2021年
11月号
2023年から2024年の完成を目指す地下1階・地上2階のホテル「サイレンス・リング」

六甲山サイレンスリゾートが この森を守り、輝かせる

カテゴリ:神戸, 観光

2019年に六甲山上に登場した六甲山サイレンスリゾートが人気を集めている。かつて阪急が運営していた名門の六甲山ホテルの建築を受け継いで再生し、さらに新しいホテルの建設などプロジェクトは現在進行形で、楽しみがもっと膨らんでいきそうだ。
六甲山サイレンスリゾートを手がける八光グループ会長創業者・池田淳八さんに、オープンの経緯や今後の計画、六甲山の魅力についてうかがった。

誰も来なくなったのが辛い

六甲山は昔、もっと活気がありました。青春時代には我々庶民は立ち入りにくいと感じるくらい独特の高級感があって。それが近年、バブル崩壊、阪神・淡路大震災、リーマン・ショックが続くとともに、別荘地に空き家が増えて閑散とし、かつての避暑地のイメージがなくなってしまいました。
私も週末は六甲山で過ごしてきましたが、その間に誰もが来なくなったと実感し、それが辛くてね。食事をするところも喫茶店もなくなっていく。これは何とかしなければと。
我々は主に関西を中心とする輸入車ディーラーの八光自動車で商談のとき、テストドライブでよく六甲山ホテルを使わせてもらっていたんですよ。御堂筋のショールームから1時間弱なんです。湾岸線で飛ばして、山の上り下りを体験できるドライブコースに最高で。六甲山ホテルでお食事やアフタヌーンティーをいただいて帰ってきたら、だいたい契約のサインをいただけます。
また、ニューモデルの試乗会をしたり、オーナー様に集まっていただいてお茶会したりと、八光グループはイベント好きなのですが、それを開催するのに、この森の中って絶好の場所なんですよ。
都心との距離が近いのも魅力です。関東で避暑地といえば軽井沢ですが、都心から遠いんです。関西は近くにこんな素晴らしいところがある。私も仕事柄、世界中を回りますが、街からすぐなのにこれだけ自然豊かで、百万ドルの夜景が広がるところはここしかないですよ。
それで、長いお付き合いのある阪急さんにぜひ六甲山ホテルを譲ってほしいとお声がけして、2019年に六甲山サイレンスリゾートをオープンしました。

日本人は何をしていたんだ!

ここのプランニングのコンペにはいろいろな建築家の先生にご参加いただいたのですが、日本の先生はみなさん壊すのが前提で。近代化産業遺産に登録されている名門ホテルの再生、これが第一義的な目的でしたので、修復案を提案してくれたイタリア人のミケーレ・デ・ルッキさんにお願いしたのです。
旧六甲山ホテルの建物、六甲山サイレンスリゾート旧館は92年前に建てられた歴史的価値のある建築です。長いことクローズしていて傷んでいたんですよ。ミケーレさんはすぐに見に来てくれたのですが、「このすばらしいところを何で日本人は放置したままなんだ!」と怒りだして(笑)。そして彼は当時建築した竹中工務店の古い図面を確認しながら、天井裏に上がったり、ドリルで壁に穴を空けたりして、どういう構造かチェックしていましたが、たびたび改修していたみたいで、ミケーレさんの指示で床を剥がしたら素晴らしい階段が出てきたんです。
腐っていた床や柱は全部交換、耐震基準に達していなかったので補強もして。昔の設備なので部屋が小さく宿泊には向かないと判断し、ギャラリーやミーティングルームに改装しました。窓はアルミサッシでしたが、92年前にそんなものはありませんので木の窓枠に戻しました。でも断熱のためにペアガラスを入れています。古材もふんだんに使って、歴史を引き継いでいこうと。古いものを大切にする文化のイタリア人ですから、修復はお手のものです。
旧館と道向かいの「空のダイニング」は我々八光グループのものではなく、神戸市民のものだと考えています。地域のみなさまが楽しんでいただけるような憩いの場をつくって喜んでいただこう。それがコンセプトなんですよ。

