2026
08.17

WEB版エンタメ情報|
PRIME VINsTAGE『ジャコメッティのように』
俳優 岸谷五朗さん

カテゴリ:Web限定

寺脇康文との演劇ユニット『地球ゴージャス』を率いる岸谷五朗が、小劇場から発信する演劇プロジェクト『PRIME VINsTAGE(プライム ヴィンテージ)』を立ち上げた。旗揚げ公演となる『ジャコメッティのように』は、作・演出・出演を岸谷がつとめるオリジナル作品。8月20日(木)までABCホールで上演中だ。
今なぜ小劇場なのか…。岸谷が語った。

小さな空間から大きな芸術を!
ジャコメッティのように

―新プロジェクトを立ち上げた経緯をお聞かせください。
20代のがむしゃらに芝居をしていた頃、ある意味、演じることを許可してくれたのが小劇場でした。その時間が、多くの人に演劇を観てもらいたいという思いに繋がり、大劇場に進ませた。そして大劇場での演劇がどんどん楽しくなっていき、現在の地球ゴージャスに至ります。
そんな中、ずっと自分の中で気になっていたのが、小劇場への恩返しでした。「小劇場を忘れてないよ」と思いながらも、踏み台にしてしまった、置き去りにしてきてしまったという申し訳なさがずっと心にありました。

―では恩返しをするために…?
60歳を過ぎた頃から、小さな空間で創る演劇にトライしたい、もう一度カンパニーを作りたいと思っていました。
そんな時に、NYでイマーシブシアターの『マスカレード』を観ました。『オペラ座の怪人』をベースにした、なかなかチケットがとれない、今、大注目の作品です。その芝居は、大劇場にはない演出が施されていて、観客にも行動が求められる。いわゆる小劇場のような距離で行われる演劇。驚いたし、本当に良かったし、本当に素晴らしかった!小劇場、熱いじゃないか!
それで私も、オフ・ブロードウェイに対抗できるカンパニーを作ろう!と。このNYで芽生えた想いと恩返しの2つが、立ち上げの理由です。

―アルベルト・ジャコメッティをモチーフにしたのはなぜですか?
幼い頃、まだピカソも知らない頃に興味をひかれたのが、ジャコメッティの彫刻『歩く男』でした。ジャコメッティが好きな母の影響で、家にあった本や作品集を目にして育ちました。今回、この作品を書くために読んだ本、10数冊はすべて母が買い集めたもの。その中に、哲学者・矢内原伊作の本もありました。パリ留学中にジャコメッティと知り合い、彼の創作に刺激を与えたとされる人物です。ジャコメッティという人物を探っていくうちに、魅力的な生き方をした3人が浮かび上がってきました。ジャコメッティと妻のアネット、矢内原。彼らの数奇な運命を演劇にしたいという気持ちが沸々と湧き上がってきました。
ジャコメッティだけの世界を描いたのでは伝記になってしまう。それは避けたいと考えていたので、ジャコメッティが生きた時代と現代をオーバーラップさせながら、3人を描いていく。そんな企みがうまくいきました。

―矢内原伊作役の渡部豪太さん、アネット役の純名里沙さんへのオファーにも企みが?
豪太さんとは『歌うシャイロック』(2023年)でご一緒して、いい役者だな、いつかまた共演したいなと思っていました。矢内原とルックスが似ていて、滑舌の良さと言葉を大切にするセリフの言い方が哲学者役にピッタリ。彼にお願いしようと決めていました。
純名さんは、26年前に地球ゴージャスで共演した際、まったく違う2作品をそれぞれ見事に演じてくれました。今回もきっと魅力的な女性を作ってくれる。初めから勝算がありました。
それから今回、麿赤兒さん率いる大駱駝艦のメンバーも出演します。作品に欠かせない役どころ、大切な2人です。

―渡部さんのコメントに「岸谷さんとジャコメッティが交差する」とありますが、ご自身ではどう感じていますか?
稽古を必死に重ねるうちに、演じていて居心地がよくなってきました。それはジャコメッティの言葉が自分の中に入ってきているということだと思っています。伝記劇ではないけれど、元となるストーリーは事実ですし、史実に沿った言葉を使っているので、説得力はあると思います。
リアリティを意識しているけれど、セリフにした時に私なりの動きが入るので、実際は私が作ったジャコメッティほど軽くはなかったかもしれないですけど(笑)。

