2016年
9月号
図②「福原殿舎怪異之図」画・葛飾北為

兵庫ゆかりの伝説浮世絵 第三十一回

カテゴリ:文化・芸術・音楽, 絵画

中右 瑛

福原清盛屋敷で怪異現われる

 清盛が福原に都を移して以来、平穏な日はなく、さまざまな妄想に憑りつかれていた。
 ある冬の日、福原の屋敷で一族郎党が雪見の真っ最中、庭の樹木が大小無数のどくろとなって、清盛に襲いかかった。どくろの中にひときわ大きなどくろが現われ、その上には、「平治の乱」で討たれた源義平の怨霊が清盛を威喝する。清盛がその怨霊を睨み返すと、怨霊は恐れをなして消え伏せてしまった。
 『平家物語・物怪之沙汰』では、清盛に討たれた源氏武将たちの怨霊が多数のどくろとなって清盛を襲ったと伝う。

 図①は、最後の浮世絵師と言われた月岡芳年の作で、寝所の清盛の背後に巨大などくろが出現するさまを描いた。襖の引手がちょうど目の部分となっている。トリックアートの手法で、芳年は奇抜な発想で見る者に迫る。

 図②は、葛飾北斎の弟子、北為がその様子を絵画化した。座敷の清盛はじめ郎党の驚きざわめく姿を的確に表現している。図中の詞書には、「治承四年六月三日、都を摂州福原へ遷すその後、福原の京にて種々の怪異あり。ある時、庭園内を見たまうに、大小多数のどくろ現われ、山の如くとなり、その中の最も大きなどくろの上に一人の武士が現われ、入道殿を喝と睨みけり、されど清盛少しも騒がず睨み返しければ、其の勢ひに畏れ、忽ち消え伏せたり(略)」
とある。

図①「新形三十六怪撰 清盛福原に数百の人頭を見る」画・月岡芳年

図①「新形三十六怪撰 清盛福原に数百の人頭を見る」画・月岡芳年

図②「福原殿舎怪異之図」画・葛飾北為

図②「福原殿舎怪異之図」画・葛飾北為

■中右瑛(なかう・えい)

抽象画家。浮世絵・夢二エッセイスト。1934年生まれ、神戸市在住。行動美術展において奨励賞、新人賞、会友賞、行動美術賞受賞。浮世絵内山賞、半どん現代美術賞、兵庫県文化賞、神戸市文化賞、地域文化功労者文部科学大臣表彰など受賞。現在、行動美術協会会員、国際浮世絵学会常任理事。著書多数。

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