森の中に隠れる新ホテル

新しく建てるリングホテルは、コロナの影響で流動的ですが早ければ2023年、遅くとも24年に完成予定です。
実は敷地内に7階建てのホテル棟があったんですよ。それを見たミケーレさんは「この森の中に鉄筋コンクリートの7階建てなんて、あり得ないだろう?」と、彼に説得されて「なるほど」と思い解体しました。我々の使命はこの森を守ること。そこに人間が共生するには森との一体化が必要ですし。
ですから、リングホテルは地下1階・地上2階、パースでは建物がよく見えていますが実際は森の中に隠れるような感じで、部屋数は32~35室、50~60㎡のスイートが中心になる予定です。眺望は木立の間から垣間見る形になるでしょう。図面の中に既存の木の位置を落とし込み、それを避けて建てるのですから大変でしょうね。
ミケーレさんの意向で石油化学製品は基本的にNG、例えば壁はビニールクロスではなく自然に還る天然素材の漆喰、床板も接着剤を使っている合板はダメ、ナラ材を使うので高くつくんですわ(笑)。
館内には神戸のアーティストの作品も飾る予定です。『神戸っ子』6月号に出ていた江藤徳晃さん・惠美さんご夫妻にもお願いしていますよ。
リングホテルは旧館などとは違うゾーン設定で一般の方が入れないようにして、専用パーキングも外からは見えない位置にするなどプライバシーに配慮します。お客様には特別な車をお貸しし、城崎温泉や淡路島などを巡っていただけるようなサービスも考えています。県内各地と連動して、兵庫県の魅力をもっと伝えていきたいですね。

六甲山の価値を文化に生かす

六甲山は、文化活動やスポーツを楽しむには最高の立地条件だと思います。ここでコンサートも開催しますし、薪能もやります。アーティストにはイベントホールを使っていただいています。サイクリングのイベントも企画していますし、愛好家が自由に六甲山を走れるような楽しみ方の提案も我々の責務だと思っているんです。トレッキングもいいですね。ゴルフも六甲山が日本の発祥の地ですし、そこの神戸ゴルフ倶楽部のコースは手作り感があって面白いですよ。あの建物もヴォーリズの素晴らしい建築ですしね。
この自然や価値をもっと生かしていきたいですよね。最近、家具職人が工房を六甲山に移しましたが、若い芸術家やものづくりの担い手が六甲山に集うコミュニティづくりに我々がお役に立てればと、利益関係なしで文化事業の計画を立てています。
音楽堂も建てようとしていますが、ある世界的な指揮者より設計段階から参画したい、しかも無報酬でという打診がありました。シチリアで紀元前千数百年の音楽堂を見たときに、こういうところで若い音楽家が勉強してくれたら本当の音楽を愉しめるのではないかと。その指揮者の方もそこで指揮したことがあるそうなので、良いアドバイスがいただけると思います。
六甲山の課題ですか?街から六甲山へ登ってくる交通網が整備されていないですよね。中学校の時、よく六甲山へスケートしに来ていたんですよ。池が凍って天然のリンクになるんです。三宮の駅前にレンタルスケート靴のお店が何軒かあって、そこで借りてバスで行くんですけれど、いつも満員でした。いま、その直通バスはなく、阪急六甲からバスでケーブルの駅で乗り替えて、山上でもまたバスに乗って…不便ですよね。不便だから誰も乗らない。乗らないから本数が減るという悪循環です。こんど六甲山の交通に関する市の諮問委員を拝命したのですが、六甲山の活性化のためには最低限、三宮から山上へ直通バスを走らせないといけないですよね。市民のためにも。
ミケーレさんはコロナが明けたらすぐ来るでしょう。先日も隣接する1万4千坪を購入し、新しい事業部も立ち上げました。現在のプランは序章に過ぎません。もっと神戸の方々、世界から集える森になるよう、これからも尽力していきます。

2023年から2024年の完成を目指す地下1階・地上2階のホテル「サイレンス・リング」

六甲山サイレンスリゾート
CEO 池田淳八さん

「サイレンス・リング」の設計は、メンフィスのメンバーとして知られる建築家ミケーレ・デ・ルッキ氏。六甲山の自然と調和する

©Giovanni Gastel

2025年の完成を目指す池の畔のカフェ

2019年六甲山ホテルを「六甲山サイレンスリゾート旧館」としてリニューアルオープン

池田 淳八(いけだ じゅんはち)

1972年八光自動車工業株式会社入社。八光カーリース株式会社・八光LR株式会社設立。関連会社3社の代表取締役も兼任。2021年4月より八光カーグループ取締役会長に就任。大阪府堺市出身

六甲山 サイレンスリゾート

神戸市灘区六甲山町
南六甲1034
TEL:078-891-0650
https://rokkosansilence-resort.com/

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

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