10月号
ラグビーワールドカップ2019日本大会開幕!
ラグビーは経営と似ている 心に残る試合を期待したい!
神戸でも試合がおこなわれるラグビーワールドカップ日本大会、RWC2019がいよいよ開幕!日本代表47キャップ、神戸製鋼でも選手・監督として活躍し、今回大会のアンバサダーとして広報活動に尽力してきた増保輝則さんと、RWCのワールドワイドスポンサーでもあるランドローバーの販売店を展開する㈱神戸マツダの橋本覚社長に語り合っていただいた。
関西に行くのが怖かった?
─橋本社長はラグビーに親しんだことはありますか。
橋本 小学生の頃に体育の授業で教わりました。母親にヘッドキャップをつくってもらって。友達には元ラグビー選手が多く、みなナイスガイです。
増保 関西はラグビースクールも競技人口も多いんですよ。
橋本 彼らに増保さんと対談すると伝えたら「ええっ!」と驚かれました。ラグビー経験者からしたら凄い人ですからね!早稲田で1年生からレギュラー、19歳で日本代表にも選ばれ、神戸製鋼でも活躍されました。
増保 神戸製鋼入社は199
4年ですが、その頃は関東の人間が関西に行くことに抵抗感があったんです(笑)。それでも大学の先輩や平尾さんが熱心に声をかけてくださったので。
橋本 神戸はいかがですか?
増保 来てみると本当に良い街です。田舎過ぎず都会過ぎず、外国人選手にも人気のある街なんですよ。
経営はラグビーの如し
─前回のRWCで、日本代表は南アフリカ代表から大金星を挙げましたね。
橋本 現場の判断でエディ・ジョーンズヘッドコーチの指示とは違う戦略をとったそうですね。弊社に置き換えると、私が「こうしろ!」と言ったのに約800名の社員がそうしないというのと同じです。後でエディ・ジョーンズが激怒したというのは本当ですか?
増保 激怒しましたね。エディは引き分けを狙いましたが、キャプテンのリーチ・マイケル以下がみな「勝てる」という雰囲気を感じたのでしょう。ラグビーって試合が始まってしまうと、もっと言うと試合の前日からノーサイドまでの時間は、キャプテンの時間なんです。あのときはエディじゃなく、リーチが一番偉いんです。
橋本 我々には拠点が41あり、それぞれに長がいるのですが、彼らが現場を知っていますので基本任せています。そういう意味では経営と似ていますよね。
増保 現場の肌感覚を信用することも必要じゃないかと思います。グランドに立った人間しかわからないことは多いものです。
橋本 現場が自ら考えて、自ら動く。経営の最終的なゴールにそれを目指していますので、ラグビーに通じることは多いかもしれませんね。
─コーチにより指導法も違うものなのでしょうか。
増保 前回のエディと今回のジェイミー・ジョセフでは全く違います。
橋本 エディはスパルタで、世界一ハードな練習をしていたと聞きますが。
増保 それは間違いないです。世界における日本のレベルがそれくらいやらないといけなかったんですね。一方のジェイミーはチームにリーダーを設け、リーダーとコーチで密に話をして、リーダーが各選手に伝えるという形なんです。これはラグビーの本場、ニュージーランドで最もベーシックなスタイルで、神戸製鋼も同様の形をとっています。会社と同じですよね。
橋本 エディのスパルタがあって、ジェイミーの自由があって、非常にいい流れですよね。フィジカルを鍛えて、専門性を入れて、最終的には自分で考えて自分で動く。しかしチームワークは大事。これは経営にも当てはまることです。亡くなられた平尾誠二さんも自主性を重んじたそうですが。
増保 最たるものですね。平尾さんの好きな言葉は「自由自在」で、自分たちで楽しみながらしっかりやるという考えでした。でも、彼が代表監督だった時はものすごいスパルタでしたけど(笑)。
ランドローバーはラガーマン
─マツダの車のイメージはいかがですか。
増保 実は以前、アテンザに乗っていました。非常に良い車でしたね。スカイアクティブが良いんですよ。六甲山を走ると他メーカーとの違いがよくわかります。
─ランドローバーは大会の公式スポンサーですね。
