2013年
12月号
第18回弁護士業務改革シンポジウムで、登壇する鈴木会長

弁護士は社会生活の医師

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体調が悪いときは医師に相談するが、トラブルが起きたときは? 「まず弁護士に相談しよう!と思って下さい」と話す鈴木会長。社会に法のルールを浸透させるために努力する弁護士会についてお聞きした。

兵庫県弁護士会
会長 鈴木 尉久さん

時代に即した業務を常に模索

―11月8日に開催された弁護士業務改革シンポジウムとは。
鈴木 私たち弁護士が市民の皆さまに適切迅速な法的サービスを提供できるよう、業務を時代に即して見直していくため2年に1回開催されます。18回目にして、神戸で初の開催でしたが、全国から弁護士約1200名、一般市民約700名の参加をいただき大盛況で終えることができました。
―7つの分科会も盛況だったそうですが、特に今の時代を反映しているものはありましたか。
鈴木 「ITの活用」は、今までも取り上げてきていましたが、今回は機密漏えいに重点を置いています。「民事信託」は高齢化社会に伴って注目されるようになった問題です。「スポーツ基本法」では体罰など、法を無視した行いが問題になっています。競技外でもルールに則して欲しいというものです。
―過去のシンポジウムの成果が業務に生かされた例は。
鈴木 一つは広告の解禁です。弁護士は自由に広告ができなかったのですが、ルールに則した構成であれば可能になりました。テレビなどでもご覧になることがあると思います。ほかにも、中小企業支援センターの立ち上げや地方公共団体との連携強化などがあります。
―地方公共団体との連携とは。
鈴木 消費者センターや社会福祉協議会など個々の団体とは今までも連携を取ってきました。今回は、地方公共団体が持っている税金以外の債権回収のお手伝いです。単に支払可能な住民からの回収だけでなく、貧困の問題がある場合は行政が手を差し伸べなければいけませんから、その見極めをお手伝いできるのではないかというものです。

法について、市民に広く知ってもらいたい

―兵庫県弁護士会についてご紹介下さい。
鈴木 県内に事務所を置く弁護士765名が会員登録し、その中でほぼ20%の152名が女性弁護士です。ここ数年、毎年2千人規模で司法試験に合格し、新たに弁護士が誕生していますので、若い世代が増えてきています。
―民事と刑事とどちらの業務が多いのですか。
鈴木 ほとんどの弁護士が民事事件を中心として業務を行っています。刑事事件の多くは国が弁護人を選任します。報酬は低く、弁護士の使命として行っている業務です。そこで兵庫県弁護士会では、国選事件での弁護の質を保ち、国選弁護士の人数を確保することを目的として「弁護士法人 ひょうごパブリック法律事務所」を設置運営しています。
―県弁護士会にはいくつもの委員会がありますが全員がどこかに所属するのですか。
鈴木 原則、会員は年度初めに2つか3つの委員会に所属していただきます。月1回程度集まり、議論をしたり、その他色々な作業をしています。
―委員会の主な活動の一部をご紹介ください。
鈴木 一つは取り調べ可視化実現本部です。日本では取り調べは密室で行われ、弁護士が立ち会うこともできません。可視化によって違法、不当な取り調べを防止することを目的としています。また、取り調べの可視化については出前講座として無料で弁護士派遣を行っていますが、現在実施しているのは兵庫県だけです。これを全国に広めようとしています。市民の皆さまにもその必要性をご理解いただくため、著名な冤罪事件被害者の方などをお招きしてシンポジウムも開催しています。
法教育委員会では、小中学生を中心に一般市民を対象として、法や司法制度の基礎となっている価値を理解して、自由で公正な社会を支える法的な考え方を身に付けていただくことに取り組んでいます。法教育において必要とあれば無料で出向き、毎年20以上の学校で出前講座を実施しています。その他、虐待やいじめなどの問題に取り組む子どもの権利委員会、女性の権利を促進しようという両性の平等に関する委員会等々が活動しています。

