9月号
神戸のカクシボタン 第三十三回 兵庫・長田で愛されるご当地グルメ「神戸たこ焼き」
写真/文 岡 力
深めの容器にたこ焼きを入れて、お出汁を注ぐ。兵庫区、長田区で古くから愛されている「神戸たこ焼き」(別名「だしたこ」「スープたこ焼き」)がご当地グルメとして注目を集めている。命名者でありブログで魅力を発信する佃和喜さんによると発祥は不明だが昭和30年頃にはあったという。現在、周辺では数十軒にも及ぶお店が提供しており「たこ焼き」と言えばお出汁で食べるスタイルが当たり前とされている。
早速、佃さんおススメのお店へ足を運ぶことにした。昭和30年創業の「淡路屋」は、地域に愛される飲食店である。店名は、創業者の出身地である淡路島に由来。開業時は、おかずを陳列するめし屋だった。近隣には、三菱重工があり昼夜を問わず従業員が訪れにぎわった。震災の前年より新規ターゲットを見据えてメニューの考案にとりかかる。結果、女性に人気のあったクレープを販売するも子供しか来ず当てが外れる。すぐさま方向を転換し駄菓子の販売を開始。その際、同時に始めたのが昔から馴染みのある「神戸たこ焼き」だった。店主の伊藤由紀さんにお話を伺った。「神戸たこ焼きは、大阪と明石の間みたいな感じですかね。別に違和感なく皆さん注文されます。ポットにお出汁を入れておいて自分の加減で注げるお店もありますよ」。早速、食べてみることにした。驚く事にこれまで口にしてきたそれとは違う味わい・・・あっさりしていてヤミツキになる美味しさである。
そしてコナモン料理に欠かせないのが口直しに最適な「アップル」とよばれる透明瓶に入った黄色いジュース。多くのお店が仕入れており神戸の下町を代表するご当地飲料である。これまで絶えることなく一部の地域で親しまれてきた郷土の味。どんぶりを両手で持ち上げ慈しみながらお出汁をすする。
■淡路屋
神戸市兵庫区笠松通り7丁目3-6
営業時間 11時30分~18時30分
定休日 日曜
■岡力(おか りき)コラムニスト
ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「のぞき見 雑記帳」(大阪日日新聞)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)