2016年
12月号
12月号

杉本さんイラスト・デザインによる角川文庫の横溝作品。出版社からの要望で重版の際にイラストが刷新された作品も多く、収集家泣かせという
耳よりKOBE|横溝正史生誕地碑建立記念イベント表紙画の杉本一文さんが講演
中央区東川崎町で生まれた作家・横溝正史の生誕地碑建立記念イベントが、毎年11月に開催されている。これまで綾辻行人さん、北村薫さんら推理作家や、横溝の研究家たちが登場してきた。12周年の今年は、横溝作品の有名な表紙絵を描いたイラストレーターの杉本一文(いちぶん)さんが講演。会場の東川崎地域福祉センターには県内をはじめ岡山や京都などからも参加者が訪れた。
杉本さんは1970年頃から角川文庫をはじめとする横溝作品の表紙絵と、表紙デザインを手がけてきた。多くは原作を読んでから10日ほどで絵を納品していたといい、徹夜で仕上げたことも。「原作は、ていねいに読み込んでしまうと逆に絵が描きにくくなりますから、読んでパッとひっかかった場面などを絵にしていました」と、杉本さん。エアブラシやコラージュの技法を多用した独特の画風で、「よけいな場所に絵の具が飛んじゃったりするとそれを血しぶきに変えるなどしていました」という笑い話も。生前の横溝正史にも、数回出会ったことがあるという貴重な話も披露された。
現在では、版画でオリジナルの蔵書票を作っているといい、じゃんけん大会で勝ち進んだ参加者にプレゼントされた。
また、生誕の碑建立に尽力した東川崎ふれあいのまちづくり協議会の前会長・後藤実さんが叙勲を受けたことが発表された。

杉本さんイラスト・デザインによる角川文庫の横溝作品。出版社からの要望で重版の際にイラストが刷新された作品も多く、収集家泣かせという

左からイラストレーターの杉本一文さん、会を主催した神戸探偵小説愛好會の野村恒彦さん

会場には表紙原画も飾られた

東川崎町にある横溝正史生誕碑の前で参加者の皆さん