―アーティストとして、ジャコメッティに共感する部分はありますか。
共感すべきところは、辛さ、苦しさ。美術と演劇の違いはありますが、作品をゼロから創り出す者としての苦しみは理解できます。彼が残した言葉や矢内原の手記に残るエピソードを読むと、「そうか、なるほど…」と思えるんです。苦しみのあまり、筆を4、5本折ってしまったとかね。「え?」ではなく「うん、わかる」。
ジャコメッティ本人の表現より、3人がもつ各々の愛を表現するのが1番難しかったです。どこかにヒントがあるはず、と思って探し続けました。

―東京公演を今月2日に終えたばかりです。手応えはどうでしたか?
シアター・アルファ東京は、私が望んでいたオフ・ブロードウェイのような劇場で、いい芝居ができたと思っています。オーナーさんが最後に握手をしにきてくれたのはうれしかったな。
使えるお金は驚くほど少なくて(笑)、その中でアイデアを出して工夫しながらセットを作りました。「そういえばこうだったな」なんて昔を思い出しながら。だからこそ余計に気持ちが入りました。
小劇場は大小、形も様々で、どこも同じではありません。カゴの中に入れた演劇を持ち歩くのではなく、劇場のもつ素材を活かして、芝居も新たに生まれ変わらせたい。大阪公演もまた違う見え方になると思っています。
エンターテイメントの匂いがプンプンすると思いますよ。

―読者へのメッセージをお願いします。
大劇場中心の地球ゴージャスでは表現できない、小劇場の空間でしか創造できない芸術があることを知ってほしい。そして好きになってほしいと思います。
大劇場では感じることのできない1番の魅力は、演じる者とお客さんの両者にある緊張感。衣裳の質まで見える、唾を飲む音まで聞こえる距離感。演じる私たちは終始丸裸で、一分の隙もありません。それは私たちに限ったことではなく、東京公演を観たお客さんからは「緊張しました!」という声が多く寄せられました。きっと演劇の新たなジャンルとして楽しんでいただけると思います。これから日本全国の小劇場をまわること、果ては海外公演を夢見ています。
運命を駆け抜けたジャコメッティの人生と、この作品の1時間40分には相通ずるものがあります。いい芝居が生まれました。ぜひいらしてください。
text.田中 奈都子

◾INTRODUCTION

唯一無二の彫刻家アルベルト・ジャコメッティ。その鬼気迫る作品群は、まさに生き様そのものだった。そこには無償の愛で彼を支え続けた妻・アネット、そして哲学者・矢内原伊作との運命の出逢いがあった。
時は流れ、現代。ジャコメッティたちの魂に導かれるように生きる3人の男女。彼らもまた、他人を愛する喜び、自分を愛する難しさを抱えながら、自分だけの人生を模索していた。3人の必死な人生が、今、光り始めるー。

◾作品情報

PRIME VINsTAGE
『ジャコメッティのように』
大阪公演

日時:2026年8月13日(木)〜8月20日(木)〈全9回〉
会場:ABCホール
作・演出:岸谷五朗
出演:渡部豪太 純名里沙 岸谷五朗
小田直哉(大駱駝艦) 石井エリカ(大駱駝艦)

