1月号
harmony(はーもにぃ) Vol.59 文字の獲得は光の獲得でした
藤野高明(84)さんは全盲で両手切断という重い障がいを持ちながら大阪市立盲学校で30年間にわたり、社会科の教員として働いてきました。昨年夏、藤野さんは神戸で自身の人生を語りました。
5人兄弟の長男として福岡で生まれた藤野さんは終戦の翌年、近所の小川の岸に捨ててあった金属製のパイプ状の管を拾って家に持ち帰り、遊んでいたところ突然爆発し、一緒に遊んでいた5歳の弟は即死。藤野さんは両眼の視力と両手を一瞬にして奪われてしまったのです。小学2年生でした。重い障害をもつようになって、学校から「就学免除」という形で教育を受ける権利を奪われてしまいました。それから13年間藤野さんは重い障害が理由で学校へ行けなかったことから、同じように重い障害を持つこどもたちが教育を受ける機会を持つことができるよう、教師の道へ進もうと決心します。
入院先の病院の看護婦さんに読んでもらった北条民雄の「いのちの初夜」がきっかけに唇で点字を読む触読に挑戦します。北条民雄自身、ハンセン病を病み、重症のハンセン病患者の中には視力と手指をなくし、唇や舌先を使って点字を読む人がいたのです。藤野さんは努力を重ねて唇で点字を読み取ることができるようになり、「文字の獲得は光の獲得でした。光を失った自らの世界に、一筋の光が差し込んで来るのを感じました」と文章に綴っています。文字を獲得してから20歳で大阪市立中学部2年生に編入。教師になるために日本大学の通信教育部に入学。5年半かけて32歳で卒業し、教員免許を取得。33歳で普通科2年生の世界史の授業を初めて担当。弱視の女子3人のクラスでした。30年の教師生活を振り返り、「人の生涯や運命はそれぞれ人に接近し、つきまといもします。障害があったとしても人生に目標を持ち、それに向かって歩き続け、夢を実現することができたら、その人生は決して一面的に不幸だとは言えないでしょう」と綴っています。
愛の手運動は
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