11月号

[KOBECCO Interview]
日本の自然と文化を敬い、凛として生きたい|女優 藤原紀香さん
『キャッツ♡アイ』を原作とした舞台『メイジ・ザ・キャッツアイ』が、11月14日(土)より新歌舞伎座で上演される。本作は2024年、明治座創業150周年記念公演のフィナーレを飾り、好評を博した。今回は約2年半ぶりの再演で、関西では初のお披露目となる。
1981年に『週刊少年ジャンプ』で連載がスタートし、テレビアニメや映画、名曲『CAT’S EYE』を生んだ不朽の名作が、本作では明治時代の物語に。三姉妹の次女・来生瞳を演じる藤原紀香さんに聞いた。
役者として大切にしていること
―『メイジ・ザ・キャッツアイ』大阪公演がようやく叶いました。
明治座での初演では確かな手応えを感じていましたし、関西のお客様にもきっと喜んでいただける作品だと思っていました。アクション、ミステリー、ラブコメディに、家族や恋人への愛が詰まった人間ドラマ。そして、あの名曲の歌唱やダンス、華やかなショーまで。宝箱のようなジャパニーズ・エンターテインメントに仕上がったと自負しています。「これぞエンタメ舞台!」と感じていただける、豪華なお芝居です。
再演ではありますが、作品に携わる皆が「再演を再現にしない」という思いを共有し、新鮮なときめきをもって取り組んだことで、作品はさらに進化しました!
―ほぼ同じキャストでの再演ですね。
長女・泪を演じる高島礼子さん、三女・愛を演じる剛力彩芽さんとは、プライベートでも時々お会いしていたので、久しぶりという感覚はあまりありませんでした。交流を重ねるうちに、ますます本当の姉妹のような関係になっています。
高島さんは、周りの人をほっとさせてくださる、どんな個性も温かく受け止めてくれるお姉さん。彩芽さんは運動神経のよさに加え、繊細な感性をお持ちで、三女・愛にぴったりです。
長谷川初範さんはカンパニーの最年長ですが、何役も演じ分けながら、いつもお芝居を楽しんでいらっしゃいます。その喜びがお客様にも伝わるのだと、お姿を拝見して学びました。
一人ひとりがストイックで、活気に満ちたカンパニーです。舞台裏は早替えなどで、いつも大運動会(笑)。そこもお見せしたいくらいです。
―キャッツアイが明治時代に現れる…。どんなところに面白さを感じていますか。
舞台を明治時代に移したことで、登場人物たちの恋愛がとても初々しく描かれています。手が触れ合うだけで胸が高鳴り、接吻の話題が出るだけでも一大事なんです。
新しくカンパニーに参加してくれた、瞳の恋人役の崎山つばささんと、新鮮な気持ちでお芝居を紡ぎ、私たちなりの〝瞳とトシ〟の色をつくっていければと思っています。
ファッションなども面白いですよ。着物と洋服が入り交じる文明開化の時代ですから、装いもハイカラで華やか。原作のイメージカラーを踏襲しながら、和洋折衷に仕立てられた三姉妹の衣裳も、とても素敵です。
原作者の北条司先生も「この時代にしたのはよかったね!」と楽しんでくださり、再演にあたって、この舞台の衣裳をまとった三姉妹のオリジナルイラストを描いてくださいました。公演中は新歌舞伎座にその原画を展示していただく予定ですので、ぜひご覧ください。
―夫の片岡愛之助さんと舞台について話すことはありますか?
私の舞台は、一人のお客さんとして観に来てくれます。この作品も、とても楽しんでくれました。
先日、京都・南座で新作歌舞伎『流白浪燦星 碧翠の麗城』にルパン役で主演していたので、「夫婦で空飛ぶ怪盗やな」と笑っていましたね。同じく舞台に立つ者として、互いに励まし合える関係です。
―舞台への出演が続いていますが、表現する上で大切にしていることは?
感性を豊かに育む日々を送ることです。人の言葉や気持ちに丁寧に向き合い、自然や何気ない日常の中にも心を動かされる。その感受性を大切にしたいと思っています。
両親は和歌山の自然豊かな土地で育ち、私も自然を身近に感じる環境で育ててもらいました。母は、散歩の途中で草花の名前を尋ねると、何でも答えてくれる人。春には一緒に七草を摘み、夏には蛍を見に行き、父とは釣りにも出かけました。季節の移ろいを感じながら育った時間は、今も私の大切な土台です。自分の身体と心で感じたことが、表現の豊かさにつながるのだと思います。
文化を支えるとは…
―西宮市のご出身ですが、帰省した際に立ち寄るお好きな場所はありますか?
神社を訪れるのが好きです。昔から通っている近所の神社も、その歴史やお祀りされている神様について学んでから訪れると、また違った景色が見えてきます。
地元で親しんできた西宮神社、廣田神社、越木岩神社も、由緒を知ることで、いっそうありがたく感じるようになりました。廣田神社の長い歴史や、越木岩神社の「甑岩(こしきいわ)」にまつわるお話など、知れば知るほど、幼い頃からこうした場所に見守られてきたのだと感じ、自然と手を合わせたくなります。
次に訪れてみたいのは、六甲比命大善(ひめだいぜん)神社です。瀬織津姫(せおりつひめ)とのゆかりにも関心があります。
―“知る”楽しみ方ですね。
文化は、受け継ぎ、次の世代へつないでいくものだと思います。今でこそ伝統芸能を身近に感じる立場になりましたが、以前は私も詳しくありませんでした。難しそうだと少し距離を置いていたのですが、実際に観てみると、歌舞伎も本当におもしろい。声を上げて笑える演目もあることに驚きました。
たとえば『怪談 牡丹灯籠』では、怪談でありながら夫婦のやりとりに大笑いしましたし、『番町皿屋敷』は、よく知られた怪談をもとに、男女の愛と信頼を描いた作品です。周りの方には「難しく考えず、まずは観に行ってみて」とお声がけしています。こんなにもおもしろいのなら、私も子どもの頃からもっと観ておきたかったと思います。甥や姪にも、年齢に合った、楽しめる演目を選んで、よく観てもらっています。
―着物姿も素敵です。公私にわたり着る機会が多いですね。
着物は好きですね。20歳でミス日本グランプリを受賞した頃に、着付けの資格を取りました。
海外で、着物の持つ力を実感したこともあります。仕事でフランスを訪れた際、どうしても行ってみたいレストランがあったのですが、電話では予約が取れなくて。それなら装いを整えて、直接伺ってみようと着物で訪ねたところ、丁寧に迎えてくださり、素敵な席へ案内していただきました。「着物は日本の素晴らしい文化ですから」とおっしゃってくださったんです。自国の文化を大切にする方々が、私たちの文化にも敬意を向けてくださった。そのことが、とても心に残っています。
そんな経験もあって、大阪・関西万博では、国内外のお客様を歓迎する気持ちを込め、できるだけ着物で参加しました。
―素晴らしいおもてなしですね。決まりごとが難しくて、気軽には着ようとは思えないのです…。
四季のある日本では、装いにも季節を感じる楽しみがありますから、少しずつ学んでいけるといいですよね。例えば、桜の柄をひと足早く楽しみ、満開になったら本物の桜に主役を譲る、という考え方があります。柄によって楽しめる時季は異なりますが、そこに自然を敬い、愛でる心を感じます。装いを通して季節と向き合う、素敵な文化だと思います。
着物を着ると、歩き方や手の動きにも自然と意識が向きます。若い世代の方にも、ぜひ袖を通す機会をつくっていただきたいですね。
初めて着物を着る方にも、機会があれば、ぜひ絹の着物に触れてみてほしいです。ポリエステルとは異なる肌触りや風合いから、素材の豊かさや、受け継がれてきた手仕事の魅力を感じていただけると思います。
―最後に、紀香さんにとってエンターテインメントとは?
舞台では、驚きやときめき、笑いや涙を通して、お客様の心を動かし、「観てよかった」と感じていただけることが、基本だと思っています。
「あなたに会うと元気が出る」「あなたの舞台を観ると楽しくなる」。そんなふうに言っていただけるのは、本当に幸せなことです。
映像作品でも、その思いは同じです。映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』では、夫婦でインパクトのある役をいただき、周りから「あのシーンがあるのに、よく引き受けたね」と心配する声もありました。でも、私たちには迷いがありませんでした。お客様に驚いていただける最高の脚本と役に出会い、エンターテインメントに携わる者として、「ぜひ、やらせていただきます!」という気持ちでした。エンタメのお仕事は、人を楽しませてなんぼですから(笑)。
―美しいけれど、とんでもない神戸市長でしたね。おもしろかったです。
良かった!「美しい」と言われるより、「おもしろい」と言っていただけるほうがうれしいです。やはり関西人ですから(笑)。
text・田中 奈都子

