2013年
12月号
10月29日の記者会見に出席した出演者と原作者・玉岡かおるさん、演出家の髙平哲郎さん

玉岡かおる原作 『お家(いえ)さん』舞台化

カテゴリ:文化・芸術・音楽

兵庫県立ピッコロ劇団 創立20周年記念

主演は竹下景子さん 2014年2月公演

玉岡かおるさんの織田作之助賞受賞作『お家さん』(新潮文庫刊)が舞台化される。
『お家さん』は、かつて神戸で栄えた、日本一の商社「鈴木商店」の女主人・鈴木よねを描いた一代記。神戸製鋼所、帝人、サッポロビール、昭和シェル石油、富士フイルムなど、現代日本を代表する企業の数々が、この鈴木商店の流れを組んでいる。大正から昭和のはじめ、日本の巨大商社としてその名を世界に知らしめた鈴木商店のトップに君臨し、日本流商いの王道を守り、男たちを育て支え続けてきた、鈴木よね(お家さん)、そして彼女を取り巻く人々を描いている。
主人公・よねには竹下景子さんを迎え、創立20周年の兵庫県立ピッコロ劇団が、2014年2月21日~23日に公演。

「早くも多くの方に激励されている」―竹下景子さん

原作者である玉岡かおるさんは、制作発表会で、「自分にとって作品は我が子のようなもの。今回は里子に出すようなものでしたが、脚本・演出の髙平先生が本当に原作を大事にしてくださり、準備原稿を見ましたら、文字の世界が歩き出しているような気がしました。明日にでも見たい! とわくわくしています」と、期待を寄せる。また、主演の竹下さんとは初対面だが「私は経済小説を書くつもりはなく、一人の女性を描こうと思い『お家さん』を書いた。その女性像にぴったりのイメージの竹下景子さんが演じてくださることを嬉しく思います」と話した。
阪神・淡路大震災のメモリアルコンサートで、1999年から毎年朗読を続けている、神戸にゆかりのある女優・竹下景子さん。「神戸は、皆さんの人柄の温かさや、外から来た人へのおおらかさが魅力的な町」と、神戸の印象を話した。今回の役を演じるにあたっては、「原作を読ませていただき、何という大河ドラマだと感動しました」。演出家の髙平さんとはテレビ番組やコンサートで共演するなど、つきあいは35年にのぼるという。「髙平さんの台本を読み、さすがだなと思いました。こんなドラマが、舞台でもできるのだ、という、見応えのあるお芝居になると思います。早くもいろいろな方に、お家さんを演じるんですね、とお声がけいただき、逆に激励されています」と抱負を語った。

ジャズが流れる歴史舞台?

演出家の髙平哲郎さんは、編集者などを経てテレビ番組の構成や、ミュージカルの翻訳演出などを手がけてきた大ベテラン。お芝居は翻訳劇やオリジナル作品ばかりで、日本の原作ものを手がけるのは初めてだという。「髙平さんはいつも思ってもみないようなことを提案してくるので、今回も一体どんな演出をされるのか予想もつかない」と竹下さん。
髙平さんはドラマの時代背景を調べていくうちに、明治35年に「セントルイス・ブルース」(ジャズのスタンダードナンバー)が誕生していることから、「この時代の神戸にはジャズが流れていてもおかしくないなと思った。この時代の日本の童謡と、ジャズも取り入れた舞台音楽を、上柴はじめさんに作ってもらっている」と、制作の裏側を披露。振り付けには宝塚歌劇団出身の室町あかねさんを迎え、ミュージカルの要素も取り入れた、ダイナミックなステージになりそうだ。

「海に向かう時代の神戸を描きたかった」- 原作・玉岡かおるさん

10月29日に行われた制作発表会では、集まった記者からさまざまな質問が。
どんな「よね」像を演じたいかという質問に、竹下さんは「会社がどんなに大きくなっても、商店はひとつの大きな家族であると、女として家族を守る、足を地に付けた生き方をされた女性を演じたい」と話した。舞台では、夫・岩治郎の死後、事業を継いだ42歳から晩年のよねを演じる。よねが頼りにした名番頭・金子直吉にピッコロ劇団の吉村祐樹、よねを支えた女中頭・イシに平井久美子。他、石本伎市朗などオーディションで選ばれた関西の俳優陣と、多数のエキストラが出演する。
「脚本を書くにあたり、“玉岡ワールド”をどう表現するか苦労はあったか」という髙平さんへの質問には、「まず神戸弁が大変難しかった」とのこと。髙平さんは台本を書く前に、登場人物のセリフを全部抜き書きしたのだという。そして口調を自分のものにしてから、その人間にちがう言葉をしゃべらせてみるなどして近い言葉を捜したとか。「良い原作だったので、余計なことをしてはいけないと思った。あとは役者さんを生かすことを考えた」と、髙平さん。
そして玉岡さんは、「『お家さん』を執筆中は、発見だらけでした!」という。「当事の神戸地図を見ると、鉄道が神戸駅で終わっていて、その先は海だった。神戸は海を向いていた地。神戸は世界に向けた玄関だった。神戸が輝いていた時代を描きたいという気持ちは、書いている間ずっと心にありました」と。

幻の商社といわれた「鈴木商店」。短期間で大きく成長し、時代の流れの中で困難におちいる巨大企業の中での人々のドラマ。そして彼らが最後まで捨てなかった、商売人としての哲学と希望とは何か、心震える波乱の一代記が、どうステージで展開するのか。神戸っ子には見逃せない舞台だ。

10月29日の記者会見に出席した出演者と原作者・玉岡かおるさん、演出家の髙平哲郎さん


なごやかな記者会見会場。舞台稽古は来年1月からスタートする


「肝のすわった女性」鈴木よねを演じる竹下景子さん


ご自身も楽しみにしているという玉岡かおるさん


兵庫県立ピッコロ劇団第48回公演 ピッコロシアタープロデュース
「お家さん」

【日程】2014年2月21日(金)~23日(日) 6回公演
【会場】兵庫県立芸術文化センター(阪急「西宮北口」)
【料金】一般4,500円、大学生・専門学校生3,000円、高校生以下2,500円 (全席指定)
   ※一般発売 12月15日(日)~
http://hyogo-arts.or.jp/piccolo

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