橋本 20年以上にわたってRWCのワールドワイドスポンサーになっています。最近は車椅子RWCのスポンサーにもなり、両方のスポンサーになっているのはランドローバーだけです。英国発祥で、ラガーマンのような力強さとしなやかさを兼ね備えていますので、イメージはピッタリですね、タックルはしませんが(笑)。
増保 レンジローバーは憧れです。いつか乗ってみたいですね。以前、RWCの優勝トロフィー、ウェブ・エリス・カップが来日したんですが、その時にランドローバーを5~6台連ねて、浅草の雷門とかで写真撮って、SNSにアップする企画があったんです。
日本発祥の「ノーサイド」
─ラグビーは試合の後に対戦相手と歓談するそうですが。
増保 僕が現役の時代はそうでした。食事して酒盛りやネクタイの交換をして、仲良くなるんですよ。それがアフターマッチファンクションというラグビーの伝統なんですけれど、いまはコンディションの問題があるのでお酒はほぼ飲まないですし、試合後すぐ解散になってきて、そこは少し寂しいですね。
橋本 「ノーサイド」というのは、そういうことを含めてなんですね。
増保 実は「ノーサイド」って日本で生まれた言葉で、海外ではそう言わないんですが、試合終了で敵味方がなくなるというのはラグビーの文化です。ちなみに「ワンフォーオール・オールフォーワン」も日本から発信された言葉なんです。
橋本 そうなんですね!
増保 いずれも日本ではおなじみですけれど、海外ではそんなに知られていなかったんです。でも今回大会で全面に出して、世界も良い言葉だと評価してくれて、ワールドワイドに浸透していきました。
「ガチな試合」の感動を
神戸で
─RWC2019は社会にも大きな影響を与えそうですね。
増保 12の開催都市だけでなく、合宿地を含め多くの街が関わっていて、地方では東京オリンピックよりも地域活性効果を期待されていると感じます。神戸では日本と同じプールのスコットランド対サモア、アイルランド対ロシアのほか、強豪、南アフリカの試合も予定され、非常にエキサイティングです!とにかくこんな機会は一生に一度あるかないかです。
橋本 ラグビーファンはビールをよく飲むそうですが。
増保 試合中だけでなく、試合後も街で夜遅くまで飲むんですよね。海外では試合のあった夜は遅くまで店を開けるんですよ。
橋本 そのあたりが神戸は準備不足かもしれません。ラグビーファンはサッカーのフーリガンと違い、暴れないそうですね。
増保 それは長年の観戦スタイルの違いですね。野球の1塁側3塁側といった区分けがなく、スタンドではお互いのファンが混じって観戦するんですよ。
─日本代表はいかがですか。
増保 私も出場していましたが、1995年大会でニュージーランド代表に145点取られて大敗し、そのどん底から四半世紀かかってここまで来ました。ラグビーがメジャーではないアジアでRWCを開催するのはリスクが高いと思われている中で、失敗に終わるとアジアがラグビー不毛の地になってしまうかもしれません。そういった意味でも、ホスト国の代表である日本代表に意地を見せてほしいですね。第3戦のサモア戦が鍵になると思います。そして第4戦、前回大会で負けているスコットランドにリベンジを果たし、まずは予選突破ですね。
橋本 心に残るような試合を期待したいですね!
橋本 覚(はしもと さとる)
㈱神戸マツダ 代表取締役社長
1961年生まれ。1985年一橋大学法学部卒業、同年住友銀行(現三井住友銀行)入行。ボストン大学にて国際銀行法学修士取得・ニューヨーク勤務等を経て1996年退職。2000年㈱神戸マツダ代表取締役社長就任
増保 輝則(ますほ てるのり)
1972年生まれ。早稲田大学を経て、1994年に神戸製鋼に入社し7連覇目を経験。
1999年からはキャプテンを務め、1999年度、2000年度に全国社会人大会連覇と日本選手権連覇を成し遂げた。日本代表には、当時史上最年少の19歳3カ月で選出され、第2回(1991)、第3回(1995)、第4回(1999)ラグビー・ワールドカップに出場している。2019年ラグビーW杯初代アンバサダーに就任