詳細はコチラ
https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/13398

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

  • DISCOVER BMW. ようこそ、BMWの走りへ|Kobe BMW
  • フランク・ロイド・ライトの建築思想を現代の住まいに|ORGANIC HOUSE
〈2026年8月号〉
トアロードデリカテッセン|デリカ[KOBECCO Selection]
未来の自分に投資する、淡路島に生まれた “未病リトリート”という新しい別荘
ANAクラウンプラザホテル神戸 World Meat Buffet(ワールド ミ…
OCEAN PLACE夏限定 OKAWARI BEER GARDEN(おかわり …
KOBECCO お店訪問|OCEAN PLACE オーシャン プレイス
2026 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展|知と美 Vol.8
美しきかな ひょうごの文化財|第二十回|優美な曲線を描く 春日造の屋根が三連並ぶ…
【KOBECCO Interview】 古きものを敬いながら 攻めの心を忘れるこ…
日本青年会議所全国大会が48年ぶりに神戸で開催 美しく生まれ変わった 神戸のまち…
コーヒーの豊かさに出会う 新しい「UCCコーヒー博物館」へ
平尾工務店|目次[PR]
最高の神戸ビーフ|ビフテキのカワムラ|扉 [PR]
新連載企画|KOBECCO×イベントミツケタ!|“大人”の夏グルメイベント特集|…
肉料理|ホテルオークラ神戸の兵庫グルメフェア|“大人”の夏グルメイベント特集|K…
スイーツ|神戸北野ホテル夏桃の贅沢スイーツブッフェ|“大人”の夏グルメイベント特…
スパイシー南米|6日間限定蘇州園サマーフェスタ|“大人”の夏グルメイベント特集|…
肉料理|神戸ポートピアホテル鉄板焼『但馬』「肉フェス」|“大人”の夏グルメイベン…
カクテル|ホテル ラ・スイート 神戸ハーバーランド 夏のカクテルフェア|“大人”…
肉料理|有馬温泉 有馬涼風ビアガーデン|“大人”の夏グルメイベント特集|KOBE…
神戸偉人伝外伝|扉
マイスター大学堂|メガネ[KOBECCO Selection]
アレックス|トータルビューティーサロン[KOBECCO Selection]
神戸御影メゾンデコール|オートクチュール インテリア[KOBECCO Selec…
御菓子司 常盤堂|和菓子[KOBECCO Selection]
フラウコウベ|ジュエリー&アクセサリー[KOBECCO Selecti…
㊎柴田音吉洋服店|ハンドメイドビスポークテーラー[KOBECCO Selecti…
永田良介商店|オーダーメイド家具[KOBECCO Selection]
L’AVENUE|パティスリー[KOBECCO Selection]
STUDIO KIICHI|革小物[KOBECCO Selection]
mogiyomogi本庄店|トマトジュース[KOBECCO Selection]…
亀井堂総本店|瓦せんべい[KOBECCO Selection]
マキシン|帽子専門店[KOBECCO Selection]
ゴンチャロフ製菓|洋菓子[KOBECCO Selection]
ボックサン|神戸洋藝菓子[KOBECCO Selection]
il Quadrifoglio(クアドリフォリオ)|ビスポークシューズ [KOB…
本物の神戸ビーフを、世界へのゲートウェイで|ビフテキのカワムラが関西国際空港にK…
ALEX|トータルビューティーサロン[KOBECCO Selection インス…
神戸で始まって 神戸で終る 74 お金がなかった。 でも、自由があった。
⊘ 物語が始まる ⊘THE STORY BEGINS – vol.69 ■国際ジ…
神戸ビーフのプロフェッショナル カワムラがお届けする神戸ビーフ講座㉘
温泉旅館の次なる挑戦 金泉を“味わう”という発想|[塩プリン専門店]有馬金泉塩プ…
建築構造 インサイト|Chapter 10 西の正倉院
「神戸洋服」本家・本流|起業明治元年|㊎柴田音吉洋服店|ハンドメイド ビスポーク…
連載 教えて 多田先生! ニュートリノと宇宙のはじまり|〜第38回〜
ひょうご神戸まちかど学だより|「日本人と仏教文化」講演会 有馬 摂津山光明院 念…
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」第178回
神大病院の魅力はココだ!Vol.57神戸大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科 南 …
徒然なるままに Vol.7
神戸のカクシボタン 第152回 日常に潜む外来生物を 「感じる・知る・考える」 …
連載エッセイ/喫茶店の書斎から 123 「虚も実も」
有馬温泉歴史人物帖 ~其の四拾壱~ 油煙斎 貞柳(ゆえんさい ていりゅう)165…
ベトナム元気X躍動するアジア 第32回|CLMV訪問 ―4か国の最新動向―
出待ちしてもいいですか?|第20回|三宮を彩る女神、荘田倫子の正体とは!?
神戸偉人伝外伝 ~知られざる偉業~ (76)後編 水木しげる