10月号
老舗と新店が共存した神戸らしい神戸元町商店街へ-
インタビュー 片山 泰造 さん <神戸元町商店街連合会会長>
安心・安全な商店街を! 連合会の取り組み
神戸で140年の歴史を持つ元町商店街。5つの商店街振興組合をひとつにまとめる元町商店街連合会は、約300店舗が加盟している。三代目会長を務める片山泰造さんは、創業97年のマルヤ靴店を営み、この商店街で生まれ育ち、その歴史を見つめてきた。
「私の子どもの頃は元町5丁目、6丁目辺りから新開地にかけてが、神戸一の繁華街だったのです。新開地が華やかな時代でしたからね。当店も97年を迎えますが、当時は元町6丁目だけでも靴屋が6軒あって、履きだおれの街・神戸の中心として栄えたものです」
阪神大震災で多数のお店が入れ替わっているが、古き良き時代の元町の街並が変わらないように、商店街では「まちなみ委員会」を設けて、店舗の改装や新店の出店などの際にはさまざまな角度から審議を行う。元町の個性を守るために、派手な装飾や大きな看板などを規制している。
「東京や地方に行っても、元町商店街の名刺を見せると、『ああ、良いところにお店をお持ちですね』とおっしゃっていただけて、商談がスムーズなのですよ。これは先人が築いてくれた、商店街の信用です。私たちが受け継いで守っていかなければならない部分だと思います」
震災後に「安心、安全な商店街」を目指して設置された防災委員会。「元町商店街は被害が少なかったからこそ、物を供給することの大切さを学んだ」と片山さん。懇談会には中央消防署かからも参加してもらっている。すべての世代が安心できる商店街を目指し、元町130年事業の際には数字にこだわって、商店街全体で130人の救急救命士を育成し、早くから商店街内にAEDを設置。また、防犯カメラの設置も早くから取り組んでいるなど、生活の中にある商店街だからこそ、安心安全への取り組みを何よりも大切にしている。
丁単位でスタートした取組みが元町を代表するイベントに
元町商店街と言えば、手作りのぬくもりのあるイベントも注目を集めている。発端は丁単位で企画開催されたイベントが、商店街全体に広まっていくことも少なくないと言う。
「各丁で様々な事情はありますが、まずは丁単位で話し合い、その上で全体会議を行います。今年で33年を迎え、元町の代表的なイベントでもある『元町夜市』も、はじめは4丁目商店街が単独ではじめた事業で、近所の人たちと集まる小さなイベントだったのです。それが全体に広がって今や元町を代表するイベントになりました」
今年第17回を迎える「神戸元町ミュージックウィーク」も毎年恒例となっており、最近では若手アーティストたちが手作りの作品を展示販売する「神戸クラフツアーケード」が好評を得ている。6丁目の青年部の企画ではじまったこのイベントも、いまでは4丁目、5丁目との合同イベントまで広がり、イベント出店した職人さんが、商店街の空き店舗にお店を構えるなど、新しい流れもできつつあると言う。
「イベントに参加してくれた若い作家さんたちが、商店街の空き店舗に入ってくれるのは理想ですね。若い人が元町に出てきてもらう以上、面白い商店街を作っていかなければならないと思います。10年先につなげていきたいです」
元町商店街140周年そしてこれからの商店街
「歴史のある老舗と若い人たちの新しいお店が揃っているのが理想的な商店街だ」と語る片山さん。変わらない部分は変わらず、先人の残したものを守りつつ、新しい世代にバトンタッチしていくことが大切だ。元町商店街伝統の「安心安全」を守りながら、未来につながる若い人たちの意見が通る、風通しの良い商店街であるべきだと言う。
「家庭でも三世代同居が理想と言いますが、商店街も同じだと思います。老舗と新しいお店が揃うことで理想的な商店街へと向かっているように思います。今年140年の節目を迎えましたが、これは150年へのスタートの年であり、新たな気持ちで引き締めていきます。次の世代に繋いでいける面白い商店街を作っていきたいです」
古き良き神戸の商店街の雰囲気を残しつつ、イベント事業など常に新たな取組みも発信し続ける元町商店街。150周年に向けて新たな一歩を踏み出した。
神戸元町商店街連合会
TEL.078・391・0831
http://www.kobe-motomachi.or.jp