12月号
連載コラム 「第二のプレイボール」|Vol.22
Vol.22 「関西の野球ファンに愛された伝説の投手・野田浩司さん」
文・写真/岡力<コラムニスト>
引退後にさまざまな世界で活躍する元プロ野球選手の「今」をご紹介します。
2年に渡り連載してきた本企画も今号で最終回になる。開始当初からラストを飾っていただくのは、この方と心に決めていた。ボールが鋭く落ち打者の視界から消える「お化けフォーク」で三振の山を築いたレジェンドの今を追った。阪神、オリックスの二球団で活躍した野田浩司さんは、熊本県球磨郡多良木町の出身。軟式野球チームの監督をしていた父親の影響を受け幼少期からボールを握る。自宅にあったマウンドで練習に励む日々。自然とプロ野球選手に憧れ「読売巨人軍」と色紙に記しサインの練習をした。地元の多良木高校では、強豪・熊本工業高校を破り県大会ベスト4の成績を収める。恵まれた体格と将来性が期待されプロのスカウトが注目する存在となった。高校卒業後は、九州産交に入社するも2年目に廃部が告げられる。だが、事態が急変する。廃部であれば3年を待たずしてドラフト指名対象となる規定をヤクルトのスカウトが気付き注目を集める。1987年阪神タイガースよりドラフト1位で指名を受け入団。即戦力として登板し90年には11勝をマーク。翌年には、開幕投手にも指名された。その活躍をファンは、地元熊本にちなみ「火の国伝説」と称えた。しかし92年のオフに松永浩美との大型トレードによりオリックス・ブルーウェーブへ移籍。悔しさをバネに移籍1年目には17勝を挙げる。95年には、1試合19奪三振の日本記録を達成。チームのV2に貢献した。2000年に現役生活を引退。2005年には解説・コーチ業の傍ら現役時代から興味があった飲食業界に進出。三宮の駅前で居酒屋「まる九」を開業した。(店名は、「まるごと九州」の略語に由来する)清潔感溢れる店内は、連日多くのお客様でにぎわっている。「野球選手の実績で得をすることもありますがそれだけではお客様は来ていただけません。徹底して料理の味で勝負しています」。細部に渡るこだわりはグランドを離れても活かされている。開店準備を終え予約客の来店を待つ野田さん。今日も第二のプレイボールが高らかにコールされようとしている。
■地鶏・黒豚・馬刺し まる九
神戸市中央区北長狭通1-3-11ノアールビル5F
電話:078・321・0474