5月号
harmony(はーもにぃ) Vol.51 自立とは、頼れる先を増やすこと
作家の岸田奈美さんの著書「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」を読み、明石市での講演を聴く機会がありました。
岸田さんは神戸市北区生まれの31歳。中学2年の時に父が突然死。高校1年の時、母が心臓病の後遺症で車椅子生活に。3つ下の弟はダウン症。東京2020パラリンピックではNHK中継コメンテーターとして出演。
講演でこんなエピソードが紹介されました。
高校から帰ったら母が大騒ぎをしていた。ダウン症の弟、良太がペットボトルのジュースを持って帰ってきた。が、お金を持っていないのにどうしてペットボトルを持っているのか、と不審に思って問いただすと、良太が気まずそうに紙を取り出した。見るとコンビニのレシートだった。そのレシートの裏面に「お代は今度来られるときで大丈夫です」と描かれていた。万引きじゃあなかった。あわててコンビニへ走ると「息子さんは喉が渇いて困って、このコンビニを頼ってくれたんですよね?」「頼ってくれて嬉しかったです」というこの店員の笑顔を、母は一生忘れないと言った。
岸田さんは
「良太は一人で散歩し、バスに乗り、コンビニで買い物をしている。でも、本当は一人ではない。だって良太には出来ないことがたくさんある。それを補ってくれるのは地域の人たち。バスの運転手さん、コンビニ店員さん、犬の散歩をしているおじいさん。温かく見守って、つまずいたら手を差し伸べてくれている。
助けられてばかりの良太だけど、良太だって人を助けている。街中で車椅子の人が困っていたら、良太はきっと、誰よりも先に駆けつけると思う。さあ行け、良太。行ったことのない場所に、どんどんいけ。助けられた分だけ、助け返せ。良太が歩いたその先に、障害のある人が生きやすい社会が、きっとある。」
(本とブログより引用)
岸田さんが車椅子の母とダウン症の弟の日常の暮らしの中での経験から「自立とは、頼れる先を増やすこと」と語られたのが心に残りました。
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