてなし企業」 の経営ビジョンの下、兵庫一の感動とおもてなしを実践できる会社を目指している 現在、㈱ヤクルト本社 中日本支店 支店長(2016 年から)を兼任、神戸商工会議所常議員

■兵庫ヤクルト販売株式会社

神戸市西区玉津町高津橋137-1
TEL. 078-912-8960
https://www.hyogo-yakult.jp/

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

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