10月号
くらしの中のアート|alanの世界観 〜観る人に楽しくなってほしい〜
昼間は専門商社の営業マン、夜と週末はartist alan。
その絵はカラフルだけど、無駄なものが削ぎ落とされてシンプル。
観ていると〝alanの世界観〟が心に直接伝わってきて、不思議と笑顔になってくる。
―数年前から本格的に絵を描き始めたそうですね。
取引先のお世話になった方が転勤されると聞き、バラの絵と崩した文字でメッセージを描いたカードお渡ししたらすごく喜んでいただきました。子どものころはただ自分が楽しいから絵を描いていたので、「僕が描いたものでこんなに喜んでもらえるんだ!」と初めて気づき、本格的に絵を描こうという気持ちになりました。
―小さいころから絵が好きだったのですね。
描くことはもちろん好きでしたし、祖父が絵画のコレクターでしたので本物のいい絵がごく身近にありました。美術館へもよく連れて行ってくれていました。そこから得たものが、今の僕の絵のあちらこちらに反映されています。
―すごく斬新で、古さは感じませんが…。
新しいものは古いものとの組み合わせで生まれるもの。ヒントをもらって、そこから自分なりの新しいものが出来上がってくるのだと思います。
―色使いが独特ですね。
色のバリエーションが他の人よりもたくさんあると、子どものころから気づいていました。「あか」とか「グレー」とか言うけれど、僕には微妙に違ういろんな「あか」や「グレー」があり、その色たちの配置やバランスがすごく気になって仕方がないんです。
―絵の中の色が意味するのは。
色は全て感情を表しています。観る人に楽しくなってほしいというのが原点ですから、ほとんどがポジティブな感情です。ハートの瞳には愛が満ちています。が、ちょっと不安な気持ちがのぞいている色もあります。きっと感じてもらえると思います。
―たくさんの色を使って表現する絵ですね。
実は僕が目指すのは「削ぎ落とす」。「こんなにたくさんの色を使って?!」と思うでしょう?でも必要のないところには、何もないです。一色で塗るだけだったり、キャンバスの生地そのままだったり。1枚の絵の中に描いているものは全てそこに無くてはならないものだから、それ以上のものがあっても駄目なんです。僕にとって配置はすごく大切なんです。
―日頃から、色や物の配置が気になって疲れるのでは。
自然の中にあるものがバリエーション豊富な色で目に入ってくるし、街の中にある物も「この横にこれを置くのはやめてほしいなあ」などと気になって…疲れますよ(笑)。
―感覚的に刺激を受ける街は。
ニューヨークです。「あの街で僕の絵に対してどんな反応があるだろうか?」。今、一番知りたいことです。2年後にNYでアートフェアに出展することを目指しています。
―仕事をして、精力的に絵も描き、しんどくなりませんか。
経済的基盤があってこそ自分のやりたいことができます。仕事が終わって、アトリエで絵を描く時間を持ってから自宅へ帰り、きちんと線引きして家族との時間を大切にしています。もともと人が好きで、人を描くことが好きですから、仕事でいろいろな所でたくさんの人に会って観察して楽しんだり、空き時間にカフェで描いていたら美しい女性に「いい絵ですね」と声をかけられたり、「お店に飾りたいから描いてください」とオーダーをもらったり、嬉しいことがたくさん起きます。だから収入を得るためにしんどい目をしていると思うことはないですね。
―今後もずっと自分の世界観で絵を描き続ける?
世の中には、僕の絵が好きな人と嫌いな人が半々だと思っています。子どもの反応を見るとよく分かります。本能で絵を楽しみ、感想を遠慮なく口にしますからね。「わー、きれい!」と言う子がいて、中には「こんな感じで描いて」とオーダー?してくる子もいる一方で、「きもちわる」とも言われます(笑)。みんなに好きになってもらおうと迎合し、自分の描きたいものを妥協しようとは思いませんが、僕の絵を知ってもらうためのマーケティングは必要です。SNSも使って、リサーチやプロモーションをしっかりやっています。
―営業マンとしてのノウハウが役立ちますね。NYで活躍するアーティストalanさんにお会いできる日を楽しみにしています!
alan
1979年西宮市生まれ阪神間育ち。甲南大学卒業。学生時代、家庭教師が美術史を専門としていた為、通常の勉強に加え美術史、現代思想を叩き込まれる。社会人となり絵を描くことに距離を置いていたが4年前にある事がきっかけで描く事に。2016年に初個展をして以来、精力的に新作を発表し続けている。
9月6日、「ARTstream2019」
(大丸心斎橋劇場&イベントホール)にて