2011年
12月号
中突堤のターミナルに入港する日本籍で最大のクルーズ船「飛鳥Ⅱ」

連載第三回 神戸発ときめきクルーズ

カテゴリ:, 神戸

郵船クルーズ株式会社 
代表取締役社長
今崎 慎司さん
   ×
神戸市長
矢田 立郎さん

―飛鳥Ⅱは日本籍で一番大きなクルーズ船ですが、まずは神戸港として飛鳥Ⅱにどのような思いをお持ちでしょうか。
矢田 先代の「飛鳥」の頃から20年にわたり、西日本の母港として神戸港をご利用いただいています。最近は、中突堤のターミナルを整備してクルーズ船にご利用いただいていますが、市街地と隣接し、六甲山も近く、高い評価をいただいています。そこへ5万トンクラスの飛鳥Ⅱに入港いただだいているのですが、対岸のハーバーランドから写真を撮るなどして市民もクルーズ船の魅力を存分に楽しみ、海の華やかさを身近に感じています。

―飛鳥Ⅱは大きいだけでなく、きれいな船ですね。
今崎 飛鳥Ⅱは元々、「クリスタル・ハーモニー」といい、日本郵船がアメリカのラグジュアリーマーケットに投入した船です。三菱重工業長崎造船所が50年ぶりに建造した大型船ですので、非常に力を入れて造られ、ハード面でも高いレベルの大型船です。今の客船はデザインよりも機能重視で、スペースをとることを優先していますので、ずんぐりした船が多いのですが、飛鳥Ⅱはスウェーデンのデザイナーによるもので、外観も非常に美しい船です。既に20歳で、若干熟女にはなりましたが…(笑)。

―初代の飛鳥が就航して今年で20年ということですが、記念イベントなどは実施されたのですか。
今崎 飛鳥が就航した10月28日に向け、昨年11月から20周年の記念イベントを行ってきました。初代・飛鳥は今、「アマデア」と改名されドイツで活躍しています。飛鳥Ⅱは大き過ぎて運河を通れません。そこで、2011年世界一周クルーズでは飛鳥Ⅱのお客さまに運河手前で飛鳥に移っていただき、キール運河を航行しました。昔の飛鳥を体験していただき、またリピーターのお客さまには懐かしんでいただけたようです。
 また、ストックホルムでは市庁舎のノーベル賞受賞者の記念晩餐会が開かれる「青の間」を貸し切り、正装でノーベルディナーを召し上がっていただきました。10月26日から31日の飛鳥Ⅱのアニバーサリークルーズでは、三菱重工さんの長崎造船所での工場見学や様々なエンターテイメントで楽しんでいただき、韓国の釜山に寄って帰ってきました。クリスタル・ハーモニーから飛鳥Ⅱに改装した当時、横浜船籍にしたというご縁もあり、林文子横浜市長からのご挨拶もいただきました。

―中突堤に5万トンクラスの大型船が停泊できるようになりましたが、使い勝手はいかがですか。
今崎 入港して来た時に、岸壁に人がたくさん居るか居ないかでは、かなり印象が違います。そういう意味では、中突堤は神戸港の顔のような場所ですからとても良いロケーションです。お客さまが下船して町に出るまでのアクセスが良いのも魅力ですね。

―来年のNHK大河ドラマは「平清盛」です。それに因んで、是非クルーズをしてほしいのですが。
矢田 いよいよ1月から放映が始まりますね。神戸市でも「KOBE de 清盛2012」をキャッチフレーズにして、清盛ゆかりの地を歩いていただくコースを考えています。清盛は瀬戸内海の港を修復して停泊できるようにして日宋貿易に力を入れていました。瀬戸内海の景色を楽しみながら、往時の清盛の足跡をたどっていただけたらいいなと思っていますので、ぜひ清盛に因んだクルーズをやっていただければうれしいですね。
今崎 当社は日本郵船が母体ですので、どちらかといえば関東中心。残念ながら西日本での集客力はもう少しというのは事実ですが、日本周辺で航海していて景色の美しいところといえば、やはり瀬戸内海です。できるだけ力を入れていきたいと思っています。
 ところが、飛鳥Ⅱは長さ240メートル以上ある大きな船ですので、瀬戸内海は昼間しか航行できません。夜中に走って、朝、港に入り、お客さまは昼間の観光に出かけるという通常のクルーズのパターンが取りにくいというオペレーション上の問題があります。ですが、何とか清盛に因んで西日本のクルーズは企画したいとは考えています。船上で清盛についてのレクチャーを実施しながら、ゆかりの地と組み合わせるなど検討中です。

―神戸生まれの今崎社長。是非、力をお貸しください。
今崎 個人的には、神戸には良いところがたくさんありますから、関東の人にも奈良や京都だけでなく神戸の良さを見つけていただきたいと思っています。

2012年の世界一周クルーズは新たな趣で!