ヘアメイク/光倉カオル(ダイナミック)
スタイリスト/今井聖子(Canna)
衣装協力/JUN ASHIDA
RUBIDA

藤原 紀香(ふじわら のりか)
兵庫県出身。神戸親和女子大学英米文学科在学中にミス日本グランプリを受賞。卒業後に上京し、女優として活動を開始。以降、映像・舞台を中心に数多くの作品で主演を務め、CM、司会など幅広い分野で活躍している。主な舞台出演作に、『キャバレー』『マルグリット』『南太平洋』『熱海五郎一座』『華の太夫道中』『カルメン故郷に帰る』『罠』など。『サザエさん』『魔界転生』『忠臣蔵』などにも出演。
社会貢献活動にも取り組み、日本赤十字社広報特使を務めたほか、国連から写真家として依頼を受けて東ティモールに赴き、ニューヨークの国連本部で写真展を開催した。現在は自身のNPO「SmilePlease 世界子ども基金」を通じ、カンボジア、ネパールなどでの学校建設や、国内外での教育支援を継続している。2025年の大阪・関西万博では日本館名誉館長として、日本文化の価値と、日本のものづくりの原点にある精神が次代へと受け継がれていく姿を国内外に発信した。
〈大阪公演〉
日時:2026年
11月14日(土)~23日(月・祝)
会場:大阪・新歌舞伎座
原作:北条司『キャッツ♥アイ』(コアミックス)
脚本:岩崎う大(かもめんたる)
演出・共同脚本:河原雅彦
出演:藤原紀香・剛力彩芽
崎山つばさ/上山竜治
長谷川初範/川久保拓司
佃井皆美/新谷姫加
美弥るりか/高島礼子 ほか
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