2021年
11月号
11月号
映画をかんがえる | vol.08 | 井筒 和幸
1973年から74年にかけて、ボクに人生を決めさせた映画は数多い。大阪の道頓堀東映で一月に観た『仁義なき戦い』もそうだし、四月には『仁義なき戦い 広島死闘篇』、九月には『仁義なき戦い 代理戦争』と、わんこ蕎麦の早食いじゃないが、よくもそんなに次々に出てくるものだと感心しながら、あちこちの映画館に入り浸ったものだ。戦後復興期の寄る辺なき若いチンピラが命懸けで生き急ぐ姿は、無職のボクに未来を考えさせてくれた反面教師だった。洋画にも「お前は何者なんだ?何処に行きたい?」と問いかけてくるものが多かった。中でも、中三の時に度肝を抜かれた『特攻大作戦』(67年)の鬼才R・アルドリッチと地獄から戻ったような顔のリー・マービン主演のコンビで作られた『北国の帝王』(73年)は哲学科の教材にもなりそうな見事な活劇だった。
PROFILE
井筒 和幸
1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』セルDVD、2021年11月25日発売。