―さて世界一周クルーズですが、来年の予定は?
今崎 4月2日に横浜を出港して、3日に神戸に寄港します。その後、南下してインドのコーチン港などに寄り、南アフリカを目指します。ここのところ、アデン湾で海賊の問題があり、安全運航のため、この海域を避け、2011年はアフリカまで南下してからヨーロッパに向かうコースに変更しました。
 来年は思い切って、最初から南アフリカ回りで南米に向かい、パナマ運河を抜けてアラスカまで行く予定で、今までとは少し趣の違うクルーズです。足を延ばせば、イグアスの滝やマチュピチュなど、一度は行ってみたい観光地にもオプショナルツアーで行っていただけます。船旅のメリットはパッキング、アンパッキングの繰り返しの必要がないこと。特に年配の方には最適だと思います。

―神戸としては歓迎のイベントなど考えていますか。
矢田 神戸から世界一周のクルーズに出港するのですから、もちろんホスピタリティーを発揮してお見送りしたいと思います。

―クルーズ船はいろいろありますが、飛鳥Ⅱならではの魅力は?
今崎 飛鳥Ⅱは生い立ちからして、ハード的にも、デザイン面でも素晴らしい船です。2006年の大改装では、日本人が寛ぐには欠かせない、大きな展望風呂を増設しました。当然、ダンスフロア、プール、フィットネスセンター、ビューティーサロンなどパブリックスペースも充実し、キャビンもゆったりしています。ラスベガスの制作会社と提携したショーをはじめ、エンターテインメントも世界一流のものです。
 お食事も自信を持ってお勧めできるものを提供させていただいています。クルー1人あたりのお客さまが1・8名。ゆったりとして、揺れも少なく、クルーズの目的の一つである船自体を楽しんでいただけると思います。

―今月号の特集は未来への視点です。それぞれの、将来への展望は?
矢田 震災から17年が過ぎ、神戸は街そのものの様相が変わってきました。神戸らしさが強調されて、新しい発見をしていただけると思います。クルーズで寄港するだけでなく、神戸で数日間を過ごしても満足いただけるように考えていかなくてはいけません。もっと大きな船が入ってくる時代になれば、ポートアイランドのしおさい公園なども有効に使う方法を考える必要があるでしょうね。

―〝飛鳥Ⅱの未来〟は?
今崎 今年は3月に東日本大震災があり、世界一周も海賊の問題で航路変更を余儀なくされ、集客には苦戦した年でした。来年以降は回復してくるものと考えています。
 日本のクルーズ人口は20年前からほとんど増えていません。何が原因かといえば、まだまだ客船の魅力を一般に向けて伝えきれていないことです。飛鳥Ⅱは知っていても、世界一周に行く船で、敷居が高いと思われているようです。ワンナイトクルーズや短期間のクルーズもあります。一度経験していただければ、リピート率は高いのでもっと宣伝の必要があるのでしょうね。番組を制作してBSで放映したり、新聞やネットで広告するなど間口を広げる努力をしています。
 何年後かに、「飛鳥Ⅲも是非!」と思っています。もう少し気軽に乗ってもらえるようなアピールの方法を、他の船会社さんとも協力して進めていきたいと考えています。

―2011年は神戸に18回寄港していただいたそうですが、2012年は?
今崎 まだ予定が出ていませんが、極力、増やせるように努力していきます。

―大歓迎しますので、よろしくお願いします。
インタビュー 本誌・森岡一孝

中突堤のターミナルに入港する日本籍で最大のクルーズ船「飛鳥Ⅱ」

20周年アニバーサリークルーズで歓迎を受ける飛鳥Ⅱ

「飛鳥II」の玄関でもある二層吹き抜けのアスカプラザ

11月7日、神戸市役所にて

今崎 慎司(いまさき しんじ)

郵船クルーズ株式会社 代表取締役社長
1949年生まれ。1973年早稲田大学法学部卒業、同年日本郵船株式会入社。ベルギー、ノルウェー、米国、マレーシア、イギリス駐在等を務める。2002年日本郵船名古屋支店長。2005年クリスタルクルーズ株式会社 会長。2008年郵船クルーズ株式会社 代表取締役社長。

矢田 立郎(やだ たつお)

神戸市長

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