10月号
世界のスパリゾート「有馬温泉」に向けて
當谷 正幸
(社)有馬温泉観光協会 会長
銀水荘 兆楽 代表取締役
─この秋、ドイツのバーデンバーデンを訪問するそうですね。
當谷 いま有馬のまちづくりの基本となるマスタープランの策定をはじめたところですが、昨年に若手中心でワーキングループを構成して、次代を担う者たちがまちづくりをどう考えているのかをまとめさせました。
しかし、彼らが現実味をおびて理解できていないと感じたので、神戸都市問題研究所理事長の新野幸次郎先生や建築の専門家になぜ今、まちづくりなのかというレクチャーをしていただきました。そして次により具体性のある方がよりわかりやすいだろうと、有馬のモデルとなるような先進国の温泉地のまちづくりで成功しているバーデンバーデンを一度観てきたらどうかと若者に投げかけたのです。
文化の違いもあるし歴史的背景、都市比較論からすると有馬が対抗できるような街ではないかもしれませんが、例えばバーデンバーデンでおこなわれている温泉と医療・スポーツや温泉と環境などの取り組みは日本ではまだまだ少ない。有馬オリジナルやオンリーワンを作るにあたり参考になるのではないかと思うのです。
─バーデンバーデンは進んでいるのですか。
當谷 バーデンバーデンと比較すると、日本では昔は湯治場として栄えた温泉場も現在の温泉場は滞在するための仕掛けが少ない。ドイツでは1ヶ月くらい滞在しますから入浴やプールを楽しむけではなくクアハウスを利用したり、音楽堂で音楽セラピーや適度な運動プログラムやカジノなどを楽しみ、時間や空間を楽しんでいます。
例えば医療と温泉の組み合わせをしようとしたときに、ストレス解消とか癒やしとかをどのように提供するかだけでなく、もっと温泉を健康づくりに活用する方法をドイツならしっかりと確立しているかもしれません。
実は、ドイツには保険で温泉を利用できる制度があります。温泉は医療の一つなのです。森林浴や散策と温泉を組み合わせたりすれば血糖値がどう下がるかという、北海道大学大塚先生のデータなどがあります。有馬でも神戸大学とそのようなデータをもとに温泉の活用の仕方を提唱したいです。神戸では先端医療に力を入れていますが、それと有馬温泉とどう結びつけるかのヒントもあるかもしれません。先端医療との連携は有馬温泉病院が関わってくるので、今回、病院のスタッフも同行します。
─訪問メンバーの構成は。
當谷 旅館の若手だけでなく、青年部のリーダー経験者などさまざまな業種から若手が行きます。現地ではバーデンバーデン市当局との意見交換会も予定しています。世界のスパリゾートとの交流も大切なことです。
─マスタープランの内容はどのようなものになりそうですか。
當谷 策定委員会にはマーケティング・インフラ・ソフトと3つの部会を設け、絵に描いた餅にならぬよう実効的なプランを目指しています。
有馬川に鮎を戻そうとか、小型水力発電を設置しようとか、さまざまなアイデアがマスタープランに盛りこまれることになると思います。環境をテーマにした六甲山・有馬の地域力の活用などです。
─その中でも一番重視している項目は何でしょう。
當谷 健康づくりに関することは重要ですね。有馬温泉病院では改築がはじまりますし、松浦理事長も地域連携に前向きで、温泉と病院がどのように共存共栄ができるかを検討しています。
─連携と言えば、大学との連携にも力を入れていますね。
當谷 有馬には修学旅行受入れ旅館がないこともあり、どうやって若者を取り込んでいこうかというのが課題でした。そこで、若者の力で有馬温泉を活性化させようとはじまったのが有馬温泉湯けむり大学です。
現在は4つの大学が参画し、近畿大学はマーケティング、大阪音大は音楽セラピー、神戸芸工大はアート・クラフトのほか観光案内所のリニューアル、武庫川女子大はスポーツ科学に関わってくれています。
外国人旅行客のインバウンドの強化も課題ですが、留学生を通じた情報発信も考えています。国際温泉保養地を目指して行きたいと思っています。
─最後に、有馬のPRを。
當谷 秋の有馬では恒例の大茶会など、イベントも盛りだくさんです。ぜひ有馬温泉と六甲の地域力をお楽しみいただき、有馬の温泉浴の他お一人お一人の○○浴の発見にお越しください。
當谷 正幸
(社)有馬温泉観光協会 会長
銀水荘 兆楽 代表取締役