無料相談で、弁護士と話すことから始めて下さい

―弁護士さんへの相談は敷居が高いというイメージがありますが、気軽に利用するには。
鈴木 神戸、尼崎、西播磨をはじめ県内11カ所に相談所を設け、無料相談を実施しています。多重債務や交通事故、消費者被害などでお困りの場合、また高齢者の方からの電話相談、自殺対策のための相談、中小企業からの相談、遺言や相続の相談など、色々受け付けています。ちょっと広報不足でしょうか、弁護士は怖い人と思われているのでしょうか(笑)。決して敷居が高いということはありませんので、相談所や電話でぜひ弁護士と話してみてください。弁護士と依頼者は二人三脚で長い付き合いになりますから、まずお互いにウマが合うかを判断することをお勧めします。
―依頼した場合、費用が気になるところですが…。
鈴木 依頼をいただく場合は、まず手続きを進めるにあたり必要な費用として着手金をいただきます。これは、裁判の成功、不成功には関係なくお支払いただくものです。裁判の結果、成功の程度に応じてお支払いただくのが報酬金です。ほかにもタイムチャージという時給型の報酬システムもありますが、日本ではまだ採用している弁護士はあまりいないようです。

仕事に一番大事なことは、社会の役に立つという思い

―多岐にわたる知識や人脈が必要な仕事ですが、他業種との交流はあるのですか。
鈴木 兵庫県自由業団体連絡協議会で会合を設けています。公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士など、10のいわゆる「士業」と呼ばれる団体の集まりです。
―鈴木会長が弁護士を目指したきっかけは。
鈴木 子どものころテレビで「帽子とひまわり」という探偵と弁護士が社会にもみくちゃにされながら問題に立ち向かっていくというドラマを見て、実は裁判官を目指そうと思いました。正直、私も弁護士さんはちょっと怖そうで、イメージがどうも…(笑)。ところが、司法修習生のとき弁護士の先輩方にお会いし、それぞれが色々なスタイルで仕事をされていて「いいなあ、私も弁護士になろう」と思うようになりました。
―弁護士というのはどんな仕事だと思われますか。
鈴木 組織の一員ではなく独立した立場ですから、努力をすればその分、必ず自分に返ってきます。広範な分野を扱いますが、その中の一つの分野で一番になろうと志せば、なれる仕事ですね。
―やりがいを感じるときは。
鈴木 最もやりがいを感じるのは、自分の仕事が社会正義に適ったことであり、人権を擁護していると思えるときです。人間が何のために働くか?報酬のためにはもちろんですが、長続きするには自分の仕事が社会の役に立っているという思いが一番大事だと思います。
―弁護士を目指す若い人たちにメッセージをお願いします。
鈴木 行政や企業に入っていって社会に法律のルールを浸透させようという気構えで仕事に取り組んで欲しいと思います。日本は貿易立国ですから、外国で日本人の弁護士が活躍することが国益にもつながります。どんどん海外へ出て行こという気概も持って欲しいですね。
―最後に、兵庫県弁護士会の今後について会長としての思いは。
鈴木 トラブルが起きたとき、力の強いものが勝つという社会はおかしいと思います。きちんと法に従って解決されなくてはいけません。その第一歩が弁護士への相談です。困ったときにはまず「弁護士に相談しよう」と思っていただけるよう、法律相談を窓口として市民の皆さまに開かれた存在でありたいと願っています。

第18回弁護士業務改革シンポジウムで、登壇する鈴木会長

鈴木 尉久(すずき やすひさ)

兵庫県弁護士会2013年度会長
1963年、神戸市生まれ。1986年、京都大学法学部卒業。同年、神戸市職員採用。1987年、司法試験第二次試験に合格。1990年、弁護士登録により神戸弁護士会入会、間瀬俊道法律事務所入所。2005年より、間瀬・法律事務所を共同経営。消費者保護の問題に取り組み、2002年〜2004年、及び、2010年に消費者保護委員会の委員長を務める。

※2013年12月号掲載時の情報です。

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